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外国人研究者が語る名古屋大学での研究生活 〜海外から来名した研究者の目に映る日本の研究と日常生活〜

 自分がこれまでにいた国と違う国で研究することは、新しい刺激があると同時に様々な戸惑いがあります。特に、日本のような言語や文化が世界中のどの国とも異なる場所は、外国人にとって未知の領域です。この度、名古屋大学に在籍する4名の外国人博士研究者(うち、2名がITbMの研究者)に集まっていただき、日本の大学における研究生活について語っていただきました。今回のレポートは、2017年1月23日に名古屋大学で行われたミーティングの様子を元に作成しました。

 

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参加者の紹介:

Asraa.jpgDr. Asraa Ziadi(アスラ・ジアディ博士、以下アスラ):「私は、イラクに生まれ、色々な国に移り住んでから、12歳のときにスウェーデンに落ち着きました。スペインの大学で博士課程にいる途中で日本に短期留学をしました。これまでずっと様々な国を渡り歩き、今は、名古屋大学のトランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)で博士研究員として働いています。私の専門は有機化学です。」

 

Kirsi.jpgDr. Kirsi Salorinne(キルシー・サロリン博士、以下キルシー): 「私は、フィンランドに生まれ育ちました。大学生の頃から様々な国を渡り歩いており、米国に1年過ごしたほか、ドイツやカナダにも共同研究のために訪れました。今は、名古屋大学ITbMで博士研究員として働いています。私の専門は、材料化学です。」

 

 

Amine.jpgDr. Amine Bouibes(アミン・ブイベス博士、以下アミン):「私はモロッコに生まれました。大学生のときにフランスに渡り、その後フランスで博士課程に進みました。私の専門は、材料のデザインで、名古屋大学大学院情報科学研究科(2017年4月から情報学研究科に改組)で博士研究員として働いています。」

 

 

Karim.jpgDr. Karim Nissar(カリム・ニッサー博士、以下カリム):「私は、バングラデッシュに生まれました。専門は、マイクロエレクトロニクスで、博士号を2015年にマレーシアのマラヤ大学で取得しました。今は、名古屋大学大学院工学研究科の中里教授の研究室で中核的研究機関研究員として働いています。研究の内容は、ナノマテリアルの電気特性評価です。」

 

 

日本に来て感じたこと

 ミーティングの冒頭では、参加者が日本で暮らし始めて感じた難しさについて伺いました。多くの参加者に共通していたのは、主に言葉の壁でした。

Kirsi.jpgキルシー: 「これまでに他の国に住んだ経験がある人は、別の国に移ることに対してさほど抵抗は感じません。しかし日本が初めての海外になる場合は、少し怖いかもしれません。特に、日本語を話せないと日本に行くことにかなり抵抗を感じると思います。日本で暮らしたり、働いたりするために日本語を知っていることは必須ではありません。しかし、日常の小さな事柄、例えば、日本語のシステムやソフトウェアの操作、銀行口座の開設、e-mailや郵便物を読むことなどは、日本人の同僚のサポートが必要になります。現地の人のサポートなしでは、日本の生活はかなり難しいです。」

 ITbMでは、海外からの研究者とその家族を支援するためのスタッフが常駐しており、家探し、銀行口座の開設、病院への付き添いや子供の学校探しなどのサポートをしています。また、ITbMにいる多くの日本人学生や研究者は、海外からの来訪者に慣れており、外国人研究者が気軽に質問できる環境になっています。

  日本で研究生活を送る上で、日本語を知っていることは必須ではありませんが、多くの研究者は、少しでも快適に生活を送れるように日本語を少し覚えていっています。例えば、カリムさんは、現在100-200の日本語の単語を覚え、身振りや絵などでコミュニケーションをとっているようです。

 

 Kirsi.jpgキルシー:「研究をするためには、日本語はさほど必要ではありません。ただ、日常生活を送るためには、少し日本語を知っているだけでだいぶ楽になります。」

 

 

 

 多くの参加者が指摘したのは、日本人の学生が英語を話すことを躊躇するのは、「間違えることを恐れているから」という点です。間違えても良いので、お互いに理解を示すことで歩み寄ることが大切だと言っています。

Karim.jpgカリム: 「外国人にとって、日本語を覚えることは簡単ではありません。そのため、外国人と日本人の間には常に大きなコミュニケーションの溝があります。日本人の学生の多くは、英語の映画や音楽を見たり、聞いたりしています。しかし、多くの学生は、英語を話すことをためらっているように感じます。と同時に、私たちも日本語を覚える努力をすることで、歩み寄ることの必要性を感じます。100%できないかもしれませんが、トライすることは大事だと思います。」

 

数ある世界の大学の中から、どのような理由から名古屋大学で働くことを選択しましたか。

―名古屋大学には、世界を牽引する卓越した研究グループが存在

Asraa.jpgアスラ:「私が大学院生の時に、国際会議で伊丹教授(ITbM拠点長)の講演を聞きました。伊丹教授の研究に大変興味を持ち、講演後に先生とお話しし、短期留学プログラムで伊丹教授のところで研究する機会を得ました。そして、ここでポスドク(博士研究員)として働きたいと思いました。」

 

 

Kirsi.jpgキルシー: 「私の場合は、フィンランドでポスドクをしていたときにカナダのクラッデン教授に会いました。クラッデン教授は、ITbMの海外主任研究者を兼務しており、日本にある彼女の研究室で働かないか、とオファーをいただきました。そのときは正直、名古屋大学もITbMのことも知りませんでした。」

 

 

 

名古屋について

 日本地図.jpg海外の多くの人たちは、名古屋が日本のどこにあるかを知りません。名古屋市の近くにある豊田市の方が、世界的に有名な自動車会社名として知られている場合があります

 

 

 

 

 

 

6つの科目で世界のトップ 100位 に入っている名古屋大学

Karim.jpgカリム:「私がポスドクの仕事を探していたときに、QS World University Rankings®を見ました。そのときに、名古屋大学が当時のランキングの上位100校に入っていることを知りました。多くの共同研究を行い、論文を執筆している現在私の指導教員に連絡をしたところ、無事に採択されました。名古屋大学で研究をできるのは非常に良い機会だと思いました。必要な手続きは先生が行ってくれました。大学に正式に入る前に一度名古屋大学のキャンパスを訪れました。とても落ち着いた平穏な雰囲気で、先生が活力に満ちあふれていたのが印象的でした。」

 

QS World University Ranking®によると

名古屋大学は、6つの科目で上位100校に入っています:化学工学、農業・林業、生物学、化学、材料化学、物理・天文学

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 カリムさんは、当初日本に来ることに対して少し抵抗がありました。しかし、2014年のノーベル物理学賞が3人の日本人科学者に授与され、そのうち2名、天野浩教授と赤﨑勇教授が名古屋大学出身だと知り、これが名古屋大学に行く強い動機になりました。

Amine.jpgアミン「日本に来る前は、日本のことはほとんど知りませんでした。名古屋大学を選んだ理由は、長岡教授がいたからです。先生の研究室で働くようになるまで、直接お会いしたことはありませんでしたが、長岡教授は私たちの分野でとても活躍されている有名な先生です。」

 

 

名古屋大学に由縁のあるノーベル賞受賞者

 21世紀に入ってから、14名の日本人がノーベル賞を受賞しています。そのうち、6名の受賞者は、名古屋大学に学生や教員として在籍していた経歴があります。

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名古屋や日本に来て、どのような印象を持ちましたか。

 生活

Asraa.jpgアスラ: 「日本に来て、カルチャーショックが全くないということはありません。日本はトイレ、食べ物、人、地下鉄や清潔さなど、他の国と全然違います。」

 

 

 

Karim.jpgカリム: 「私は、マレーシアで中国の文化を体験Subway.jpgしており、日本も似たようなものだと想像していました。しかし、実際に来日して全然違うということがわかりました。日本の慣例の多くにとても感心しました。その一つが、時間に正確な公共機関です。おかげで会議に対しても時間に正確になり、会議の5分前には必ず席についています。」

 

 

Kirsi.jpgキルシー:「文化に興味のある人にとって、日本は素晴らしい国です。日本に来る動機の一つになると思います。そして、ワークライフバランスはとても重要です。日本はとてもユニークなので、仕事だけじゃなく探検する時間が大切です。」

 

 

 

Amine.jpgアミン: 「私にとってとてもショックだったのは、食事の量です。なぜなら、時々量がすごく少ないことがあるからです。また、人や研究室にもよりますが、日本人が他の国の人よりも一生懸命もしくは長時間働くことはよく知られています。」

 

 

 海外の人から見て、日本の研究室は、一般的に長時間労働をする場所だという印象が根付いています。このイメージは間違いではありませんが、正確には、人や研究室、研究分野によって労働時間は様々です。

研究環境

Karim.jpgカリム:「実際には、私の研究室はそんなに厳しくありません。教授からのプレッシャーはそんなにありませんが、研究室にいる人たちがもっと働きたくなるような環境を作り上げているため、良い意味で競争的で、働く意欲につながっています。もう一つ特徴的なことは、日本の大学が研究のために多くのリソースを持っていることです。教授が獲得した多くの研究資金で必要な機器や物品などを購入しています。時々、発注してから届くまでに時間がかかりますが、最終的には手元に来るので満足しています。」

 

 

Kirsi.jpgキルシー:「私が知っている海外の大学では、lab.jpg機器は学部で共通利用されています。しかし日本では、どの研究室にいるかが重要になってきます。研究資金が潤沢な大きな研究室では、多くの機器が揃っていますが、研究資金が豊富ではない小さな研究室では、充分な機器が揃っていない場合があります。ヨーロッパでは通常、機器は共通化され、機器を管理する専門のスタッフがいます。そのスタッフは機器の使い方を知っており、何かあったときは、その人に聞くことができます。日本では、専門のスタッフがいないことが多いため、自分で機器の使い方を全て覚える必要があります。」

 

 

Asraa.jpgアスラ:「これは、日本の研究室に特異的なことだと思いますが、実験機器は大学の所有ではなく、各研究室の所有物です。機器のスペシャリストはおらず、多くの場合は学生が機器の整備をしています。」

 

 

Amine.jpgアミン:「名古屋大学の各研究室には、多くの高性能な機器があることから、名古屋大学の研究者が多くの研究資金を獲得していることを知りました。問題は、多くの取扱説明書が日本語でのみ書かれていることです。」

 

 

言語の壁の問題について

 

Kirsi.jpgキルシー:「私が基本的な日本語を覚えるのに、少なくても6ヶ月はかかりました。ただの観光者ではなく、暮らしていく上で重要なのは、社会と繋がるために趣味などを持つことです。そうすることで、ただ仕事に行って寝るだけでなく、ここで暮らしているという実感を持てると思います。」

 

 

Asraa.jpgアスラ :「ITbMには、家探しや病院の付き添いなど、日本に最初に来たときの生活を支えてくれる人がいます。困った特に助けてくれる人がいることで、日本に来たときの無力感が軽減される気がします。こういう人がいると生活が一気に変わり、生活の質が上がって、とても助かっています。」

 

リンク:

http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja/news/20170123_Discussion_ITbM_JP.png

2017-03-06

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