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ITbMの東山 哲也教授が第34回井上学術賞を受賞

名古屋大学 WPI トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)副拠点長の東山 哲也教授が公益財団法人 井上科学振興財団の第34回井上学術賞(2017年度)を受賞しました。

自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対し、井上学術賞(賞状及び金メダル、副賞200万円)を贈呈されます。

贈呈式は2018年2月2日に行われます。

【研究題目】ライブセル解析による植物生殖機構の解明

【授賞理由】

被子植物の雌しべに受粉した花粉は、胚嚢とよばれる組織まで花粉管を伸ばし、そこ で重複受精が行われて次世代の種子が作られる。植物の有性生殖過程は、穀物生産など に直結する重要な過程であるが、花の奥の組織内で行われるため解析が遅れており、特 に花粉管が間違いなく胚嚢に向かって伸びていく誘導の機構は長い間謎とされていた。 東山哲也氏は、独自のライブセル解析を駆使した研究を展開してこの問題を鮮やかに解 決し、植物生殖分野に新たな潮流を生み出した。

多くの植物では受精が行われる現場である卵細胞は胚嚢の組織に包まれているが、東 山氏は花壇によく見られるトレニアでは卵細胞が剥き出しになっているために顕微鏡 の下で受精の瞬間を観察することができることを見出し、独自に確立した体外受精系と レーザー細胞破壊実験により、卵細胞に隣接する助細胞が花粉管を誘引することを発見 した。さらに、顕微鏡下で回収した助細胞の発現解析と独自に開発したインジェクター 装置を用いての遺伝子発現制御実験を通じ、140 年間不明であった花粉管誘引物質LURE の実体解明に成功した。また、花粉側の受容体PRK6 の同定にも成功し、同受容体の花 粉管内における分布がLURE による誘引方向に合わせて変化することを示した。さらに、 詳細なライブイメージングにより、重複受精後に助細胞と胚乳が細胞融合して花粉管誘 引を停止する新たな仕組みを発見した。また、花粉管が雌しべの働きによって受精能を 獲得する現象を見出し、活性本体として胚珠組織に由来するアラビノガラクタン糖鎖 AMOR を発見した。最近では、マイクロデバイスを用いた長距離誘引物質の探索、初期 種子発生のライブイメージング、PRK6 とLURE の共結晶解析、受容体分子動態の1分子 イメージングなど研究をさらに発展させている。

以上のように、東山氏は一貫して独自に開発したライブセル解析により、花の中での 秘められた受精過程の実態を明らかにしてきた。また、細胞の挙動や反応を正確にとら えることで、背景に潜む分子機構や鍵分子の解明を進めてきた。これらの研究成果や開 発された技術は、植物生殖研究のみならず生命科学全般に広く波及効果を持つものであ り、井上学術賞にふさわしいと判断される。ここに、東山氏を井上学術賞受賞者として 選定する。

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東山 哲也教授

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2018-02-23

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