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研究ハイライト

ニワトリがコケコッコーと鳴く順番は 社会的な順位によって決まっていることを発見

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)と生命農学研究科の新村毅博士(現 基礎生物学研究所 特任助教)と吉村崇教授らの研究グループは、ニワトリがコケコッコーと鳴く順番が、社会的な順位によって決まっていることを明らかにしました。この成果は、2015年7月23日発行の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載されました。

概要:

ニワトリのコケコッコーという発声は、インダス文明(紀元前2600-1800年頃)の時代から時を告げるものとして利用されており、今では誰もが「ニワトリは朝に鳴く」ということを知っています。しかしながら、この現象の背後にある仕組みは、謎に包まれたままでした。私たちはこれまでに、この現象に体内時計が関与していることを明らかにしてきました(Shimmura & Yoshimura, Current Biology 2013)。

ある1羽が朝に鳴き始めると、近くにいる他の雄鶏達が一斉に鳴き始める「鳴き交わし」という現象が知られていますが、雄鶏はコケコッコーと鳴くことで、自分の縄張りを主張していると考えられています。またニワトリは、社会的な動物であり、集団内のニワトリの数が少ない場合には、「つつきの順位」を形成します。そのような集団では、社会的な順位が色濃く反映され、最も順位の高い雄鶏は、優先的にエサを食べたり交尾をしたりすることができます。今回の研究で、雄鶏の鳴き交わしにも、社会的順位にもとづく秩序が存在することを初めて明らかにしました。

4羽の雄鶏が鳴き交わす様子を観察している中で、鳴く順番に決まりがあることを見出しました。詳しく調べてみると、4羽のうち、社会的な順位が最上位の個体が毎朝最初に鳴き始め、その後は、2位、3位、4位と、社会的順位が高い個体から順に、鳴き始めることがわかりました。また、最上位個体が鳴き始める時刻は、日ごとに異なりますが、下位個体が鳴き始める時刻は、いつも最上位個体が鳴いた直後でした。このことから、最上位個体は朝を告げる優先権を持っており、集団内で鳴き始めるタイミングを決めていることが明らかになりました。次に1位の個体を集団から除くと、2位の個体が最初に鳴き始めるようになり、2位個体が最上位個体のように振舞うこともわかりました。

これらの結果と共に、下位個体が自発的に鳴く回数は、上位個体よりも少ないという結果が得られていました。しかしながら、光や音刺激を与えて強制的に鳴かせた場合は、下位個体も最上位個体と同じくらい鳴くことがわかりました。このことは、下位個体は鳴く能力はあるものの、上位個体の存在によって、自発的な発声が抑制されていることを示唆していました。つまり、下位個体は発声する能力はあるものの、最上位個体がいる場合は、最上位個体が鳴き始めるのを毎朝辛抱強く待っていることが明らかになりました。

以上のことから、ニワトリの社会は厳しい縦社会であり、朝を告げる際にも社会的順位が色濃く反映されていることが明らかになりました(下図はその概略を表現したイラストです)。

Rooster_Crow.jpg
イラスト提供:新村毅、作者:中村朋

論文情報:

"The highest-ranking rooster has priority to announce the break of dawn" by Tsuyoshi Shimmura, Shosei Ohashi, and Takashi Yoshimura is published online on July 23, 2015 in Scientific Reports, 5, Article number: 11683.

DOI: 10.1038/srep11683

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