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研究ハイライト

光を用いた概日リズムの精密な調節 〜概日時計の仕組み解明に新手法〜

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の廣田毅特任准教授らの研究チームは、オランダ・グローニンゲン大学のBen Feringa 教授、ITbMの伊丹健一郎教授、Florence Tama 教授、本学環境医学研究所の小野大輔助教らと共同で、光に応答して活性化する化合物を開発し、哺乳類の培養細胞やゼブラフィッシュにおいて、概日リズムのスピードを精密に調節することに成功しました。

概日時計は睡眠・覚醒などのさまざまな生理現象に見られる1日周期のリズムを支配しており、その機能が乱れると睡眠障害などの疾患に影響を及ぼすことが指摘されています。そのため、概日時計の機能を精密に調節することができれば、生物が1日の時間を測る仕組みの理解だけでなく、疾患治療に向けた起点ともなります。廣田特任准教授らは以前、細胞内の時計タンパク質のリン酸化に関与するCKIタンパク質を標的として概日リズムのスピードを強力に遅らせる化合物を発見し、longdaysinと名付けました。今回、研究チームはlongdaysinを改変し、暗い時には作用を示さず、光が当たると活性化してCKIを阻害するような化合物DK359を開発しました。この化合物を用いることで、哺乳類の培養細胞や組織、さらには生きたゼブラフィッシュにおいて概日リズムのスピードを光によって精密に調節する(遅らせる)ことが可能になりました。今回の発見により、概日時計のメカニズムの解明と疾患治療に向けた応用に新たな道が拓けると期待されます。

本研究成果は、米国際誌Journal of the American Chemical Society において2019年10月9日0時(日本時間)に公開されました。

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【論文情報】

論文名:Controlling the Circadian Clock with High Temporal Resolution through Photodosing

著者:DusǎnKolarski, AkikoSugiyama, GhislainBreton, ChristinRakers, DaisukeOno, AlbertSchulte, Florence Tama, Kenichiro Itami, Wiktor Szymanski, Tsuyoshi Hirota and Ben L. Feringa

掲載雑誌:J. Am. Chem. Soc.

DOI: 10.1021/jacs.9b05445

リンク:

http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja_backup/research/ITbM-Hirota-20191002_final-modifyv2.png

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左から:伊丹 健一郎教授Florence Tama 教授廣田毅 特任准教授

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2019-10-09

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