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研究ハイライト

特殊な塩基配列に特化したスプライシング機構を発見 〜mRNAの新しい編集技術の開発に期待〜

中部大学 応用生物学部 応用生物化学科の鈴木孝征准教授のグループは名古屋大学 細胞生理学研究センターの廣明洋子客員准教授、同大 トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の東山哲也教授らとの共同研究で、スプライシングの新しいしくみを発見した。遺伝子からタンパク質がつくられる過程にはスプライシングというしくみがあり、これによって一つの遺伝子から複数のタンパク質がつくられ、遺伝子の機能を多様にしている(図1)。スプライシングで除かれる部分をイントロンとよび、これまでU2依存型とU12依存型の二種類に分類されていた(図2)。U12型には末端の塩基配列が異なる二つのタイプ(GT-AG型とAT-AC型)があることが知られていたが、それらに機能的な差はないとされてきた。

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図1 DNAがもつ情報(塩基配列)に基づいてタンパク質が合成される流れ

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図2 イントロンの分類と存在割合
A、T、G、Cはそれぞれ4種類の塩基のアデニン、チミン、グアニン、シトシンの略

鈴木准教授らは、植物研究のモデル生物であるシロイヌナズナを使ってDROL1遺伝子の機能を調べた。その結果、DROL1遺伝子の機能を失わせると、U12型のうちAT-AC型イントロンのみがpre-mRNAから除かれないことを発見した。AT-AC型イントロンは全体のごくわずかではあるが、そのスプライシングの異常は発芽を遅らせるなどの影響を与えた。このことからDROL1遺伝子はAT-AC型イントロンをスプライシングする役割を持ち、その機能は植物の正常な発生に必要であることがわかった。

最近、ヒトでもAT-AC型とGT-AG型には違いがあることが報告されている。ヒトではスプライシングの異常は様々な病気の原因であることが突き止められ、AT-AC型イントロンのスプライシング異常も遺伝病の原因であることが示されている。今後、DROL1遺伝子の基礎的な研究を進めていくと、ヒトの様々な病気の治療法の開発につながると考えられる。さらにイントロン両端の塩基配列とそれを認識するタンパク質との関係を詳しく調べれば、人為的なRNAの切断や組換えに応用することができる可能性がある。

今回の研究成果は2021年12月5日付の植物科学に関する英科学誌「ザ・プラント・ジャーナル(The Plant Journal)」(電子版)に掲載された。

【論文情報】

雑誌名:The Plant Journal

論文タイトル:The DROL1 subunit of U5 snRNP in the spliceosome is specifically required to splice AT-AC-type introns in Arabidopsis

著 者:Takamasa Suzuki, Tomomi Shinagawa, Tomoko Niwa, Hibiki Akeda, Satoki Hashimoto, Hideki Tanaka, Yoko Hiroaki, Fumiya Yamasaki, Hiroyuki Mishima, Tsutae Kawai, Tetsuya Higashiyama, Kenzo Nakamura

論文公開日:2021年12月5日

DOI:10.1111/tpj.15582

2021-12-14

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