第7WPIサイシンポジウ

分野界を変

基調講演

 

10:40 - 11:30

天野 浩

 

名古屋大学未来材料・システム研究所未来エレクトロニクス集積研究センター

センター長・教授(2014年 ノーベル物理学賞)

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トランスフォーマティブエレクトロニクスが築く4S社会

 

例えば太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに変換し、ディスプレイは電気エネルギーを光エネルギーに変換することから分かる通り、エレクトロニクスの本質はエネルギーを変換、即ちトランスフォームすることです。我々は新材料を用いた未来のエレクトロニクスをトランスフォーマティブエレクトロニクスと名付け、これを用いた持続可能(Sustainable)、快適(Smart)、安心(Secure)で安全(Safe)な未来社会の実現を目指しております。本講演では“つながり”をキーワードにして、分野を超えたつながりがもたらす新しい科学とイノベーションの例を紹介します。LED照明では、色の認知、光遺伝学、水の殺菌など、医学や環境学とのつながりについて紹介します。次にワイヤレスに電力を伝送するInternet of Energy (IoE)の最新技術と展望を説明します。最後に、分野を超えた人材育成を目的として今年10月より始まった大学院DIIプログラムの紹介をします。

研究講演 I

 

11:30 - 12:00

伊丹 健一郎

 

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)拠点長・教授

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スーパー分子をつくる:無限の可能性と異分野融合のチカラ

 

私は、分子のチカラを信じています。この地球上には実に多くの「問題」があります。エネルギー問題、食糧問題、環境問題、医療問題などなどです。私が信じているのは、それらの問題の多くに対して「分子で答えを出す」ことができるということです。私の研究のゴールは、問題を解決するような画期的な機能をもつ分子や構造的に美しい分子(美しい分子には機能が宿る!)を開発し、世に送り出すことです。また、これは一つの研究分野にとどまっていては決して実現できるものではなく、異分野融合が鍵となります。本講演では、名大ITbMやERATOを舞台にした異分野融合から出てきたスーパー分子について紹介します。特に最近のトピックスとして、カーボンナノベルトやワープド・ナノグラフェンといった新しい炭素のカタチの世界初の合成や、ITbMで展開している合成化学と植物科学や時間生物学(体内時計)の融合研究について紹介したいと思います。

Be unique! Go crazy!

※ 科学技術振興機構が実施する戦略的創造研究推進事業

河西 春郎

 

東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(IRCN)教授

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研究講演 II

 

14:45 - 15:15

「脳は運動する!?」

 

我々の心の住みかである脳は、頭蓋骨の中で動かない様に見えます。その中を電気信号が走っているので、計算機と似通ったもののようにも見えます。しかし、脳の様な3次元的に密な計算機をつくれるとしても、おそらく我々の心は作れません。

計算機の記憶素子は固いシリコンでできていて、0,1の状態を半永久に覚えることで機能します。一方、脳の記憶素子は(スパイン)シナプスと呼ばれる構造です。このシナプスは、学習により大きくなり、その運動によって記憶を残しています。この個性的な運動によってシナプスが生成消滅することで、脳では配線の変更すら起こっています。この運動自身に脳の個性が表れていますが、それを固いシリコンでできた計算機で再現することは困難です。我々の心の特異なしくみは、このシナプスの運動なしには語れないのです。

この講演では、脳の中で人知れず運動することで、私たちの心と記憶をつくるシナプスの世界について一緒に考えてみましょう。

研究講演 III

 

15:15 - 15:45

松本 邦夫

 

金沢大学ナノ生命科学研究所(NanoLSI)教授

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生体分子のナノ・リアルタイム計測とがんの基礎研究

 

17世紀、レーヴェンフックが作成した顕微鏡は、バクテリア、赤血球や精子をはじめ、生命科学に大きな発見をもたらしました。電子顕微鏡、X線結晶解析、蛍光顕微鏡など、小さな世界を観る新たな技術は、そのつど生命科学に飛躍をもたらしました。近年、物理学者である安藤敏夫博士(金沢大学)が世界で初めて実用化に成功したのが、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)です。何がすごいの? タンパク質やDNAなど、生命を担う分子のリアルな動きをミリ秒単位で観察できるようになったことです。

この講演では、HS-AFMの物理学者などの異なった分野の仲間との共同研究によって、細胞増殖や組織の再生・がんについての私の研究がどう進展したかをお話しします。分子の動きが観えることで、想定外のメカニズムが明らかになります。さらに、超分子・ペプチドの化学者とも連携することで、革新的な医薬の創成につながります。お互いの尊重と柔軟性が新しい発見を支えます。

シンポジウム司会者

 

本田 隆行

 

サイエンスコミュニケーター

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大阪府枚方市出身、1982年(昭和57年)生。

神戸大学大学院 自然科学研究科 地球惑星科学専攻修了(理学修士) 。大学院で、探査機「はやぶさ」のミッションにも携わった経験あり。在学中から、地元の枚方市にて若者の視点を活かした教育やまちづくり活動に積極的に取り組む。大学院修了後、この経験を活かして枚方市役所に入庁。 2012年4月より東京・お台場の日本科学未来館で「科学コミュニケーター」として活動。2015年夏からフリーランスのサイエンスコミュニケーターとして活躍。