RPD
Research Promotion Division (RPD),
Institute of Transformative Bio-Molecules (ITbM), Nagoya University
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#9
地球上の生物は、地球の自転や公転によって生じる昼夜や季節の変化に適応するために、遺伝的に組込まれた体内時計(概日時計という)を獲得してきました。動物では、そのメカニズムは解明されていますが、植物では染色体の数が2倍や3倍と倍加することがよく知られており、それに伴う重複遺伝子(1個体に同じ遺伝子が多数ある状態)が多く存在するため、解明は困難とされてきました。
ITbMの研究グループは、遺伝子重複度の大きいシロイヌナズナにおいて、植物の概日時計のリズムを変える低分子化合物を見出し、その標的となるリン酸化酵素のカゼインキナーゼ1 (CK1)ファミリーが、時計に関わることを発見しました。さらに、CK1が直接的に制御する時計関連タンパク質(PRR)も同定することができました。この発見をもとに、生物学と合成化学の融合によりCK1の抑制に100倍効果を示す新たな分子「AMI-331」を開発することに成功しました。
● これまでの時計分子の進化シナリオに再考を促す発見
これまでの学説では、バクテリア、カビ、動物、植物など、それぞれの生物界で進化的に起源の異なるタンパク質が独立して生物時計を作り出してきたと考えられてきました。しかしながら、本研究では、CK1がカビと動物に加え植物でも関与していることがわかりました。つまりこれは、共通のタンパク質が生物時計に関与していることを示唆しており、これまでの時計分子の進化シナリオに再考を促す発見といえます。
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