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Research Promotion Division (RPD),

Institute of Transformative Bio-Molecules (ITbM), Nagoya University

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#11

● 植物の蛍光顕微鏡観察に立ちはだかる

  自家蛍光物質と屈折率の壁

 蛍光タンパク質の発見により、生体組織内のタンパク質の挙動が観察できるようになり、生物のからだの成り立ちや構造・機能の解析が飛躍的に進みつつあります。この手法で重要になるのが、目的のタンパク質だけを見えるようにする蛍光標識技術と、標識した蛍光を損なうことなく組織深部まで蛍光顕微鏡観察できる組織の透明化技術です。

 動物細胞と異なり、植物細胞では葉緑体クロロフィルなどの自家蛍光物質が光ってしまい、さらには空気や細胞壁などの屈折率の異なる成分により光の散乱が生じるなど、蛍光顕微鏡観察に大きな障壁がありました。

 ITbMの研究グループは、この植物固有の課題をのりこえるため、化合物スクリーニングをおこない、自家蛍光物質を取り除く溶出活性は高いが、組織へのダメージは少ない界面活性剤や、透明化活性が高く、かつ蛍光タンパク質を保持する配合を発見しました。これらを配合した溶液に植物体を浸したところ、わずか数日間で組織をまるごと透明化することに成功しました。

● 誰もが手軽に植物を透明化ができる!

  この試薬がもたらすもの

 これまで植物組織の内部を高解像度で観察するには、組織をうすく切った切片を観察する方法しかありませんでした。切片から三次元の立体構造を再構築するには、膨大な数の連続した切片を作り観察しなければならず、熟練した技術と時間を必要としました。

 ClearSee®はこの状況を一気に変えました。誰もが手軽に短時間で組織を透明化し、特別な顕微鏡がなくとも組織内部が観察できる。それを可能にするClearSee®は、まさに革新的な試薬といえます。研究グループは、試薬の組成を改善し、より幅広い植物種や組織に適用できるClearSeeAlpha™を開発しました。今後、この試薬の普及により植物科学研究が加速するものと期待されます。

Reference:

  • “ClearSee: a rapid optical clearing reagent for whole-plant fluorescence imaging” by Daisuke Kurihara, Yoko Mizuta, Yoshikatsu Sato, Tetsuya Higashiyama, Development 2015, 142 (23): 4168–4179. DOI: 10.1242/dev.127613
  • “ClearSeeAlpha: Advanced Optical Clearing for Whole-Plant Imaging” by Daisuke Kurihara, Yoko Mizuta, Shiori Nagahara, Tetsuya Higashiyama, Plant and Cell Physiology 2021, 62 (8): 1302–1310. DOI: 10.1093/pcp/pcab033

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名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)

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