RPD
Research Promotion Division (RPD),
Institute of Transformative Bio-Molecules (ITbM), Nagoya University
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Molecule Gallery:
#1
カーボンナノベルトは、筒状構造をもつ「短い」カーボンナノチューブです。その圧倒的に美しい構造と機能性分子としての潜在的可能性から、世界中の化学者が合成に挑戦してきた夢の分子です。しかしカーボンナノベルトは、筒状構造に由来する大きなひずみをもつため合成が困難で、カーボンナノチューブが合成・発見されるずっと前から、60年以上に渡って化学者の挑戦を退けてきた難攻不落の分子として有名でした。
ITbMの研究グループは、ひずみのない環状分子を筒状構造に変換する化学反応により、安価な石油成分であるパラキシレンを原料に用いてカーボンナノベルトを合成することに世界で初めて成功しました。さらに、さまざまな分析から、合成されたカーボンナノベルトがカーボンナノチューブと非常に近い構造や性質をもつことも確認できました。2018年には市販化も達成され、今では世界中の研究者が応用研究を行っています。
● 今後のナノカーボン科学を一新する分子
カーボンナノベルトは、これまで誰も見たこともない「美しい」新しい炭素のカタチです。サッカーボール状分子であるフラーレン(1996年ノーベル賞)の歴史が証明しているように、美しく、新しい炭素のカタチの登場は、発見当初は全く予測できなかった破格の機能や応用展開の発見を促します。今後、カーボンナノベルトは、様々な人の手によって思いもよらない活躍の場を見つけると期待されます。美しいものには必ず機能が宿ります。
Reference:
"Synthesis of a Carbon Nanobelt" by Guillaume Povie, Yasutomo Segawa, Taishi Nishihara, Yuhei Miyauchi, Kenichiro Itami, Science 2017, 356, 172. DOI: 10.1126/science.aam8158