生きたままの細胞でミトコンドリアの

内膜の動きを可視化する蛍光分子

ミトコンドリアは外膜と内膜の二重の生体膜に包まれ、内膜は「クリステ」とよばれるひだ状の折りたたみ構造を形作って、細胞に必要なエネルギー産生の効率を高めています。このクリステの構造変化は、細胞機能や細胞応答などに深く関与していますが、従来の技術では細胞が生きたままの状態でクリステの様子を観察することが困難でした。

ITbMの研究グループは、ミトコンドリアの内膜を特異的に染色する超耐光性蛍光プローブ「MitoPB Yellow」を開発し、微細な構造を観察できる超解像STED 顕微鏡を用いて、生きた細胞内のクリステ構造を精微に捉えることに成功しました。この分子の開発により、ミトコンドリア障害が関与する病気の診断技術や治療薬の開発ツールとして応用が期待されます。

ミトコンドリア内膜だけが染まるしくみと超耐光性がもたらすもの

MitoPB Yellow は脂質構造のような疎水的な環境で強い蛍光を示します。この分子は細胞膜を透過し、ミトコンドリア内膜に存在する近傍のタンパク質と結合するため、細胞に添加するだけでミトコンドリアを高選択的に染色することができます。また、超耐光性をもつことから、STED顕微鏡のような強いレーザー光をあてても退色せずに同じエリアを繰り返して撮影することができます。そのため、ミトコンドリアの融合や膨潤過程におけるクリステの動的な形態変化を、超解像イメージングによって明瞭にリアルタイムで捉えることができます。ITbMの研究グループは、ミトコンドリアの内膜を特異的に染色する超耐光性蛍光プローブ「MitoPB Yellow」を開発し、微細な構造を観察できる超解像STED 顕微鏡を用いて、生きた細胞内のクリステ構造を精微に捉えることに成功しました。この分子の開発により、ミトコンドリア障害が関与する病気の診断技術や治療薬の開発ツールとして応用が期待されます。

Reference:

“A photostable fluorescent marker for the super-resolution live imaging of the dynamic structure of the mitochondrial cristae” by Chenguang Wang, Masayasu Taki, Yoshikatsu Sato, Yasushi Tamura, Hideyuki Yaginuma, Yasushi Okada, Shigehiro Yamaguchi, PNAS 2019, 201905924. DOI: 10.1073/pnas.1905924116

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