RPD
Research Promotion Division (RPD),
Institute of Transformative Bio-Molecules (ITbM), Nagoya University
ENGLISH
日本語 /
Molecule Gallery:
#12
植物の生殖では、めしべの先端についた花粉が花粉管を伸ばし、めしべの中をまっすぐ移動して胚珠(卵細胞をもつ組織)の近くまで進みます。そして、花粉管は胚珠のある方に向きを変えて卵細胞に到達し、受精にいたります。この時、胚珠からまるで花粉管に呼びかけるように花粉管誘引物質「LURE:ルアー」が放出されます。しかし、メス側からどれだけ誘引物質が出されたとしても、オス側の花粉管にその情報を受け取るところがなければ、花粉管の誘導はうまくいきません。そこにはどんな仕組みがあるのでしょうか?
ITbMの研究グループは、シロイヌナズナを用いて、花粉管の先端部分にルアーを感知する受容体「PRK6」があることを発見しました。この受容体には、アミノ酸配列がよく似たものが複数あり、それらが協調して働くことで、めしべからの情報を正確に感知し、花粉管の伸長や方向の制御されることが明らかになりました。
めしべの中でルアーによって誘引される花粉管。
(※ 新学術領域研究「植物新種誕生原理」HPより、改変のうえ転載)
● 花粉管誘導の仕組みの解明を大きく前進させたふたつの分子
さらに研究グループは、X線結晶構造解析により花粉管誘引物質ルアーと受容体PRK6が鍵と鍵穴が合うように正確に結合することを明らかにしました。このふたつの分子は植物種ごとに構造が異なっており、種の認証に重要と考えられています。その結合部位の詳細な構造がわかったことで、今後、同種の植物間のみ誘引される仕組みの解明や、これまで難しかった異種間の交雑による有用品種作出への応用が期待されます。花粉管誘引物質ルアーと受容体PRK6の発見は、植物の生殖における花粉管誘導の仕組みの全容解明に大きな前進をもたらした分子と言えます。
Reference: