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研究ハイライト

分子を「培養」して多種の活性分子を一斉に合成 〜タンパク質の標的分子を探索、新規創薬研究の応用へ〜

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)およびスイス連邦工科大学のジェフリー・ボーディ(Jeffrey Bode)教授らは、微生物が一度に多くの化合物を作り出し、その中から目的に応じた分子を使い分ける発酵という方法に学んだ「合成発酵」という概念を提案し、有用な有機分子を迅速に見いだす方法論を確立することに成功しました。

概要:

この「合成発酵」という方法を可能にしたのは、2006年にボーディ教授が発表した KAHA(カハ)ライゲーションという化学反応です。従来の有機合成反応では、有機分子同士をつなぐための「試薬」と呼ばれる第3の存在が必要で、反応後には有機分子と試薬を分ける「精製」という行程が必須でした。一方、KAHAライゲーション反応では、ケト酸 (KA) およびヒドロキシルアミン (HA) を混ぜるだけで、試薬を一切使用することなく、ペプチドやタンパク質の骨格を支えているアミド結合を作ることができます。

「合成発酵」は、混ぜるだけで有用な有機分子群を作り出す非常に簡便な方法です。新しい医薬品の創出に貢献することはもちろん、将来的には家庭、高校や農家などで、有用な物質を迅速に合成可能な手法になることが期待されます。

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合成発酵によるペプチド類の合成と分析。

論文情報:

"Synthetic fermentation of bioactive non-ribosomal peptides without organisms, enzymes or reagents" Yi-Lin Huang and Jeffrey W. Bode, Nature Chemistry, 2014, Advanced Online Publication

DOI: 10.1038/nchem.2048

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