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研究ハイライト

タンパク質の迅速な化学合成を可能にする新しい結合分子の開発

概要:

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)およびスイス連邦工科大学のジェフリー・ボーディ(Jeffrey Bode)教授らは、自身の開発したタンパク質合成法(KAHAライゲーション)を格段に進歩させることに成功しました。 KAHAライゲーションは、従来のペプチド/タンパク合成と比較して高い化学選択性で効率的にタンパク質を合成することが可能です。 しかしながら、従来のKAHAライゲーションでは5員環化合物である5-オキサプロリンを用いるため、タンパク質中のセリンの代わりに自然界に存在しないホモセリンが導入されてしまうという欠点がありました。

今回、Bodeらは4員環のオキサアゼチジンアミノ酸の合成に初めて合成し、これをKAHAラーゲーションに組み込むことに成功しました。 4員環のオキサアゼチジンアミノ酸は従来の5-オキサプロリンより反応性が高いため、低濃度・低温で反応が進行するだけでなく、自然界に存在するアミノ酸であるセリンを導入することができるようになりました。 さらにこの方法を応用することで、従来法では合成の難しかった100残基を持つカルシウム結合タンパク質S100A4の合成を達成しました。 今回の成果は、高い反応速度および化学選択性に基づくKAHAライゲーションをさらに発展させるものです。今後、タンパク質の化学合成の可能性を大きく拓くことが期待されます。

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論文情報:

"An oxazetidine amino acid for chemical protein synthesis by rapid, serine-forming ligations" by Ivano Pusterla & Jeffrey W. Bode is published online on June 23, 2015 in Nature Chemistry.

DOI: 10.1038/nchem.2282

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Jeffrey Bode教授http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja_backup/members/j-bode/

2015-06-23

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