第7WPIサイシンポジウ

分野界を変

Slidoを通じて寄せられた皆様のご質問に対して,講演者の先生方からお答えいただきました!

Slidoに投稿いただきました会場の皆様のご質問に対して,
講演者の先生方からご回答をいただきました!

基調講演

天野浩先生のQ&A

Q1.

窒化ガリウムが青色LEDに使われるようになった経緯を知りたいです。もちろん、放熱性が高いなどがあると思いますが、他の物質では代用できないのかなど、よろしくお願いします。

A1.

候補としてはSiCとZnSeがありました。SiCはバンド構造が間接遷移、即ち原理的に光らない。ZnSeは直接遷移型で良く光りますが、材料自体が脆く素子寿命が短いのが欠点でした。他は、有機EL材料、最近ではペロブスカイト構造の結晶などが新しい候補として期待されています。

Q2.

青色LEDを白色の光にできる原理は何ですか?

A2.

青色光を吸収し、黄色の光を放つ蛍光材料により、青色と黄色で疑似白色にしております。目の網膜にレチナールという分子があり、そこに修飾しているたんぱく質の構造の違いにより、3つの色にそれぞれ反応します。黄色の光は赤と緑のレチナール分子を反応させますので、疑似的に白色に見える、という仕組みです。

Q3.

ネズミの脳にLEDを刺してピカっと光る話があったと思うのですが、それは脳の働きから電気を取り出すことが出来るということでしょうか?

A3.

狙いは、光感受性蛋白質を仕込んでおいて、シナプスのオンオフを光で制御するのが目的ですが、電子やイオンなど電荷をもったものが運動する限り、電流やその周りに磁界が発生します。ただ微弱で測定が難しく、いまは電圧の変化を見ているのが脳波計測です。電気エネルギーとして取り出して利用するのは、まだ時間がかかるでしょう。

Q4.

無線送電が可能になる社会では、これまでより余分な電力消費が減り、それは電力会社などの利益が減ることにも直結するため、彼らからの反発があると考えられますがどうお考えでしょうか?

A4.

大きな電力を供給するために有線の電力網はこれからも必須です。ワイヤレス給電が力を発揮するのは、我々顧客と電力網の接点の階層です。従って、顧客によりきめの細かい、かつ安心安全なサービスを提供できるという点で、電力会社は大歓迎です。

Q5.

ワイヤレス給電についての質問です。長距離送電は可能でしょうか?天候等の影響を受けない宇宙空間での太陽光で発電した電気を地上に送る事を考えたりしています… また、使える周波数帯が限られているといったお話があったと思うのですが、第三者による傍受は可能でしょうか?いわゆる電気泥棒です。

A5.

京都大学の篠原先生のグループが宇宙からのワイヤレス給電に取り組まれております。電磁波は、周波数によって広がり方が異なり、周波数が高い方がビームを絞れるので、遠距離ではマイクロ波という高い周波数の電磁波を用います。もちろん途中に受信アンテナを設置すれば泥棒はできますが、本来の受け手は常に受信電力をモニターすれば、泥棒されていることはすぐにわかります。

Q6.

ワイヤレス送電では損失はどのくらいになりますか?

A6.

方式や距離によって異なります。数~数十㎝間の短い距離の磁界結合、電界結合方式ですと90%より少し良い程度まで、数十m~100m程度の遠距離のマイクロ波方式で60%程度までの効率が可能ですので、損失は100%からそれらの値を引いた程度です。

Q7.

無線送電を利用して発電、例えば宇宙空間で太陽光発電したエネルギーをマイクロ波等で地上の受信施設で受け、電力を地域に供給することは可能でしょうか?

A7.

原理的には可能です。京都大学の篠原先生グループが、長年取り組まれております。

Q8.

LEDを使用して部分別の温度に加温できる電子レンジの話がありましたが、水以外の固有振動に振動数を変えることはできますか?例えば、食品についている雑菌を構成しているタンパク質の固有振動数にして、食品の温度は変えずに殺菌できるとか、細胞の壊れている遺伝子部分だけを壊すことなどできるとおもしろいと感じました。

A8.

紹介した動画は、LEDではなくてマイクロ波の発振器です。原理的には水分子以外でも、極性分子で振動周波数が分かっているものであれば加熱は可能です。アイディア自体は面白いので、たんぱく質の固有吸収振動数など調べてみたら如何でしょう?

Q9.

無線送電に関して質問です。人体への影響はないということでしたが、航空等に対する影響もないのでしょうか?

A9.

紹介した電界共鳴方式の場合に限ります。マイクロ波方式では、水分を含む生体には大きな影響があります。航空等にももちろん影響があるため、屋外で使用できる周波数は極めて限られており、使用には厳しい制限が設けられております。

Q10.

電力供給のための機械(半径1キロ程度)を設置するためにかかるコストはどれくらいを想定していますか?

A10.

1kmというのはかなり広範囲ですね。そこまで飛ばすのは、まだ技術的な課題が多いのが現状です。またコストは伝送する電力や方式に大きく依存しますので一概に言えません。例えば磁界方式では、コアと呼ばれる磁性体が必要なので、電界方式と比べると高コストになりがちです。

Q11.

バックキャストで研究を行う利点はなんですか?

A11.

目標をきちっと頭でイメージして研究に取り組むので、場面場面でやるべきことをはっきりと決めやすいです。ただし、全く海のものとも山のものとも解らないような研究テーマには取り組みにくい、という側面もあります。

Q12.

天野先生、感動エネルギーはどんなエネルギーに変換できると思いますか?

A12.

人が新しい社会を創造するための、物理的・定量的解析が難しいエネルギーでしょうね。

Q13.

研究するにあたって、これだけは必ず考えているといった信念的なものはありますか?またあるのであれば詳しく教えてください。

A13.

実現すれば価値があるというゴールを徹底的に考えてしっかりと頭でイメージし、いったんゴールを決めたら、最後までやり抜くということです。

Q14.

無線供給など、お話に出てきた研究は、すべて名古屋大学で行われているのですか?

A14.

いえいえ、日本は勿論、世界でも取り組みが行われております。例えば磁界結合方式はMITが発表して話題になりました。

Q15.

ディスプレイといった機器からの電力損失で発生した熱を再利用する仕組みを組み込むことはできないのですか?

A15.

熱電変換素子というものがあり、温度差を利用して発電します。ただし、熱力学の法則により、温度差の小さいものは発電効率は原理的に低いです。

Q16.

遠隔で電力を供給する時、途中で光が弱まる瞬間がありましたが、なぜ最も離れた地点では供給できているのに途中で電力の供給量が弱まるのですか? 角度に関係はありますか?

A16.

電磁界解析すればわかりますが、動画で見て頂いた電界共鳴方式では、一方向のみ、ある個所で電力が伝わらなくなります。

Q17.

青色LEDを用いて、弁当を部分部分で異なる温度に加熱/冷却できると思うとおっしゃっていましたが、具体的に詳しく、説明をしていただけないでしょうか?

A17.

説明の仕方が悪かったようですね。LEDで加熱しているのではありません。青色LEDと同じGaNを用いたトランジスタによるマイクロ波発振器です。従来はマグネトロンという真空管を用いていたために大きかったのですが、半導体マイクロ波発振器のお蔭で小型化と高効率化が可能になったということです。

Q18.

ワイヤレスで電機供給は人など間に誘電体が入ると接続が切れるという仕組みになるとおっしゃっていたのですが、日常生活で応用するとなると接続が切れてしまうという事態に陥ってしまうことがあると思います。どのように実現するのですか?

A18.

そうですね。伝搬経路の途中に人が沢山いると、ずっと切れたままですね。そこで、送電部を複数別の場所に設置して、出来るだけ常に陰にならない送電の方法が検討されております。

Q19.

ワイヤレス給電では同じ周波数などであれば、同時に多くの機械を動かせるのでしょうか?

A19.

各機械が単位時間あたりに受け取れるエネルギーは台数分だけ減りますが、可能です。

Q20.

街中では人や動物が一日中活動していますが、自動的に停止して障害物を避ける仕組みでは、送電し続けるのは難しいのではないでしょうか?

A20.

そうですね。そのため、送電部を違う場所に複数設置して、常に電力を送ることができる方式が考えられております。

Q21.

現在計画が進められているとされる宇宙太陽光発電において、宇宙空間で発電した電気の送電方法にマイクロ波やレーザー光に変換したのち地球に送電する、という方法が挙げられていますが、まだその方法は確立されていないと記憶しています。講演でおっしゃっていたワイヤレス給電等の技術から応用される可能性はありますか?

A21.

我々が計画しているのは、宇宙からではなく、より現実的な地上からの送電システムです。電気自動車への給電は、すぐにできるので費用対効果を考慮しながら普及が検討されています。

Q22.

ワイヤレス送電の話なのですが、天気(気圧や湿度なども)によってどのように変わるかはわかりますか?

A22.

はい。電磁波の周波数に対する水分子などの吸収は既に分かっているので、吸収する周波数は避けて実施します。

Q23.

今回科学三昧でワイヤレス給電を取り上げた高校の教員です。電磁誘導方式は軸中心がずれると極端に給電効率が落ちるそうなのですが、簡易実験では意外ともちました。共振方式のデメリットってどんなことがありますか?また、共振方式の理解は高校生や中学生でも大丈夫ですか?

A23.

動画で見て頂いたのは電界共鳴方式で、名大の山本先生と古河電工の共同研究の成果です。電磁誘導方式と比べたデメリットはあまりなく、強いて言えばアンテナ間の誘電率の違いにより給電がストップするということくらいでしょうか。現在の高校の物理の学習内容を把握していないので、適切な回答はできません。電気回路で共振現象を学んでいるのであれば大丈夫ですが、周波数応答は複素数を用いて解析するので、高校生には若干難しいと思います。

Q24.

紫外線LEDは先進国でも使われるようになることはあると思いますか?

A24.

そうですね。ポータブルで、特に耐塩素性バクテリアにも効果がありますので、先進国でも十分利用されます。

Q25.

どれくらい遠くても給電が可能でしょうか?

A25.

電磁波は広がりますので、遠くなれば効率は落ちます。その点では、レーザーを用いたエネルギー伝送方式は、現状最も遠くまで伝送可能な方式と言えるでしょう。

Q26.

安全な水とは、バクテリアが無いことだけで言えるのでしょうか?また、他にどのような取り除くべき危険にGaNで解決できるのでしょうか?

A26.

もちろんそれだけではありません。化学的な毒物の除去や物理的なフィルタとの併用は必須です。例えばガテマラでは、食物加工工場からの排水により窒素とリン濃度が高くなり、シアノバクテリアが増えて、特に子供の病気の発症率が増えたと聞きました。人工的な薬物、汚水を危険なまま放出しないことも併せて必須です。

Q27.

ワイヤレス給電の仕組みはどうなっていますか?

A27.

いくつか方式があります。誘導方式は基本的には変圧器で、鉄心を少し話してギャップを持たせたようなものです。共鳴方式は、コイルを用いた磁界による共鳴とコンデンサを用いた電界による共鳴があります。動画で見て頂いたのは、電界共鳴です。そのほか電磁波放射はマイクロ波を用いて行います。レーザーを用いても給電は可能です。

Q28.

GaNの活用で省エネを推進するのが画期的で素晴らしいと思いました。資源としてGaNは十分にあるのですか?

A28.

窒素は多分十分でしょうが、問題は金属ガリウムですね。産地を調べてもらえれば解りますが、最も多く産出しているのはお隣の中国です。ほかにも様々な国々から原料を輸入しているので、国同士のトラブルを起こさないことが最優先事項です。また使用後のリサイクルの仕組みを作ることも大切です。

Q29.

GaNのトランジスタを用いた車を作る際、具体的にどのような問題があるのでしょうか?

A29.

技術的には、たくさんの電流を制御できる大型のチップが必要ですが、信頼性の点でまだ欠陥を0%にはできておりません。それ以外に社会的に、国土交通省が定めた安全であるといういくつもの審査を通過する必要がります。

Q30.

紫外線光とブルーライトは近い光のようだと思いますが、近視抑制効果の違いは何かありますか?

A30.

慶應義塾大学の坪田先生によれば、最近近視が増えているのは近紫外線に当たる時間が短くなり、ビタミンDの生成が不足しているためなのでは、ということです。ブルーライトの波長ではビタミンDを生成するのはほとんどありません。

Q31.

エネルギーを10分の1にした上で熱電素子などを使えばいいのではないですか?

A31.

熱電変換素子というものがあり、温度差を利用して発電します。ただし、熱力学の法則により、温度差の小さいものは発電効率は原理的に低いです。

Q32.

毎日どれだけ研究してるのですか?

A32.

日本の大学の仕組みの多くは、野球に例えると、選手は学生や助教の若手教員で、監督が教授、コーチが准教授といったところです。監督自体は野球をやらないのと同様、教授自体も研究室に入って実験をする、という時間をとることは難しいです。

Q33.

いつもどんな生活してるんですか?

A33.

朝、夜中に頂いた沢山のメールの返答を書いて、講義のある時は講義を行い、その後学生や若手研究者が書いた論文をチェックし、次のプロジェクトのアイディアを練る、というような生活です。

研究講演Ⅰ

伊丹健一郎先生のQ&A

Q1.

カーボンナノリングはどのようにして作りましたか?

A1.

ベンゼンなどの簡単に手に入る分子を触媒などを駆使して、レゴを組み上げていくようにターゲットとする分子を作っていきます。

Q2.

カーボンナノベルトの合成方法を詳しく知りたいです。

A2.

ここでは答えきれないので、論文やプレスリリースを見ていただければと思います。

伊丹研究室ウェブサイト:http://synth.chem.nagoya-u.ac.jp/wordpress/

Q3.

何故、カーボンナノベルトは夢の原子と呼ばれるくらい見つけるのが難しいのですか?

A3.

見つけたのではなく、狙って作った(合成した)んですね。なぜ60年以上作れなかったかというと、とても歪んでいるからです。ベンゼン環は本来は平面の平ったい分子です。カーボンナノベルトを作ろうと思うと、ベンゼン環を曲げないといけなくて、これをするのにすごいエネルギーが必要になります。

Q4.

ナノリングとナノベルトの違いは何ですか?

A4.

ナノリングはベンゼン環同士が一本の結合でしか繋がっていません。一方、ナノベルトは複数の結合で辺を共有しながら環状構造を作っています。ぱっと見では、ナノベルトの方が、厚みがあります。

Q5.

カーボンナノベルトから純粋なカーボンナノチューブができるということですが量産は可能なのでしょうか?それとも作るのはとても大変で量産は難しいのでしょうか?

A5.

まだ、ベルトからチューブに伸ばすことには成功していません。僕の夢の一つなので、なんとかできればと思っています。

Q6.

カーボンナノベルトの安定性及び生成効率はどの程度でしょうか?

A6.

比較的安定です。現在の合成の効率はまだそれほど高くはありませんが、試薬会社は大量に作っています。

Q7.

カーボンナノチューブにはいくつかの種類があるとありましたが、合成に成功したカーボンナノベルトは何種類ですか?

A7.

今のところ、3種類のベルトを報告しています。これからもっと報告できると思います。

カーボンナノベルトはベンゼン同士がどのような結合をすることで生成されるのですか?

Q8.

カーボンナノベルトは、ベンゼン環という基本ユニットが複数の結合で辺を共有しながら環状構造を作っています。ベンゼンなどの簡単に手に入る分子を触媒などを駆使して、レゴを組み上げていくようにカーボンナノベルトを作りました。

A8.

Q9.

カーボンナノベルトを作るのにどのくらいの期間が必要なのですか?

A9.

合成法を開発するまでには12年かかりました。ただ、一体できることがわかった今はその方法で1週間以内に作ることができます。

Q10.

カーボンナノチューブは耐久性もあり、未来の丈夫なワイヤーとして考えられてきました。しかし、短冊上のベンゼンの集まりは一体どのような利点があり、科学者から追い求められているのですか?

A10.

とてもいい質問ですね。短冊状のナノカーボンはグラフェンナノリボンと呼ばれています。導電性や半導体性など、有機電子デバイスの分野で大きな期待をされています。

Q11.

カーボンナノベルトから特定の構造のカーボンナノチューブの合成について、現状での見通しを教えていただきたいです。

A11.

まだ、ベルトからチューブに伸ばすことには成功していません。僕の夢の一つなので、なんとかできればと思っています。

Q12.

カーボンナノベルトの大量技術はどこまで進んでいますか?

A12.

試薬会社がグラムスケールでの合成には成功しています。夢はキログラム合成です。きっとできると信じています。

Q13.

フラーレン1分子の大きさはとても小さいと思うのですが、現実にはどのような状態で存在しているのでしょうか?(粉末、液体など)

A13.

分子は、固体であることも液体であることもあります。フラーレンやカーボンナノベルトはいずれも固体です。でも、溶媒に溶けて溶液にすることが可能です。

Q14.

体内時計に関する研究はどんなものですか?

A14.

分子を使って1日のリズムを48時間にしたり7時間にすることができます。そんな分子の開発研究を行なっています。

Q15.

体内時計の調節とありましたが、調節ができると何ができますか?

A15.

時差ボケを治す、睡眠障害、代謝疾患、ガンなどの現代病の潜在的な治療薬になることが期待できます。そのほか、動植物の生産性が上がることが期待できます。

Q16.

自殺分子は、ストライガ以外の植物には影響がないのですか?

A16.

最近ITbMで開発した分子は、他の植物への影響はとても少ないことがわかっています。

Q17.

スーパーストリゴラクトンの分子を使用した際の、環境への影響はないのですか?

A17.

今まさにそれを調べているところです。

Q18.

ストライガ以外を強制的に発芽させることは可能なのでしょうか?

A18.

可能です。

Q19.

ストライガの発芽を可視化できるようになることは生育の抑制にどう関わるのですか?

A19.

可視化分子ヨシムラクトンは、発芽のメカニズムの解明などの基礎研究目的で開発したツール分子です。生育の抑制等への影響などはそこまで研究していません。

Q20.

寄生植物対策に使われるコストはどのくらいかかりますか? 土地が広いので莫大なものになり、それら全てを治すためにどのくらいの時間とお金が必要であるとお考えですか?

A20.

コストや時間の試算は、まだ全然わからない段階です。研究がもっと進めば見えてくるものだと思います。

Q21.

ストライガの自殺発芽をもたらすための実質的な作業はどのようなものですか?

A21.

いい質問ですね。まだこれからという段階ですが、分子を大量に作って、耕作地に撒いていくというのが主な作業になるかと思います。

Q23.

ストライガを撲滅してしまうことで、アフリカの自然環境や他の生物に影響が出てしまうのではないでしょうか? また、その対策として考えているものはありますか?

A23.

とても重要な問題です。これから、その辺りの調査をアフリカでの実験で行っていきたいと思っています。

Q24.

炭素の結合の仕方でどのような性質の違いが現れるのですか?

A24.

とてもいい質問ですね。ほとんどあらゆる物性に影響を及ぼします。ぜひ研究者になってほしいですね!

Q25.

分子の強度はどのようにして調べるのですか?

A25.

実際に機械的に引っ張って強度を調べています。

Q26.

分子を美術館に飾る以外に何が夢はありますか?

A26.

世界中の人が使ってくれる分子を作ることと、僕よりも優れた研究者を一人でも多くプロデュースすることです。

Q27.

伊丹先生の考える、分子の「美しさ」とは何でしょうか?幾何的なものでしょうか?

A27.

いい質問ですね。幾何学的な美しさはたまりませんね。でも、何が美しいかは人それぞれ違うのかもしれません。

Q28.

ベンゼンに恋をしたきっかけは何ですか?

A28.

かわいいからです!

Q29.

ウルトラマンみたいな形の分子は作れますか?

A29.

作れると思います!

Q30.

色々な分子がありますが、なぜベンゼン環にはたくさんのすんごい力があるのでしょうか?

A30.

ベンゼンが偉大だからです(笑)。

Q31.

分野を統合するときに苦労したことは何ですか?

A31.

専門用語などの壁はありましたね。でもこれはすぐに解消できることがわかりました。

Q32.

分野を統合することは日本全体として行うとさらにかなり効率が良くなると思います ITbMとして日本全体の研究所と協力して活動する計画はありますか?

A32.

計画と言えるようなものはまだないですが、個人的にはとても興味があります。もっとダイナミックにワクワク研究ができそうですしね。

Q33

ITbMでは技術者の方々の交流の中で思いついた実験を直ぐに実行しているように思えます。 何か思いついた実験を直ぐに実行する為の仕組みがあるのでしょうか?

A33.

特にはないですね。学生や若い研究者が「勝手に」始めるのです。それを許容する素晴らしい空気がITbMにはあります。

Q34.

分野融合の魅力的なところは何でしょうか?戦略的(必然的)に融合を起こすのか、アンダーワンルーフので偶然(自然発生的)に起きるのでしょうか?

A34.

戦略的なところもありますが、でも環境さえ整えば、あとは勝手に自然発生的に起こることを僕らは経験しましたね。後者の方がうんと嬉しいですね。

Q35.

ITbMの総力をあげて1つの研究を行うときには、具体的にどんなことをするのでしょうか? お金をたくさんかけたり、研究者を増やしたりするのでしょうか?

A35.

だんだん盛り上がって、総力をあげていくことが多いですね。ただ、お金をたくさんかけたりはほとんどしていません。やっぱり、アイディアとパッション(本気)が一番大事ですね。

Q36.

研究とあまり関係ない質問ですみません。どうすれば先生のように、研究のワクワクを上手く伝えられるスライドが作れますか? 何か心がけていること等ありますか?

A36.

スライド1枚でいかに効果的にエッセンスを伝えられるかは常に考えています。あとは、自分が本当にワクワクすることしかプレゼンしないことにしているので、そう伝わっているんだと思います。

Q37.

高校の同級生が同じ研究に再び取り組むというエピソードがありましたが、先生自身が縁を感じた出来事は何かありますか?

A37.

ITbMそのものが出来上がったことが縁ですね。詳しくは「名大ウオッチ」を見てください!

Q38.

研究するにあたって、これだけは必ず考えているといった信念的なものはありますか?またあるのであれば詳しく教えてください。

A38.

あまり誰もやっていない(やらない)ユニークなこと、クレイジーなことができればなとは常に考えています。

Q39.

私は遺伝子について興味があるのですが、遺伝子操作する事で不老不死が実現可能になるということを知ったのですが、その事について皆さんはどう思われますか?

A39.

いい質問ですね。答えるのがとても難しいです。でも、しっかりと研究することで、そんなことができるようになるのかもしれません。人間にとっては嬉しいことなのかもしれませんが、地球全体にとっての幸せなのかはわかりませんね。

研究講演Ⅱ

河西春郎先生のQ&A

Q1.

なぜ2光子励起に対応した分子が必要だったのですか?

A1.

3次元空間で点状にケイジドグルタミン酸の光化学反応を起こすためです。

Q2.

脳完全シミュレーションは無理だとおっしゃられましたが、近似を行った際、誤差が大きくてもそこに知能が生まれる可能性はないでしょうか?

A2.

特殊知能は生まれます。一般知能は動物の脳で実現しているだけでよく定義もされていません。高度に適応的な知能です。生物の場合には揺らぎ現象をうまく使っていて、沢山のシナプスを揺らがせていることがその原因の一つと考えていますが、そうだとすると計算機は揺らぎの発生が得意でないので、近づけないかもしれません。

Q3.

今まで全く知らなかったことが知れて、とても面白いです。そこで質問なのですが、AIでヒトの脳を再現することができないのは分かりましたが、私は、ヒトは感情に左右されて正しい選択ができなくなってしまったり、考えられなくなってしまったりするので、AIがヒトの脳を超えることはできると思いますが、どう思われますか?

A3.

特殊知能では超えています。人口知能の本当の専門家達は一般知能の実現に否定的です。現在はブームの中にあるので冷静な判断もしづらいかと思います。

Q4.

脳はどのように計算していますか?

A4.

わかっていません。

Q5.

シナプスは、どうすれば増えるのでしょうか? また何をすると減ってしまうのでしょうか?

A5.

一般に学習が多い場合に増えると考えられていますが、大事なのはシナプスの数でなく質の方です。

Q6.

脳の模倣に頼らない形で知能を造ることは可能でしょうか?

A6.

特殊知能はできます。一般知能は生物の脳でだけ実現しているので、それを理解するという形しか取れないと思われます。

Q7.

スパインの頭部増大に、アクチンの重合が関わっているということでしたが、あるスパインが使われると、アクチンの重合が促されるというようなメカニズムは、わかっているのでしょうか?

A7.

だいたい以下の様ですが、沢山の経路があります。

細胞内カルシウムイオン濃度の上昇→CaMKIIの活性化→Rac族小分子G蛋白の活性化→アクチンの重合

Q8.

シナプスって走ったら消えると聞いたことがあるのですが、テスト前に走らない方が良いですか?

A8.

記憶は変な思い出し方をすると不安定になることが知られています。正しい反復学習は記憶の長期化に必須です。

Q9.

グリア細胞とニューロンの違いについて教えてほしいです。

A9.

神経細胞の突起は長く、1m以上になり、活動電位が流れますが、グリアはその様な長い突起がなく、長距離伝達はしません。

Q10.

もう忘れましたが3才頃ありとあらゆる車の名前を覚えたそうです。これはあらゆる神経回路を作る練習だったんでしょうか?

A10.

そうとも言えると思います。一般に幼年期はシナプスの回転が早いので覚えやすく忘れやすいと思います。でもシナプスの個性は共通なので、今でももの覚えがいいのでないですか。

研究講演Ⅲ

松本邦夫先生のQ&A

Q1.

HGFの投与による効果は、どれくらいの期間持続するのですか?もしとても長いのであれば、実用化されたとして、服用された患者さんは長く副作用を抱えることになると思ったのですが、いかがでしょうか?

A1.

副作用の心配は、医薬品として開発を進める限りありました。ただ、今は、膨大な試験の結果を踏まえ、そのような副作用の心配はありません。HGFは、日本はもとより、世界中で医薬品として利用できるように、世界共通のルールに従って開発を進めています。膨大な副作用の試験(動物等)も経て、現在、臨床試験が進められています。一般に医薬品として開発するためにも、その物質の代謝、体内動態が詳しく調べられます。HGFは、例えば、静脈注射や皮下注射されますと、やがて血流に移行し、その後翌日には血液中に検出できないぐらいになります。一方、現在、臨床試験が進められている、脊髄損傷やALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療では、髄腔内投与といって、運動神経のある閉鎖空間への局所投与です。この場合、血液中に比べずっと長くHGFが維持されますが、ずっと留まっているわけではないです。すでに、髄腔内投与での安全性を確認するヒトでの臨床試験(第I相試験)が終了し、HGFの安全性が確認されました。それに基づいて現在、第II相試験が進められています。

Q2.

原子間力顕微鏡は、なぜ蛍光物質を使わなくて良いのですか。

A2.

分子の形や動きを探るためのツールである探査針(探針)を使うので、蛍光(化学物質やタンパク質など)などで分子を標識しなくても、分子を観ることができます。分子に蛍光や発光のためのツール分子で目印をつけなくても、高速AFMは分子の形と動きをより直接的に観察できます。蛍光物質や発光タンパク質で分子を標識すると、分子の機能に多かれ少なかれ影響を与えます。とりわけ目印が大きい場合、目的の分子の機能や動きが影響されます(複数/多数の蛍光物質がタンパク質に結合。発光タンパク質を融合させることができますが、蛍光タンパク質は分子サイズが大きい)。ですので、AFMには、蛍光/発光物質を使うデメリットはありません。それから、蛍光物質で標識した分子を蛍光顕微鏡で観察しても、その解像度から、分子の形とその構造変化を観察できません。(この返答、AFMに詳しい金沢大学NanoLSIの中山隆宏准教授からです)

Q3.

高速AFMは針を振動させて動きを観察するとのことでしたが、その針が観察する物質に当たることでその物質自体の動きに影響が出るということは無いのでしょうか?

A3.

はい、そうなんです。探針が接触することで分子の挙動に影響が出ることがあります。でも、探針が接触すると、分子が視野から弾き出されたりするので、探針が接触することを認識できます。やはり、探針の影響を観察者が識別することは大切で、具体的には、接触するときの力を調節したり、一定時間以上観察しつづけた視野と、そうでない視野(ステージ上の別の場所に観察範囲を移動した直後(探針の接触回数が少ない視野))を比べて、分子の挙動に影響がないか比較して、探針の影響のない観察結果であることを確認します。(この返答、AFMに詳しい金沢大学NanoLSIの中山隆宏准教授からです)

Q4.

高速原子間力顕微鏡を使いすぎて、針やタンパク質がすり減ったりしませんか?

A4.

はい、そういうこと、あります。走査回数がかなり多くなると探針先端がすり減ます。先端がすり減ると、分解能が低下することがあります。オリンパス社島津製作所のウェブサイトに例が示されています。ただし、私たちが使用している高速AFMでは、carbon nanotubeやamorphous carbonと呼ばれるcarbon材料の探針が利用され、これらは探針のすり減りが起こりにくい材料です。(この返答は、AFMに詳しい金沢大学NanoLSIの中山隆宏准教授からです)

Q5.

高速原子間力顕微鏡はどれくらいの値段で買えますか? また、いま世界に何台くらいありますか?

A5.

(株)生体分子計測研究所で市販していて、およそ2000万円で購入することができます。現時点で世界に何台あるのか、正確な情報はないのですが、2015年3月時点での同研究所からの販売が約40台です(http://www.se.kanazawa-u.ac.jp/bioafm_center/j/research_report.pdfの12ページ)。AFMの利用は増加しているので、おそらく、現在までに100台を超えていると思います。(この返答は、AFMに詳しい金沢大学NanoLSIの中山隆宏准教授からです)

Q6.

分子の運動が可視化できるようになったことに感動しました。少し前にはモータータンパク質のアニメーションにびっくりしましたが、実際に見られるようになるとは!

A6.

僕の場合は、研究の対象としているHGFやその受容体分子のリアルな、ありのままの姿を見た時はものすごく興奮しました。やがて、原子間力顕微鏡にとって代わる、分子の動きが4K/8Kぐらいで見えるような技術ができるかと思います。その頃、君は生きてるけど、僕はぽっくりいってるかもしれないねえ〜。

Q7.

インスリンが発見された頃はウシのインスリンだったということですが、なぜウシ由来なのでしょうか。 また、現在はどうですか。

A7.

実験としては、最初、イヌのすい臓からインスリンが発見されましたが、当然、イヌを医薬の原材料にすることはできません。もちろんヒトのすい臓からということは論外です。一方、ウシは食用に利用され、その当時、インスリンが含まれているすい臓は、不要なものとして捨てられていました。そこで、ウシのすい臓から精製されたインスリンが医薬品として使用されました。遺伝子組換えタンパク質を作る技術が40年ほど前にできて、その後、現在に至るまで、ヒトインスリンが医薬品として利用されています。ヒトHGFも組換えタンパク質として製造されて、臨床試験に使われています。

Q8.

受容体が2つあって、ドッキングするよさとはなんですか?

A8.

細胞膜を貫通している受容体の細胞内に突出した部分は、タンパク質をリン酸化する酵素活性があります。「基質」って聞いたことがあるかな?基質とは酵素の作用を受ける「受け手」のことです。受容体が隣にくると、一方の受容体が隣の受容体(受け手)を基質としてリン酸化します。この時、リン酸化されるためには、ごく近くにいないと手が届かないのと同じで、受容体のすぐ隣に受容体がいないとリン酸化できません。なので、ドッキングすることが必要です。

Q9.

基礎研究と応用研究、理学と工学の違いや関係を教えてください。

A9.

基礎研究は、「これが知りたい!どうしてこうなるの?」という真摯な気持ちを背景に、自らの疑問を解明すべく向き合う研究。応用研究は、「これを作れば人の役にたつ」、「これを開発できれば人の役に立つ」、そんな思いが動機になって向き合う研究です。おおよそですが、理学は基礎研究に関する学問、工学は応用研究に関する学問と捉えていいと思います。ただ、基礎研究と応用研究、理学と工学の境目は、年々なくなっています。理学部に入ったから、応用研究ができないとか、工学部に入ったから基礎研究ができないということはありません。基礎研究と応用研究、理学と工学、どっちが大切という偏りはありません。君自身はどっちに向いているか、好みの違いはあると思います。まずは自分自身の気持ち、個性を思って選択したらいいと思います。僕自身は大学生の時は基礎研究をしたいと思っていましたが、やがて、皮膚科での経験を経て、応用研究をしたいと思うように変わりました。

Q10.

毎日どれだけ研究してるのですか?

A10.

自分自身が実験をするということは、教授になってからはほぼありません。論文を書いたり、データについて議論したり、研究費の申請・報告、それらも研究に関わる仕事として、とりわけラボの主任がはたすべきものすごく大切な仕事になります。時間として8:30~7:30ぐらいです。でも、実験の時間は、個人によってまちまちで、9:00〜5:00でスピーディーに研究をこなす人もいます。

Q11.

いつもどんな生活してるんですか?

A11.

平均的には、ラボで研究に向かう時間として8:30~7:30ぐらいです。時折、キャンパス内をウォーキングします。自分自身が実験をするということは、教授になってからはほぼありません。論文を書いたり、データについて議論したり、研究費の申請・報告をしたり、講義をしたり、会議に参加したりすることが主な仕事です。若い時は、研究がメインで、その次に学生の指導、論文作成といった仕事でした。

Q12.

松本先生は、地学部に入っていたと聞いたのですが、生物が好きだと書いてありました。どうして地学部に入ったのですか?

A12.

地学部の先輩から、キャンプしながら化石を探したりすることの楽しさを聞いて(クラブへの勧誘ですね)、それに流されました(笑)。でも、キャンプしながらの発掘が楽しかったです。生物部でも楽しいことはあったと思います。少なくとも、大学で何を専攻するということとクラブ活動、変わっても問題ないということでしょう。

Q13.

化石とかどこで発掘するんですか?岐阜……?

A13.

自転車で発掘に出かけました。須坂市は長野県の山あいに近く、自転車で行けるところに化石の見つかる地層がありました。

Q14.

長野県で海の生物のイワシの化石が見つかったのはなぜですか?

A14.

イワシの化石を発見したのは、2,000万年前の地層でした(地学の先生から教えてもらって)。その地層は、2,000万年前には海底にあった地層で、その後、日本列島ができるまでにゆっくりと隆起したと思います。地学部の活動のためのキャンプが楽しかったこと、イワシの化石を見つけた興奮、それらが記憶に残っています。

Q15.

自分は全ての生物種が好きで将来どの学問に行けばいいか迷っています。どうすればいいですか?今のところは海洋生物学を学びたいと思っています。

A15.

海洋生物について学びたいという思い、それを大切にしたらいいと思います。海洋生物学についての研究者(教員)がおられる大学に進学することがいいと思います。将来、学びたいと思うこと、やりたいと思うことが、今とは変わるかもしれません。その時は、柔らかい気持ちで変化したらいいです。そのとき、先々のことを思うと、深く考えれば考えるほどに不安が膨らむことが多いです。先のことは誰にもわかりません。後先を考えすぎず、「挑戦しよう!」、一歩踏み出すと必ず新しい成長につながります。

Q16.

松本先生は高校時代、化学が嫌いだったことには驚きました。教師の果たす役割は大きいと感じました。研究などで化学が嫌いで困ることはなかったですか?

A16.

はい!、困りませんでした。生物学の中では、生化学/生物化学と呼ばれる科目/領域は化学に関係しています。アミノ酸、タンパク質、DNA、化学に関係してますが、それらを学ぶことは得意でした。大学院での専攻は生物化学でした。自分の体がアミノ酸、タンパク質、DNAでできている、生物について学んでいると思うと、化学のことを違った感覚で受け取っていたと思います。今でも、異分野研究者と融合研究をしていますが、自分の研究や仕事に関係していて、知らないことが出てきたら、その都度、必要なことだけかもしれないけど、少しずつ理解を深めていくことができます。

Q17.

生物の1番好きな所はどこですか?

A17.

親から子、カエルからはしっかり正確なカエルができるし、一方で、環境が変化してもしなやかに対応できて、、、素晴らしいなあ〜、と思います。そのような生物らしい、正確だけど柔らかいところが生物らしいところだけど、どうしてそのようにできるか、理解できた時はうれしいです。それから、今は、生物学は医学と密接に関係しているので、病気のことを理解したり、治療のための医薬の発見や開発にもつながる生物学/生命科学が好きです。

Q18.

どのようにしてストレスを発散されていますか?

A18.

今は、ストレスをさほど感じていないです。ずっと以前に大きなストレスを感じていました。組織やチームでのゴタゴタ(研究組織を含め、しばしばどこの組織にもあると思います)、一部の人たちのわがままを受けながら、組織として一緒に仕事をするときにそれ以外の人にストレスがかかります。チームが同じ方向を向いて、仕事をできればストレスは少ないと思います。研究や仕事そのもののストレスは、案外小さいと思っています。もし、大きなストレスを感じたら、そっと休みをとって一人で旅行に行ったり、気心の知れた友人に苦労話しをしたり、あとは、やせ我慢をしてます。やせ我慢も必要だと思います。

Q19.

病院皮膚科で働かれたときに医師免許を取得されていたのでしょうか?理学部に通っていた勉強に加えて医学を勉強されたのですか?

A19.

僕は医師ではないですし、医師免許はないです。大学院博士課程(理学系研究科)を修了して、当時、たまたま大阪大学付属病院の皮膚科で臨床をしないで、もっぱら研究をする医師でない助手(現在の助教)を探していました。多くの同期の(医学部ではない)学生は臨床の教室ということで(決して昇進はできないし)、誰も皮膚科に行こうと思わなかったけど、僕は後先を考えずに「やってみよう!」と思って皮膚科に行きました。その中に入って、皮膚科に関係した研究をしながら、その都度、自分の研究に関連した医学や病気のことを学びました。やがて、それが積もって、ずいぶん深い理解ができるようになりました。逆に、生物学の教科書に記載されていたことは、薄っぺらい知識だったけど、病気の仕組みと密接に関係していることがわかると、その知識は、リアルで活き活きとした知識になりました。

Q20.

病院で働いた経験が今に繋がっていることに、感銘を受けました。

A20.

先々のことを思うと不安になるよね。皮膚科に飛び込んだ時は、先々を深く考えないで、一歩踏み出した感じです。当時、友人達からは「皮膚科?、その先終わりやで〜!」、みたいに言われたけど、今となっては、その後の僕の研究の方向性に大きく影響しました。病気で苦しむ人に少しでも喜んでいただける仕事をしたいです。そのきっかけは、皮膚科で仕事をできたことでした。