名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

院生企画インタビュー「GTR Chemistry Workshop 2020」

GTRには、履修生が企画を提案し審査に通ることで、企画の実施に対してプログラムから支援を受けられる「GTR院生企画」という制度があります。
今回の「GTR Chemistry Workshop 2020」は、学生が企画・運営を行う化学系のシンポジウムとして、毎年、名古屋大学で開催されてきたイベントです。今年はGTRの院生企画として、「オンラインの今だから聞きたい研究人生」と題し、オンラインで開催されました。

企画者による詳しい活動報告レポートはこちら(PDF)をご覧ください。

多彩なキャリアを経て国内外で活躍されている4名の先生方をお招きし、研究内容のご講演に加えてパネルディスカッションの時間を設け、キャリアパスや研究への向き合い方など、幅広くお話を伺いました。

GTR Chemistry Workshop 2020
日時:2020年12月7日10:00-16:40
場所:Zoom(オンライン)

プログラム:
  • 開会挨拶
  • 講演会(午前の部・午後の部)
  • パネルディスカッション
  • 閉会挨拶・表彰式

企画者:
  • 戸谷充寿(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士後期課程2年)
  • 上岡史人(工学研究科有機・高分子化学専攻 博士後期課程1年)
  • 上田彩果(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士後期課程1年)
  • 坂井美佳(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士後期課程1年)
  • 藤木秀成(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士後期課程1年)

講演では、最新の研究内容の紹介の他、研究への向き合い方や研究室運営のポリシーなど、先生方の研究者としての価値観にも触れることができました。
質疑応答の時間内に全ての質問に答えきれないほどたくさんの質問が寄せられ、Zoomのチャット機能も活用して活発なディスカッションが行われていました。

それぞれの先生から、最も良い質問をしてくれたと思う学生にベストディスカッション賞が贈られました。
パネルディスカッションの様子

たくさんの質問の中から、それぞれの先生方が最も良い質問をしてくれたと思う学生に対して、ベストディスカッション賞が贈られました。
例えば森本先生からは、選出の理由として「鋭い指摘だなと思った。ぶっ飛んだ発想、面白い発想だと思ったので」というコメントがあり、受賞した学生からは、「質問の内容に対して賞をもらえるような機会はなかなかなく、これを糧にこれからも面白い発想ができるようにしたい」といった声が聞かれました。
千葉先生からは、「実験が上手くいかなくてしんどい時、どんな風に立ち直りますか」という研究内容以外の質問をした学生に対して、ベストディスカッション賞が贈られました。選出の理由として、この質問に答えることを通じて、千葉先生ご自身が恩師から言われた言葉を改めて思い返すきっかけになったことを挙げられ、また、「まだ学部4年生ということで、"これから頑張って"という応援の意味も込めて」というエールも頂きました。

パネルディスカッションでも、Zoomのチャットには多数の質問が寄せられ、「海外での研究生活で苦労したこと」「研究以外での楽しみ」「メンタル面でのモチベーションの保ち方」など、参加者からの多岐にわたる質問によって話題が広がり、多彩なキャリアを持つ先生方から様々なお話をお聞きすることができました。

院生企画インタビュー

イベント開催の後日、企画者の上田さん、藤木さん、上岡さんの3人にお話をお聞きしました。

Key topics
企画の背景
イベントの中で「質問」が果たす役割
オンライン開催の難しさ
その年にしかないオリジナリティー/学生が主催することの意義

企画の背景

上田:毎年、有機化学系の研究室に所属する学生が主体となってシンポジウムを企画しています。一つの研究室の学生だけで運営するのではなく、毎年、3~4の研究室からそれぞれ一人か二人くらいの学生を出すというのが慣例になっています。
イベント自体は毎年やっているものですが、今年はコロナ禍で、講師の先生を直接呼べない状況だったので、どう工夫するか結構悩みました。でも、この環境でしかできないことをやれたらいいよね、という思いで、企画をスタートしました。

藤木:例年の会は、学外のいろんな先生をお呼びして講演していただいたあとに懇親会があるという形式で、学生は講演を一方的に聞くだけでなく懇親会で先生といっぱい喋れて、講師の先生と学生との距離が近いというのがシンポジウムの「売り」でした。学生は懇親会の場で、先生方にキャリアの話を聞いたり、自分の進路を考える上で参考になるような話を伺って相談したりしてたんですけど、今年は懇親会ができない状況だったので、何かそれに代わるものをと考えて、パネルディスカッションの企画を新たに設けました。

上田:うちのラボの参加者には、パネルディスカッションがすごく好評でした。例年は、個人個人が先生に話しに行かないと話を聞けないので、引っ込み思案でなかなか話しに行けない人はあまり交流できなかったんですけど、今回は参加者全員が講師の先生方の人生経験を聞くことができて良かったと言ってもらえました。

藤木:例年の懇親会のスタイルだと、先生たち全員としっかり話すっていうのはなかなか難しいけど、今回は4人の先生全員の話を聞けたので、そこはオンラインのいい所だったと思います。

  • その他に今回の企画をやってみてよかったことはありましたか?

上田:4人の先生に来ていただいたので、有機系の中でも、いろんな分野に触れられました。研究に関してだけではなく、先生方の人生について聞け、新しい視点を得られたのもよかったです。
運営者としては、これまで学会の運営をしたことがなかったので、講師の先生に依頼したり、その後の先生とのやり取りだったりはすごく勉強になりました。オンラインの状況下でやるという経験も、今後に活かせるんじゃないかと思います。

藤木:これからもしばらくはオンラインで色々なものが開催される時代になると思うので、今後のためにも、自分たちで企画して、運営も全部学生だけでやり切るというのは、貴重な経験だったと思います。

上岡:運営の経験は、非常に勉強になりました。特に挙げるとすると、先生とのメールのやり取りを通して、講師の先生の人柄に触れられたのが、自分にとってはとても貴重な経験になったんじゃないかなと思っています。こちらが学生にも関わらず、すごく丁寧なやり取りをして下さいました。

上田:みんなすごくいい先生で、シンポジウムが終わってからも・・・

藤木:30分ぐらい談笑してました。どの先生もとてもいい先生でした。

参加者からのたくさんの質問が会の中身を膨らませてくれた

上田:思った以上にみんな質問してくれてすごく良かったです。

藤木:確かに。みんないっぱい質問してくれてた。

上田:来て頂くからには講師の先生方にも楽しんでいてもらいたいし、何かしら、名古屋に来て良かったなと思って帰ってほしいという気持ちがあって。例年だと、学生がどんどん質問して懇親会でもいっぱい話して、というのが来て下さった先生方への歓迎の表し方だったと思うんですが、今年はオンライン開催なので、先生方への還元は質問という形でしかできない状況でした。なので、学生からたくさん質問が出るように、講師の先生ごとに簡単なスライドを準備して事前に勉強会をやったり、「学生が主体だからどんどん質問してね」と声をかけたりしました。
結果として、ただ見てるだけじゃなくて参加型の企画になって、すごく良かったと思います。

上岡:「質問してね」って直接声をかけてた人たち以外もいっぱい質問してくれて、参加者にとっても良い会だったんだなっていうことがよく分かって、嬉しかったです。

藤木:パネルディスカッションでも、いっぱい意見や質問が出てて良かったです。普段の研究生活で困っていることだったり、みんな素直に自分が聞きたいことを聞いてくれていたと思います。

上田:オーディエンスの皆さんが、質問という形で会に積極的に参加してくれたおかげで、本当にすごく盛り上がったと思います。終わった後、講師の先生からも「名古屋の学生さん、いっぱい質問してくれてすごいね」とおっしゃっていただけました。

例年とは異なるオンラインでの開催

  • やってみて難しかったことや大変だったことがあれば教えて下さい。

上田:オンライン開催なので、何が正解か分からないというか、とりあえず手探りでした。前例がないから、どうしたら盛り上がるのかなとか、どうしたらみんなが交流できるのかなとか。

藤木:対策とか準備として、何をやればいいシンポジウムになるのか分からなかったのが大変でした。

上田:もともと学生と講師の先生とのコミュニケーションを大事にしてるイベントで、例年だと、講演で学生がどんどん質問して、懇親会で直接いろいろお話しして、先生に学生の名前と顔を覚えてもらって、という感じなんですが、それに代わるコミュニケーションの場を、Zoomでどうやってつくるかという点が難しかったです。

藤木:やっぱり一学生と講師の先生とのコミュニケーションという点では、対面には勝てないですね。
でも、オンライン開催のイベントで、先生方に講演して頂くだけだったら、学生は本当にただただ聞くだけで、全く交流がなかったと思いますが、学生と先生の交流を少しでも増やしたいという思いで、パネルディスカッションを企画したり、質問が沢山出るように準備したり、いろいろ工夫はできたので、オンライン開催という状況の中では、よくできたんじゃないかなと思います。

上岡:あと反省としては、いろいろと始める時期が遅かったかな、というのは少し思いました。講師の先生に予稿のお願いをしたりする時、締め切りが短くてちょっと申し訳なかったです。

上田:春ぐらいに去年の先輩から引き継いで、でも新型コロナウイルスの状況が読めなくて、「本当にやるの?どうする?」みたいな感じでしばらく保留になってて。9月ぐらいにやっと企画メンバーで集まって話し合い始めた感じです。

藤木:講師の先生方に初めてメールを送ったのが開催の1か月半前だったので、確かに、先生方にはそこから様々な準備をお願いして、期間が短くて心苦しかったですね。

上岡:ただ、運営メンバーの5人全員が、それぞれできることをやってくれたおかげで、タイトなスケジュールの中でもしっかりと仕上げることができて、そこは良かったかなと感じています。
坂井さんは当日の司会をこれ以上ない形ですごく上手く回してくれたし、戸谷さんは上級生として俯瞰的に見てまとめて下さったし、上田さんはいろんなことを率先してやってくれて、藤木くんは細々した仕事をいろいろやってくれて、ありがたかったです。

上田:上岡くんも、いろんなメールの文面を考えてくれたり細々した所でいろいろ助けられました。みんな、誰かが「私これやる」って言ったら、「じゃあ、私はここ」みたいな感じで、それぞれに必要な役割を見つけていい具合に動けていたと思います。

その年にしかないオリジナリティー/学生が主催する意義

  • このシンポジウムは毎年開催されるイベントということで、来年以降運営を担当される方にメッセージをお願いします。

藤木:学生が、自分が選んだあこがれの先生を講師としてお呼びして、一対一でやり取りするという機会はそんなにないと思うので、それを楽しんでほしいと思います。私としては、先生との交渉ややり取りは、すごくいい経験になりました。

上田:GTRの院生企画の面接で「去年とどこが違う?毎年やっているからやるというのでは駄目」というようなことを問われたので、今年のこの5人だからこそ出せるオリジナリティーというか、「自分たちはこういうことがしたい」みたいなことを5人で話し合ったんですが、今回は、それが良い方向に行ったと思います。
次回主催する人たちは、また新しいメンバーで、それぞれの代の面白みというか、その年のメンバーにしかできないことを考えて、新しさや独自性を見つけて、運営してほしいなと思います。

上岡:今年は初めてオンライン開催だったので、そういう意味では必然的に例年とは違う独自性が出ることになったんですけど、ポスター発表とか、できなかったこともありました。来年以降は、例えば新しいオンラインツールを使ったりして、今年できなかったことにも挑戦していけると思うので、そういう所で、今年とは違った独自性を出してもらえたらなと思います。

上田:今年の場合は、「コロナ禍の状況で、私たち卒業できるのか?」とか、「企業やアカデミア、いろいろある進路の選択肢の中で、何に重きをおいて選んでいったらいいのか?」と進路について悩んでる時期だったのもあって、「進路選択」や「研究人生」にフォーカスした企画になりました。
様々なキャリアパスを経験している先生方を呼んで、研究内容だけじゃなく、研究人生について色々な観点からお話を聞こうというコンセプトは、今年ならではのオリジナリティーだったと思います。

藤木:「いろんな進路を選んだ先生の話を聞きたい」っていう、学生自身の欲求みたいなところから、パネルディカッションという今年独自の企画につながっていった感じです。

上田: 企画者が変わればまた違った会になると思うんですけど、同時に社会の状況とかも変わり、学生が求めるニーズもちょっとずつ変わっていくと思うので、それに合わせて、今、自分たちがしたいことをやればいいのかなと思います。
先生に「こうしなさい」って言われたからとか、先生がこれやったら嬉しそうだなということではなくて、学生企画なので、学生が学生のために、自分たちが「こういう企画があったらいいな」と思うことをやるのが、一番いいと思います。

2020.12.23 オンラインにてインタビュー

企画者
  • 上岡史人(工学研究科有機・高分子化学専攻 博士後期課程1年)
  • 上田彩果(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士後期課程1年)
  • 藤木秀成(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士後期課程1年)