名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

GTRリトリート2020を実施しました。

GTRリトリート合宿は、参加する同世代のすべての学生がネットワークを築くことを目的として開催しています。今年度はオンラインでの実施となりましたが、GTR生、企業からの参加者、学内教員、連携研究機関の教員、総勢200名以上がオンライン上に集い、活発な交流が行われました。

イベントスケジュール

  • 9月24日(木)午後~
M2生、D1生は、異分野融合コンテストに向けて各チームで準備を開始
  • 9月25日(金)9:00~17:30
開会挨拶、趣旨説明
教員による研究シーズ紹介 M2生、D1生は異分野融合コンテストの議論
D2 生による研究紹介
D2 生(発表者)との交流
異分野融合コンテスト発表会
特別講演1:
森島 邦博(名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻 特任助教)

特別講演2:
丹治 幹雄(一般財団法人アライアンス・フォーラム財団 理事)
服部 亮(ロート製薬株式会社 再生医療事業部 部長、名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 客員教授)
表彰式、閉会の挨拶

異分野融合コンテスト

異分野融合コンテストは、異分野の学生同士がチームで融合研究を考えることを通じて、融合研究を行う上で必要な、発想力、研究立案力、コミュニケーション力、プレゼン力などを向上させることを目的としています。

24 日(木)の午後にチーム分けが発表され、M2生、D1生からなる5 名前後のチームで議論を開始。25日(金)の午前中までの時間を使って、チームで研究テーマを設定し、異分野融合の研究プロポーザルとして仕上げ、25日(金)の午後に、リトリート参加者全員の前で発表しました。

環境問題や食糧問題などの世界規模の課題に挑戦する融合研究提案や、異分野融合の知見を活かした研究支援ツール、異分野の研究課題を克服するための新たな手法の提案など、10チームからのユニークでチャレンジングな提案に対し、参加者からは活発な質問やコメントが寄せられていました。

審査員(学内・連携研究機関の教員、企業からの参加者)が、発想のユニークさ、斬新さ、柔軟な発想、論理性、具体性、実現可能性の観点から投票を行い、以下の3チームの提案が優秀賞に選ばれました。

第1位:Iグループ「細胞壁を代替する分子細胞カプセル」
坂井 美佳(理・化学 D1)/深津 孝平(理・生命 D1)/加藤 丈裕(工学 D1)/周戸 大季(理・化学 M2)/吉田 真理(理・生命 M2)
第2位:Jグループ「組織認識能を有する触媒が駆動する植物内での農薬活性化」
藤本 瑛代(創薬 M2)/笠原 功輝(生命農学 M2)/池本 悟(理・化学 D1)/栗本 道隆(創薬 M2)/上田 彩果(理・化学 D1)
第3位:Bグループ「i MET: 没入型分子探索ツール ~VRを介して分子を肌で感じる~」
小寺 知輝(創薬 D1)/山田 圭悟(理・化学 M2)/鈴木 隆平(工学 D1)/ 久田 拓海(創薬 M2)/米村 開(理・化学 D1)

教員による研究シーズ紹介/D2 生による研究紹介・D2 生との交流

M2生、D1生が異分野融合コンテストの準備を行っている間、それ以外の参加者向けに、教員とD2生による研究紹介が行われました。
部局や研究機関を超えて、12名の教員、13名のD2生が最新の研究シーズや自身の研究の面白さを紹介し、Zoomのチャットには多数の質問やコメントが寄せられ、オンラインでも活発な研究交流が行われていました。

昼休み後には、研究発表を行ったD2生がZoom のブレイクアウトルームに分かれ、参加者が自由にルームを出入りして、学生と面談や研究のディスカッションができる時間も設けられました。
各ブレイクアウトルームでは、企業の人事担当者が学生とざっくばらんに交流する様子や、連携研究機関の教員と学生が研究のディスカッションをする様子などが見られ、「人」と「研究」を知り、つながりを構築する機会として活用されていました。

D2生の研究発表には、審査員が投票を行い、以下の2名がBest Presentation Awardに選ばれました。

Best Presentation Award
梶原 啓司(理・化学 D2)/ 松村 護(理・生命 D2)

特別講演

特別講演1:宇宙線イメージングとピラミッドと社会実装に向けた取り組み
森島邦博(名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻 特任助教)

高い物質透過力を持った素粒子ミューオンを観測することで、大きく厚みのある物体をレントゲン撮影のように可視化することができる「宇宙線イメージング」の研究のご紹介と、この技術を用いた、エジプトのクフ王のピラミッドの内部構造を透視する研究プロジェクトについてご講演いただきました。また、今後の展望として、宇宙線イメージングの社会実装に向けた構想についてもお話しいただきました。
基礎研究から生まれた技術が異分野の研究に大きなインパクトを与え、さらに社会実装に向けて動き出している具体的な事例に触れられる貴重なご講演でした。

特別講演2:
研究で幸せ
自分を知り、流れをつかむ
公益資本主義を知り、時代をつかむ
丹治 幹雄(一般財団法人アライアンス・フォーラム財団 理事)
服部 亮 (ロート製薬株式会社 再生医療事業部 部長、名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 客員教授)

はじめに服部様から、「学生時代に取り組んだことは様々な形でその後のキャリアにつながる」ことを、ご自身のキャリアの振り返りとともにお話しいただきました。
続いて丹治様から、「公益資本主義」の考え方についてご紹介をいただきました。
公益資本主義は、利益の追求だけでなく、社会への貢献なども含む、多様なステークホルダーを幸せにする付加価値の総和を目指す考え方です。
ご講演を通じ、「今はまさに時代の転換点であり、若い皆さんにとっては大きなチャンス」「自分は何のために研究しているのか、自分自身の幸せとは何なのか、自分を見つめ人を見つめてほしい」といったメッセージをいただきました。

参加者の声

リトリート2020全体について:
  • 多くの先生方のシーズを聞くことができた。また、M2,D1の融合研究コンテストやD2の研究発表など、自分にとって刺激になった。(M1)
  • 特別講演の中で、研究者としての在り方について知ることができたのが良かった。(M2)
  • オンラインでの開催を少し心配していましたが、考えていたよりもはるかに活発に議論でき、また、オンラインのメリットも活かすことができたので、とても良かったと思います。(教員・連携研究所職員)
教員のシーズ紹介について:
  • 他分野で融合研究できそうなテーマが見つかった。(D2)
  • 短時間で著名な先生方の講演を聞くことができる贅沢な時間だった。(D2)
  • 研究室のできる技術だけでなく、解決したい課題も知りたかった(M1)
  • 学内に面白い研究がたくさんあり、今後も継続して実施することが重要だと感じた。(教員・連携研究所職員)
D2生による研究紹介について:
  • 数年後にこのくらい熱意を持った発表を自分もできたらいいなとモチベーションが上がった。(M1)
  • それぞれの院生の研究が進むとともに、異なる分野の参加者に伝わるように発表が工夫されており、GTRプログラムの趣旨に沿って成長していることが感じられた。(教員・連携研究所職員)
  • 皆さん他分野についても積極的にチャットで質問しており、興味のアンテナが広い事に非常に感心しました。(企業)
D2生との交流会について:
  • 企業の方が見に来てくれて繋がりが作れたので良かったです。今後、就活の場として発展していけば学生にとって良い機会になると思います。(D2)
  • 学生と直に話せる点が良かったものの、時間が短く、気になるすべての学生と話すことはできなかった。また、教員の方とも対話ができた点が非常に良かった。大学-企業双方の持つ課題感に、共通した点があると感じた。(企業)
  • 各ルームに行って、一人一人の学生と直接ざっくばらんに話ができたのはとてもよかった。これは、オンラインの方がやりやすいかもしれないと思いました。(教員・連携研究所職員)
異分野融合コンテストについて:
  • 異分野の知見を得ることができたとともに、発想力の訓練、また交流が広がった(M2)
  • 普段積極的に触れることのない分野(ロボティクス、インフォマティクス)を調べるきっかけとなったので、コンテストは自分にとって良い機会になったと思っています。
  • 出てきたアイデアは化学系の人の案を叩き台にして作られたものですが、これは同分野の中で考えていたら出てきにくいものだったのではないかなと思うので、そういった点では面白かったです。(M2)
  • 化学と生物からの5 人が集まったが、各々の知識が被る部分がほとんどなく、研究面での意思疎通はとても大変だった。普段なら興味を抱きにくい相手分野かもしれないが、何か融合研究を作らなければと思いながら聞くことで、頭に残った知識も多かったように思う。とても楽しい時間だった。チームとしても、納得のいく発表ができたので良かったと思う。(D1)
  • I think it was difficult to exchange and combine new ideas with others coming from different research areas and make a usable and feasible plan But from this activity, we practiced this ability and know the importance of both interdisciplinary and teamwork in the research,(M2)
  • それぞれに光るアイディアがあり、実現可能性もある研究提案が一晩で出て来たのには感心しました。 (教員・連携研究所職員)
  • 粗削りではあるものの、SDGsを意識した突飛なアイデアは面白かったです。全く関係ない分野を融合して新しい価値を見出す事は、企業研究においても必須であり、若いころからこのようなトレーニングをされている学生には興味が湧きます。(企業)
コンテストに関してM2,D1生から後輩へのメッセージ:
  • ゴールを決めきるまでが最も大変で、辛く思うところだと思います。でも、ゴールが決まり、そこまでの理屈を詰めていくフェーズになると楽しくて、最後、やって良かったなあと思ってしまうのがこのコンテストの特徴です。普段なら聞かないような相手の分野の話を、基礎的な質問をしながら聞ける機会でもあるので、楽しみながらたくさんの対話をしてもらいたいです。(D1)
  • 異分野の知識や発想を実感できるいい機会だと思います。議論を楽しみましょう。(M2)
  • やはり何かしら話すことが大事だと思います。冴えたアイデアを出すわけでなく「言っていることがわかりません」とかでもいいし、解決策がなくても「これが問題では」と提示するだけでもいいし、頓珍漢に思えることでも誰かの考えのヒントになるかもしれないのでとにかく言ってみると良いのではないでしょうか。あと、議論が停滞すると雰囲気が暗くなってくるので、中身がなくとも適度に賑やかすことも精神衛生上大事な気がします。(M2)
  • 自分とは全く違う物事の見方をしている人との議論は、自分では思いつかないようなアイデアが生まれたりして、とても刺激になると思います。自分の意見をしっかり発信しつつ、他人の意見を柔軟に取り入れる姿勢が大事だと思いました。(M2)