名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

2020年度GTR成果報告会を開催しました。

日時:2021年1月8日(金)
場所:オンライン(講演会:Zoom、ポスター発表:LincBiz、懇親会:oVice)

成果報告会は、年に1度、GTRに関わる全ての関係者が集まり、研究の進捗を確認するとともに、人と人とのつながりを構築し、新しい融合の可能性を見つけるための場です。 今年度はオンラインで開催され、GTRの履修生、参画教員、参画企業、学内外の関係者など、約400名が参加しました。

はじめに、プログラム責任者の藤巻先生から、「新型コロナウイルス感染症の影響でGTRプログラムの活動も様々な面で制約を受けているが、こういった時にこそ社会課題が浮き彫りになるものであり、そこに自分たちの技術がどんな風に結びついていくのかを考える良いチャンスでもある。今日の成果報告会から、何か新しい気付きを生んでほしい」という開会のご挨拶を頂きました。

プログラムコーディネーターの山口先生からのイントロダクションでは、「コロナ禍の中、変化に翻弄され、それに適応した一年だったが、大事なのはこの状況をいかにポジティブに活かすか。今日この場に参加していることの意味を一人一人が認識・共有し、参加者全員にとって有意義な機会にしてほしい」というメッセージがありました。

プログラム

9:30 - 9:45 開会挨拶:
藤巻朗(GTRプログラム責任者)
山口茂弘(GTRプログラムコーディネーター)
9:45 - 10:30 GTR Research Award 受賞学生による講演
10:30 - 10:45 学生による活動報告:GTR院生企画
11:00 - 12:00 GTR生によるポスター発表 (奇数番号のポスター)
13:30 - 14:30 GTR生によるポスター発表 (偶数番号のポスター)
14:45 - 15:55 参画教員による研究紹介
16:30 - 17:00 GTR アドバイザリーボード講演:
Prof. Dr. Ueli Grossniklaus(University of Zurich)
17:00 - 17:30 授賞式・閉会挨拶

GTR Research Award 受賞学生による講演

GTRでは、学生の融合研究の成果や異分野に挑戦する姿勢などを評価し、GTR Research Awardとして顕彰しています。2020年度のGTR Research Awardは以下の3名に贈られ、受賞者が自身の研究について講演を行いました。

竹本悠人(創薬科学研究科 基盤創薬学専攻・D1)
「幹細胞品質予測のためのロバストモデル構築法の開発」
辛洸徹(理学研究科 生命理学専攻・D1)
「気孔開口シグナル伝達に作用する新規化合物の分子機構の解析」
鵜飼修作(工学研究科 有機・高分子化学専攻・D2)
「反芳香族ノルコロールの超分子集合体形成」

学生による活動報告:「GTR院生企画」

GTRには、履修生が企画を提案し審査に通ることで、企画の実施に対してプログラムから支援を受けられる「GTR院生企画」という制度があります。今年度開催された院生企画のうち、「ベイズ統計学集中講義」「学生シリーズ講義」「Acade-Mix」の企画者から、企画の実施報告がありました。

企画内容だけでなく、企画した動機や工夫した点、やってみてよかった点や参加者の声などについても具体的に紹介がありました。


「ベイズ統計学集中講義」
報告者:大橋拓朗(理学研究科生命理学専攻・D2)

「学生シリーズ講義」
報告者:川瀬雅貴(生命農学研究科・D1)

「Acade-Mix」
報告者:川口航平(生命農学研究科・D2)

*「GTR院生企画」については、こちらのページにも詳しい報告やインタビュー記事を掲載しています。

GTR生によるポスター発表

ポスター発表は、M2~D2のGTR生にとっては、融合研究の成果や進捗を報告してフィードバックを受けることで自身の研究の状況を見直すとともに、融合研究のさらなる発展につながるきっかっけを掴むための機会です。
まだ融合研究を開始していないM1の学生にとっては、融合研究のプロポーザル提案(QE1)に向けて、融合研究のテーマや相手を探す機会でもあります。

今年度のポスター発表は、オンラインコミュニケーションツールの「Linc Biz」を使用して行われました。各ポスターのチャンネルでは、ビデオ通話とチャットを活用して活発な議論が行われていました。

ポスターアワード受賞者:M1
P-417 田中良來(理学研究科物質理学専攻)
P-421 西山尚来(生命農学研究科)
P-406 沖田ひかり(工学研究科)
P-419 前田明里(理学研究科生命理学専攻)
P-420 西川真利恵(生命農学研究科)
P-428 西村優利(創薬科学研究科)
ポスターアワード受賞者:M2
P-324 栗本道隆(創薬科学研究科)
P-310 成田皓樹(理学研究科物質理学専攻)
P-317 若林拓(理学研究科物質理学専攻)
P-318 松井彩(理学研究科生命理学専攻)
ポスターアワード受賞者:D1
P-206 中城世宣(工学研究科)
P-202 劉思雨(工学研究科)
P-220 長江麻佑子(生命農学研究科)
ポスターアワード受賞者:D2
P-104 鵜飼修作(工学研究科)
P-111 伊藤正人(理学研究科物質理学専攻)
P-103 瀧口あさひ(工学研究科)
P-132 吉田稜(生命農学研究科)

参画教員による研究紹介

7名の参画教員から、最新の研究テーマ・研究シーズの紹介がありました。Zoomのチャットには、参加者からたくさんの質問が寄せられていました。

  • 上口美弥子 (生物機能開発利用研究センター・教授)
    「植物ホルモン、ジベレリンの受容・代謝・輸送-その構造的理解への試み」
  • 西山朋子 (理学研究科 生命理学専攻・准教授)
    「染色体構築の一分子レベルからの理解」
  • 土屋雄一朗 (トランスフォーマティブ生命分子研究所・特任准教授)
    「寄生植物ストライガの撲滅を目指した化学と生物の融合研究」
  • 田中健太郎 (理学研究科 物質理学専攻(化学系)・教授)
    「流動相に作る分子空間」
  • 倉持光(自然科学研究機構 分子科学研究所・准教授)
    「極短パルスで観る凝縮相分子の反応ダイナミクス」
  • 澁谷正俊 (創薬科学研究科 基盤創薬学専攻・講師)「保護基に頼らない非天然 α-アミノ酸の簡便合成法」
  • 浅沼浩之 (工学研究科 生命分子工学専攻・教授)
    「(人工)核酸に不可能はない!」

GTRアドバイザリーボード講演

Prof. Dr. Ueli Grossniklaus(University of Zurich)から、「Interdisciplinary PhD Education as a Gateway to Professional Life」と題し、ヨーロッパの大学院の教育制度や博士号取得者のキャリアパスについてご講演いただきました。
博士号取得者が、自身の専門分野にとらわれず社会の幅広い場で活躍し、多様なキャリアパスを歩んでいることを、実際のデータなども交えて具体的にご紹介いただきました。海外の教育システムについて知るとともに、博士号取得者の社会における活躍の場やキャリア形成について視野の広がる貴重なお話をして頂きました。

懇親会

成果報告会の終了後、オンライン空間を作成できるコミュニケーションツール「oVice」を使った懇親会が行われました。
融合研究や院生企画といったGTRの活動はどれも「人と人とのつながり」が基盤になっています。コロナ禍でなかなか開催することができなかった念願の懇親会には約90名が参加し、所属や学年をこえて交流を深めました。

参加者の声

成果報告会全体について:
  • 他分野の興味深い話を気軽に聞くことができて、非常に良かった。(学生)
  • 自身の研究の進捗の目安になると同時にフィードバックできる点が多かったです。(学生)
  • コロナの影響がなくなってきたらまた、対面でGTR生同士の飲み会等できればいいなとより実感しました。(学生)
  • 単純なシーズの発掘だけでなく、普段研究されている学生さんの活動も見られるのは興味深かったです。(企業)
  • コロナ禍の中でもGTRがレベルの高い活動をされていることがよく理解できた。(企業)
  • 各種発表内容を通じ、テーマは勿論、各学生さんの人となりを見る事が出来ました。(企業)
  • 学生さん同士で企画・運用を行って自主的に活動されているとのことで、研究における基礎力の構築ならびに分野の垣根を超えやすくするきっかけを与える点において、非常によい流れが起こっているように感じました。(連携研究所教員)
GTR Research Award 受賞講演について:
  • 融合研究の面白さを知るだけでなく、説明の仕方やスライドの作り方も勉強になった。(学生)
  • 自分も頑張ろうと思った。(学生)
  • 研究内容はもちろん、プレゼンの仕方、研究の進め方など、博士らしい力が伝わりました。また、融合研究の意義を学生本人が実感できているのが何より素晴らしい。(学内教員)
  • GTR生の能力の高さが理解できた。異分野の人間にも分かりやすい発表で、さすが受賞するだけの学生だと思った。(学内教員)
  • 各プレゼン共にコンセプトやストーリー構築がしっかりなされており、また論理構築も素晴らしかったと思います。(企業)
学生の活動報告について:
  • 運営側が実際どのようなコンセプトで、どのように行動しているのか知らなかったため、知る機会があるのは良かった。(学生)
  • 良かった部分だけでなく、反省点も発表している企画もあり、参考になる部分は多かった。(学生)
  • 実際にベイズ統計を受講していました。インタビューにもあがっていたのですが、運営側の意見を聞くことによって自分も運営に関わってみたい院生企画を通じてGTRを盛り上げていきたい、といった気持ちになりました。(学生)
  • 自分たちが必要だと思う物、機会、場を作っていくのだ!そしてそれを継続していくのだという姿勢。まさに育成したい博士の姿だと思います。こういう人材たちは、どういう場でも将来、活躍してくれることでしょう。そしてそれを見て、後輩たちやGTR所属外の学生たちが刺激され、自分たちもぜひそういう人材になろう、そういう行動を起こそうという好循環につながると思います。(学内教員)
  • 学生が企画し、様々な予期しないトラブルに対応し、成し遂げるという一連の過程は研究だけでなく、社会人になって最も必要になってくるスキルだと感じます。企画・マネジメント力育成を学生のうちから経験できることは大変貴重な経験で、社会人になっても大いに役立つと思います。(企業)
  • 足りないものは自分たちで企画して実行するという姿に頼もしさを感じました。(企業)
  • 活動報告を行った学生さんの姿から、自身の能力をいかんなく発揮する場を自ら作り上げ周囲へ波及させるなかで、向学心や探求心を一層育て上げていっているさまを目の当たりにしました。(連携研究所教員)
ポスターセッションについて:
  • コロナウイルスの影響で、研究室内の人以外との接点が薄れている中、学部や大学の垣根を超えて様々な分野の方と交流できたのは良かった。(学生)
  • 稚拙ながらに用意していった内容を勉強になったとおっしゃってくださった方がいて、GTR進学前に自分がやりたかった活動が行えたように思いました。自分に足りない部分も多かったと思うので、もっと自分の分野の知識を深めたいと思いました。(学生)
  • LINC Bizによる初めてのポスター発表だったが、大きなトラブルなく発表でき、発表者・質問者共にビデオをONにすることで対面に近い感じで様々な議論ができた点が良かった。予定していた発表を全て聞くことは時間的に厳しかったが、チャットで気軽に質問できる点もよいと思った。(学生)
  • 自宅のネット環境が悪く、やり辛さを感じたが、なんとか最後までディスカッションできたので良かったと思う。(学生)
  • それぞれのポスターで質疑が大変もりあがった。時間が足りなくなったところが多く残念であったが、集中して行えてよかったと思う。(学内教員)
教員の研究紹介について:
  • 異分野の学生に対してもわかりやすく発表していただき、異分野の研究室で行われている研究を概観できた。(学生)
  • 短時間でパッと研究の面白いところを聞けて贅沢だと思った。(学生)
  • GTR成果報告会にて聴講させて頂くたびに感じることではありますが、分野の異なる研究者が1つの同じテーブルに集うことで、これまでにない発想や分野外での転用可能な技術の抽出が容易になるばかりか、互いの分野で持ち合わせない手法を相互に委託する形でそれぞれ分業、あるいは習得しながら研究を進める共同研究が、大学内でありながら起こりやすい環境となっているところに、科学の明るい未来の一端を観測しているように思いました。(連携研究所教員)
アドバイザリーボード講演について:
  • 普段聞くことのできない話なので、非常に刺激になりました。(学生)
  • 博士教育にはさらなる可能性があると気づかされました。(学内教員)
  • 博士取得者の価値向上に向けて、講演内容を弊社内の上層部に聞かせたい、と思いました。(企業)
  • 海外の大学のシステムを基に、生の声としてアドバイスを聞くことができる機会は滅多にないものであるとの認識から、特に博士課程進学や博士取得後のこれからを考える学生さん達にとっての参考になるとともに、よい刺激となったのではないかと思いました。(連携研究所教員)