名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

GTRリトリート2021を実施しました。

10月15日(金)、今年で3回目となるGTRリトリートを開催しました。
GTRリトリートは、GTRに参加する学生が同世代のネットワークを築く場であるとともに、異なる分野を引き合わせるマッチングの場であり、プロポーザルの作成・提案力を磨く場であり、参加者同士の融合に向けたアクションを促す場でもあります。
全参加者の集うイベントは今年度もオンラインでの開催となりましたが、学内外から200名以上が参加し、活発な交流が行われました。

GTRリトリート2021 プログラム

M2・D1のGTR生による「異分野融合コンテスト」のグループワークは10月7日(木)、8日(金)に対面とオンラインで行い、全関係者の集うリトリートは10月15日(金)にオンラインで開催しました。

9:00 - 9:10 開会挨拶:山口茂弘(GTRプログラムコーディネーター)
9:10 - 11:20 教員による研究シーズ紹介
11:20 - 13:00 D1・D2生による研究紹介/交流会
13:00 - 14:00 昼食・研究紹介投票
14:00 - 15:00 特別講演:髙橋 政代(株式会社ビジョンケア 代表取締役社長)
「網膜再生医療開発物語」
15:00 - 16:50 異分野融合コンテスト発表会
17:10 - 17:30 表彰式・閉会挨拶
18:30 - 懇親会

※午前の部は参加者全員に守秘義務を課した秘密会議扱い

教員によるシーズ紹介

GTRの参画研究科から、10名の教員が研究シーズの紹介を行いました。
今年度は、融合に向けたアクションを促すための新たな試みとして、質疑にSlackを活用。発表後も、Slack上で質疑や意見交換が続いていました。
また、もう一つの新たな試みとして、各発表者に対し、異分野の若手教員が1名ずつ座長役を務めました。学生だけでなく教員にとっても、GTRは、研究科や専攻、世代を超えたつながりを構築し、異分野融合の文化を学内に広げる場になっています。

発表者と研究シーズは当日プログラム(PDF)をご覧ください。

参加者の声
  • 理学系や農学系の話を聞く機会があまりないため、視野を広げるきっかけになりました。(D1)
  • 基礎から応用まで様々な話があり、刺激的で聞いていてもダレることがなかった。(D2)
  • 興味深い内容が多く、勉強になりました。「slack」で質問ができたのでありがたいです。(企業)

D1・D2生による研究紹介

D1・D2のGTR生から9名が研究紹介を行いました。 発表後には、Zoomのブレイクアウトルームを使って、発表を行った学生と参加者が直接交流する時間も設けられ、各ブレイクアウトルームでは、企業担当者が学生に質問する様子や、異分野の教員が学生にアドバイスする様子などが見られました。

教員・企業の参加者による投票により、以下の3名にBest Presentation Awardが贈られました。

参加者の声
  • 研究発表後のディスカッションで様々な意見をいただき、自身の研究の展望がより広がった。(D1)
  • 自分と同期の発表を聞くことで、刺激を受けることができた。(D1)
  • 専門の融合を考慮すると、自己の専門から離れたメンバーに理解しやすいプレゼンが求められる。発表されたメンバー全員の積極性を感じ、これから独自性をしっかり身につけていける印象を持ちました。(企業)
大本 敬之(生命農学研究科 応用生命科学専攻 D2)
「α2,6-シアル酸転移酵素遺伝子のノックアウトメダカの樹立と表現型の解析」
栗本 道隆(創薬科学研究科 基盤創薬学専攻 D1)
「生体内合成化学を用いた新規がん治療法の開発」
米村 開(理学研究科物質理学専攻・化学系 D2)
「シトクロムP450BM3の酵素活性を改変するペプチド性小分子の開発」
東 秀憲(工学研究科 生命分子工学専攻 D1)
「DNAを利用した高効率光捕集の構築」
伊藤 正樹(工学研究科 有機・高分子化学専攻 D2)
「ラセミ体からなるポリ(ビアリールイルアセチレン)誘導体のラセン構造の誘起と記憶、不斉有機触媒への応用」
成田 皓樹(理学研究科物質理学専攻・化学系 D1)
「ホウ素ドープ多環芳香族炭化水素の構造物性相関と自己集合特性」
劉 思雨(工学研究科 有機・高分子化学専攻 D2)
「Encapsulation of Antiaromatic Norcorrole Ni(Ⅱ) Complexes in a Water-Soluble Micellar Capsule」
片桐 佳(工学研究科 有機・高分子化学専攻 D1)
「キラル鉄(Ⅲ)塩を開始剤に用いる高エナンチオ選択的ラジカルカチオン[2+2]環化反応の開発」
坂井 美佳(理学研究科物質理学専攻・化学系 D2)
「元素の特性と励起状態の理解に基づく機能性発光材料の創製」

特別講演:「網膜再生医療開発物語」
髙橋 政代(株式会社ビジョンケア 代表取締役社長)

髙橋先生はこれまで、臨床医、基礎研究者、経営者という異なる立場で、しかし一貫して、「網膜外層疾患の治療法をつくり、患者さんに届けること」を目指して活動してこられました。
ご講演では、髙橋先生ご自身の歩みと、網膜再生医療の臨床研究の進展とを重ね合わせながら、実現したい未来に向かう姿勢や研究に対する考え方などをお話しいただきました。
「20年後の未来を見据えて取り組む」、「実現したい未来の障壁となっている現在の常識やルールを超えるには、超えるためのルートを複数持つという発想が大切」、「できない理由を挙げる"批評家"ではなく、可能性を見つけて動く"プレーヤー"になってほしい」など、たくさんのメッセージが詰まったご講演でした。

参加者の声
  • アカデミアと企業の両方を経験されており、その時々でどういう理由で選択をされたかを聞けた点が参考になった。特に、すぐにはできなくても将来的にできるように色々なアプローチを行っていく姿勢とその考え方が印象に残った。このような広い視野を持てるように意識したいと思った。(D1)
  • 最先端の医療の話を聞けて未来を感じました。何よりも高橋先生の二十年後を見すえた研究をというメッセージがとても刺さりました。今後も二十年後のことを気にして新しい研究を開拓していきたいと思います。(D3)
  • 明確な達成目標をもち、目標に向かい柔軟な対応力で研究を進める大切さを感じました。相当な努力があったと思いますが、本当に楽しそうにこれまでの研究を振り返っていらっしゃり、研究とは本来こうあるべきなのだろうと気づかされました。(企業)

異分野融合コンテスト発表会

異分野融合コンテストは、異なるバックグラウンドの学生がチームを組み、短期間で融合研究を立案し、コンテストとして学内外の研究者へ発表する過程を通じて、融合研究を行う上で必要な、発想力、研究立案力、コミュニケーション力、プレゼン力などを向上させることを目的としています。
融合研究を考える練習の場であるとともに、異なる分野の学生同士がネットワークを築く機会でもあります。
グループワークは10月7日と8日に対面とオンラインで行い、全関係者の集うリトリートで、各チームが提案内容をプレゼンテーションしました。


グループワークの様子

有志のD2・D3生によるヒアリングとアドバイス
各チームの発表テーマ
  • Aチーム「ゲノムスケール合成DNAを用いた人工生物の創造」
  • Bチーム「Development of Molecular Machine by Combining Quantum Dots (QDs) and Nucleic Acid to Trace and Cure ALS 」
  • Cチーム「メタン変換生物工場~乳牛と地球を元気に」
  • Dチーム「核酸を用いるうつ病治療法に向けた次世代創薬アプローチ」
  • Eチーム「マイクロプラスチックをエネルギー源とする次世代微生物燃料電池」
  • Fチーム「人工イオンチャネルを用いて発電細胞を再現する」
  • Gチーム「人工核酸医薬を指向した計算化学に基づく人工酵素モデリング」
  • Hチーム「崩れたら畑になる家」
  • Iチーム「 Humanomics ~行動・感情を生物学的に解釈するデータベース~」
  • Jチーム「ミノムシシルクはクモ糸よりも強い!? 光架橋法を用いた生分解性プラスチックの開発」
コンテストの結果
参加者の声
  • いつもの研究とは全く違う領域で研究計画をたてるというのが楽しかった。また、自分とは異なる領域を専門とする人達と真剣に話すことができ、大変勉強になった。(M2)
  • コロナ禍で学内外に関わらず研究室外との交流が限られていた中で、対面形式で他の学生と意見を出し合い、協力して事を成すのは非常に有意義な時間でした。(M2)
  • グループワークは、オンラインだと一人しか発言できないが、対面だったので個人同士でも話しやすかった。個人的な研究の話も聞くことができ、異分野についての知識を得ることができた。先輩からのフィードバックは聞き手側の貴重な意見を得ることにつながり、発表をより良いものにすることができた。(D1)
  • 毎回これを楽しみに聞いています。今回も若い人たちの熱いアイデアが詰まった発表を聞かせていただき、本当に刺激的でした。(教員)
  • 短期間でこれだけのアイディアを出しプランを作り上げられるのは本当にすごいです。それぞれ自分の専門分野にきちんと軸足を置いたうえで異分野融合を考えているので、掲げているのは大きな目標ですが決して夢物語ではなかったです。アカデミックな研究を続けるのも大切ですが、今回のような応用研究の道に進む学生が出て、より良い社会を作っていってほしいなと思います。(企業)