名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

院生企画インタビュー「ベイズ統計学集中講義」

GTRには、履修生が企画を提案し審査に通ることで、企画の実施に対してプログラムから支援を受けられる「GTR院生企画」という制度があります。
今回は、ベイズ統計学を学ぶ集中講義が院生企画として企画されました。

企画者による詳しい活動報告レポートはこちら(PDF)をご覧ください。

「ベイズ統計学」は、従来の統計手法の課題をカバーする選択肢の一つとして注目が高まりつつある統計の手法です。今回の院生企画は、学生がベイズ統計学を自分の研究を行う上での選択肢に加えられるようになり、自由な仮説設定と適切な検定ができるようになることを目的として企画されました。

ベイズ統計学の教科書として定評のある『データ解析のための統計モデリング入門』の著者・久保拓弥先?(北海道?学地球環境科学研究院)に講師を依頼し、初心者向けに講義をしていただきました。

全3回の講義には毎回100名以上が参加。これまでに開催されたGTR院生企画の中で最多の参加者があり、GTR生以外にも多様な参加者が講義を受講しました。

開催日程
日時:2020年 9月4日、11日、18日、10月9日
場所:オンライン(Zoom)
  • Rチュートリアル 9月4日 *希望者のみ
  • 第1回講義 9月11日 13:00-14:30
  • 第2回講義 9月18日 13:00-14:30
  • 第3回講義 10月9日 13:00-14:30

企画メンバーが中心となって、講義をサポートする様々な取り組みも行われました。
例えば、統計の初心者向けに、統計分析ソフトRのインストールと基礎的な使い方をレクチャーするチュートリルを事前に実施したり、Slackで「助け合いチャンネル」を開設したり、学生同士で学びをサポートし合う試みを実施。
また、講義をただ聴くだけでなく、実際にRを使った演習ができるよう、企画メンバーがRのスクリプトを書き起こして講義参加者に配布するなど、講義での学びがより充実するよう工夫しました。

講義の様子
チュートリアルの様子
講義以外の取り組みに対する評価(「GTR院生企画 ベイズ統計学集中講義 活動報告」より)
ベイズ統計学を取り?れようと思った人の割合(同「活動報告」より)

院生企画インタビュー

以下では、企画者のみなさんに、今回の企画の意義や効率的な運営のポイントなどについて、院生企画を振り返ってお話を伺いました。

企画者
  • 大橋拓朗(理学研究科生命理学専攻 博士後期課程2年)
  • 北川悠梨(名古屋大学・西オーストラリア大学国際連携生命農学専攻 博士後期課程2年)
  • 木下悟(理学研究科生命理学専攻 博士後期課程2年)
  • 杉山亜矢斗(創薬科学研究科基盤創薬学専攻 博士前期課程2年)
  • 長江拓也(理学研究科生命理学専攻 博士後期課程2年)
Key topics
自分の研究に必要な知識を得るための場を院生企画を使って実現する
短期間での効率的な企画運営
企画メンバー以外の協力・サポート
リーダーシップとフォロワーシップ

知りたいことを自分たちの手で講義として実現する

今回の企画は、大橋さんが自身の研究で統計学を学ぶ必要性が生じ、近年注目が高まりつつあるベイズ統計学を学びたいと思ったことがきっかけだったそうです。他の企画メンバーもベイズ統計は全員が初心者でした。
「自分の研究に有用と思われる知識を最短経路で手に入れるには?」その手段がGTRの院生企画の制度を活用することだったそうです。

  • 今回の企画をやってみてよかったことは?

大橋:今回の企画の意義は、自分たちで先生を呼んで、自分のために知らないことを知るための講義を開くことができる、ということを実現できた点だと思います。

木下:参加したい人を募集した時たくさんの人が応募してくれて、みんな統計に困ってるんだな、新しい手法に飢えてるんだなっていうのを実感しました。今後GTRでまた何か企画をやるとしたら、今回のような新しい知識やスキルを得られるものをやるのも楽しそうだなと思います。

長江:院生企画って、誰かのためにっていうより、自分のためにやるのが多分一番良くて、それでいいんだって思えたのは良かったです。自分たちが「やりたい」って思ったことを素直にやっていけば、結果として人が集まるんだなって。

北川:私自身は、そもそも院生企画に参加すること自体が初めてで、誘ってもらって企画メンバーとして参加しました。聞きたい授業を自分で企画して聞くことができる、「自分が求めていることを自分で実現できる」っていうことを知れたのがすごく良かったです。
あまり院生の知り合いがいなかったので、こうやってモチベーション高くいろんなことに挑戦して、いろんなことを企画したりして盛り上げていこうとしてる人がいるんだって分かったことも自分としては収穫で、刺激にもなりました。

杉山:今回の院生企画では、講義の参加者全員に、統計ソフトのRをインストールしてもらって使えるようにしました。
僕の研究室では、普段から解析をすごく使うチームと、あまり使わないチームがあるんですけど、普段統計をあまり使わないチームの人たちにも今回の講義に参加しなって言ってRを入れてもらったんですね。それによって今、研究室全体でRを使って図を出したり解析をしたりっていうことが進んでいきまして。講義をきっかけに自分の研究室に変化が起きて、嬉しかったです。

一同:研究室に波及効果!すごい。

企画メンバーのチームワークの良さの秘訣

今回の企画メンバーの主なコミュニケーション手段はオンラインでした。SlackやLINEを使ってコミュニケーションを取りつつ、必要に応じてZoomで週に1回程度ミーティングを行っていました。
メリハリのある、効率的な運営の様子がうかがえるメンバーに、チームワークの秘訣を聞きました。

  • チームで活動するにあたって心がけていたことは?

大橋:だらだら話をしないように話し合うことを事前に決めてミーティングに臨んだり、決めるべきことは期日を設けるようにしていました。メリハリをつけてやることができたんじゃないかなと思います。
リアルの会議だったら一人一人直接意見を聞いて、みんなに合意を取れるけど、Slackのようなオンラインだと見過ごしてしまって意見を出したり意思決定に参加したりするタイミングを逃してしまうこともよくあると思うんです。期日を設けておくことで、たまたま忙しくて見逃した人も、決まったことに納得してもらえるかなというのもありました。

木下:大橋くんがかなりリーダーシップを発揮してくれたので、そのリーダーシップにちゃんと応えられるように、意見を出す・口を動かすことで貢献できるように心がけました。

大橋:(木下)悟くんは、これまでにもいろんな院生企画をやっていたので、安心感がありました。この講義を単位にできないかという話になった時に先生方や他学部に聞いてくれたり、申請書や周知用のポスターを添削してくれたり、他にもいろいろやってくれました。
僕は、とりあえずこれさえやれば開催できるっていう最低限の枠組みをつくっただけなんですけど、でもそうしたら、みんなが自発的にこうした方がいいって色々意見を出して肉付けしていってくれて。良い企画にするためにみんながすごく貢献してくれました。

木下:長江くんも、これまでにいろんなイベントをやってきた経験があるから、長江くんから出る意見はイベントを何個もこなしてきた人の意見としてすごく貴重だった。

長江:今回の企画に関しては、自分は乗っかっただけ。最初から計画がちゃんと立てられていて、この流れでやっていけば絶対できるって思って参加してたから、すごくやりやすかった。

北川:大橋くんのリーダーシップは本当にすごくて、すごく助かったのと、メンバーみんなが、必要な時に意見をどんどん言う人が多かったので、すごく進めやすくてスムーズにやれたと思います。
自分としては、講義の参加者であまりレベルが高くない人たちの目線に立つことを意識して、その人たちの立場に立って意見を出すように心がけました。

木下:確かに、北川さんは僕らが忘れがちな視点を思い出させてくれたよね。Slackの「助け合いチャンネル」もすごい率先して、回してくれてすごかった。

大橋:北川さんはチュートリアルの時も、途中でうまく行かなくて困ってる人に自分から声をかけていって、一番参加者のことが見えてました。

長江:(杉山)亜矢斗くんのチュートリアルもすごかったね。

木下:用意周到だった。

大橋:事前に、R初心者の参加者向けにインストール手順などのチュートリアルを企画したんですけど、この時は亜矢斗くんが一番リーダーシップを取ってやってくれました。
起こるトラブルを全部見越していて、解決策も全部知ってて、参加者の質問やトラブルをすごいスピードでさばいていって、最終的に参加者全員の躓きを時間内に全部解決できました。亜矢斗くん以外の他の3人もすごく臨機応変に対応してて、すごいなと思いました。

杉山:チュートリアルの回では、他の企画メンバーの皆さんもそれぞれにフォローしてくれて、すごくやりやすかったです。

木下:企画メンバーの中で、亜矢斗くんだけ学年が違ったけど、それはプレッシャーではなかった?

杉山:確かに。僕は結構グループが出来上がってから企画メンバーに入って、気付いたらみんなドクターの人たちばかりで(笑)何ができるかなって思いながら、仕事を探してました。なので、チュートリアルの回では役割を果たせたようでよかったです。

大橋:亜矢斗くんも、もともとリーダーシップを取るのが得意で、これまでにサークルを立ち上げたりしてて。今回のメンバーは、そういう、もともとリーダーシップが取れる人たちが集まっていたと思います。

  • みんながリーダーシップを取れるメンバーだけど、うまく役割分担されたバランスの良いチームという印象です。

大橋:リーダーシップの経験があるからこそ、だと思います。みんなリーダーシップを取ったことがあるだけに、何をしたらリーダーがリーダーシップを取りやすいかをわかってたんじゃないかな。だからみんな、「自分がリーダーだったらこうするだろうからこれが必要だな」と思って動いて、すごく連携が良かったんだと思います。
僕も次また院生企画に関わる時は、良いフォロワーシップを見せようと思います。

長江:普段言えないからここで言いたいんだけど、今回の院生企画だけじゃなくてGTR全体に対してなんだけど、悟くんはすごいいろんなことに毎回コメントしてくれてる気がして。すごい気をまわしてくれてるところが、ずっとめっちゃいいと思ってて。

大橋:悟くんはレスポンスがすごく早くて、例えば僕が企画書つくってSlackに投げたら、30分後くらいにもう悟くんからレスポンスがあったり。

長江:その応答の速さはほんとすごい。

大橋:あと、今回の院生企画では、企画メンバー以外にもすごく助けてくれた人たちがいて。Rに詳しい他のGTR生がすごく助けてくれましたし、集中講義を単位にもしてもらったんですけど、それも先生たちにすごく協力してもらいました。ベイズ統計の教科書をGTRとして購入して貸し出したんですけど、それは僕たちのアイデアではなくて、GTR支援室の方がやりましょうかって言ってくれたのが始まりでした。

木下:そういう周りからのサポートがすごくあったね。

大橋:いろんな人が手を差し伸べてくれてできたかなと思います。報告書に書いた5つの取り組みのほとんどは僕以外からのアイデアです。

木下:最初に大橋くんの企画の骨があったから上手くいったと思う。

長江:短期間で間延びせずに企画の運営ができたのは良かったかもね。

大橋:最初に、これだけやったら企画として成立するっていうすごいシンプルなプロットを描いておいてスタートしたのが良かったんだと思う。それは、僕自身ができるだけ早く久保先生の話を聞きたい、っていうのが当初の目標で、そこから逆算して、やるべきことが何で、いつまでにそれをやるかを決めていったからだったけど、その結果、みんながそこにいろんな肉付けをしていってくれて。多分、最初にシンプルな枠をつくっておいたことが、手伝いやすさにもつながったのかな。
今回、これだけコンパクトに企画を運営できたことで、今後、融合研究を進める上で何か新しい知識が欲しいっていう時に、それを得るための新たな手段として院生企画を活用できるよっていうのを示せたんじゃないかなと思います。
自分の知りたい知識を得るための講義を院生企画を使ってやるっていうのが、今後も増えていったらいいなと思います。

2020.10.30オンラインにて取材