名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

院生企画インタビュー「集まれ!面白研究者!」

企画の目的-院生企画を増やすための院生企画

「GTR院生企画」は、企画書とヒアリングによる審査に通ることで、GTRから支援を受けて企画を実施できる制度。これまでに、外部の研究者を招聘したセミナーや、学生が講師役となって研究を紹介する異分野交流のイベントなどが企画されています。(過去の院生企画はこちら)知識やネットワークを得る機会を学生自身がつくりだせる制度であるとともに、異分野の仲間と一緒に一つの企画を作るプロセスを通じて、研究以外の経験を積める機会でもあります。

今回の「集まれ!面白研究者!」は、院生企画の制度の活用を促進し、GTRの活動をさらに盛り上げようという目的で企画されました。企画運営のノウハウをGTR内で共有し、今後企画を実施する学生の実務的な負担を軽減するとともに、やってみたいけれど一歩踏み出せない学生の背中を押すことが、本院生企画の狙いです。

本院生企画では、外部の研究者を招聘したセミナーを計2回開催。第1回は、企画の発起メンバーが、テーマ設定や招聘する研究者との交渉、広報などの運営を一通り経験。外部の研究者を招聘したセミナーの企画運営のノウハウやスキームを汎用的な形でまとめることを目指しました。
第2回は、企画者に2人のGTR生が新たに加わり、第1回の開催で培った運営ノウハウを活用しながらセミナーを企画。新メンバー2人がオーガナイザー役となり、発起メンバーは経験を活かしてサポート役に回りました。

本院生企画でまとめられた資料は、GTR生であれば誰でも活用できる形で共有される予定です。

活動サマリー

セミナー開催概要

第1回セミナー:タンパク質立体構造予測ツール「Alphafold2」が作る未来
  • 日時:2021年11月12日(金)13:00
  • 場所:対面(ITbMレクチャールーム)&オンライン(ZOOM)
  • 講演者:東京大学農学生命科学研究科 森脇 由隆 助教
  • オーガナイザー:前田明里 (理学研究科 生命理学専攻)

企画者による報告書はこちら

第2回セミナー:化学の目で見る生体触媒 ~化学反応を制御する生物素材~
  • 日時:2022年4月27日(水) 13:00-14:45
  • 場所:オンライン(ZOOM)
  • 講演者:永野 真吾 教授(鳥取大学院工学研究科) 、松本 謙一郎 教授(北海道大学院工学研究科・総合科学院)
  • オーガナイザー:米村開 (理学研究科 物質理学専攻(化学系))、古謝良人 (生命農学研究科 応用生命科学専攻)

企画者による報告書はこちら

企画者

長江拓也 (理学研究科 生命理学専攻)
川瀬雅貴 (生命農学研究科 動物科学専攻)
米村開 (理学研究科 物質理学専攻(化学系))
古謝良人 (生命農学研究科 応用生命科学専攻)
沖田ひかり(工学研究科 生命分子工学専攻)
前田明里 (理学研究科 生命理学専攻)
松永優希 (理学研究科 物質理学専攻(化学系))
*所属は企画実施時のもの

院生企画インタビュー

今回の院生企画の企画者は、多様な学科の学生で構成されています。異なる分野の学生で企画を運営することにこだわって、メンバー集めを行ったとのこと。そんな企画者へのインタビューを通じて、分野の異なるメンバーで一つの企画を作る経験から得られるものや生まれる気付きを感じ取っていただければ幸いです。

Key topics
それぞれのきっかけ
異分野のメンバーと企画することで得られるもの
「越境」する人を増やすには?人を巻き込むために大事だと思うこと

それぞれのきっかけ

Q.この院生企画に関わろうと思ったきっかけを教えて下さい。

川瀬:この院生企画は、「いろんな学科の人を集めて面白いことをやりたい」という長江くんの声からスタートしています。僕も面白そうだなと思って、長江くんの誘いに乗りました。

沖田:私は、別の院生企画でもお世話になっている川瀬さんと長江さんに誘っていただいたことがきっかけです。

前田:私は同じ研究室の木下さん経由で長江さんから誘っていただいたのですが、ちょうど融合研究が始まる時期だったこともあって、参加には逃げ腰でした。返事を先延ばしにしていたら、とうとう長江さんが研究室までやってきて(笑)。「違う学科の人たちを集めて面白いことがやりたい」という長江さんの熱意に押されて企画メンバーに入った形です。

川瀬:1回目のAlphafold2をテーマにしたセミナーの企画は、前田さんが中心になって進めてくれました。忙しい中でもすごくしっかりした仕事をしてくれていました。

前田:企画の話し合いの中で、自分が当時気になっていたAlphafold2を話題にしたら、「それいいね」となって、あれよあれよという間にこのテーマで進めることになって...。企画メンバーに入る時はかなり腰が引けた状態だったのに、いつの間にかオーガナイザーの立ち位置でセミナーの企画を進めることになっていました。(笑)

川瀬:2回目のセミナーは、外部の先生を招聘したセミナーの企画をやってみたい学生を新たに募りました。手を挙げてくれたのが古謝くんで、分野が化学寄りだったので、もう一人、化学系のメンバーに加わってもらおうということで、米村くんに声をかけました。

古謝:2021年の3月に長江さんがオーガナイズされた相分離生物学のセミナーに参加して、「学生主体でこんなにすごい企画ができるんだ」と思ったことが、院生企画に関心を持ったきっかけです。研究活動以外の経験をしてみたいとも思っていたので、企画の経験が豊富な他のメンバーにサポートしてもらいながらやれるのはありがたいなと思って、手を挙げました。

異分野のメンバーと企画することで得られるもの

Q.この院生企画に携わってみて良かったと思うことは、どんなことがありますか。

前田:先生との交渉や当日の司会など、実際にやってみると初めてのことばかりで緊張したり分からなかったりすることも多かったですが、院生企画の経験が豊富な他のメンバーに助けていただいて乗り切れました。場数を踏むことで成長できると思うので、度胸がついたというか、やってみて良かったなと思いました。

古謝:他の企画者の皆さんは企画の経験が豊富なので、全体の流れを把握されていて、細かな点もしっかりサポートしてくれて、僕は自分の役割に集中すればよかったので、とても助かりました。どんな観点でどういった先生をお呼びするか、実際にどんな風に交渉するかなど、普段できない経験ができてとても良かったと感じています。

Q.講演者の先生はどんな風に決めていったのですか?

米村:まずは自分が面白いと思う、話を聞いてみたいと思う先生をリストアップして、みんなに意見をもらうという形ですり合わせをしていきました。このすり合わせの過程、「みんなが同じ方向を向く」までの過程が、個人的には難しかったなと感じています。そこをクリアして、みんなの向かう先が揃った後は、スムーズに進めることができました。

川瀬:米村くんが作ってくれたリストは、研究内容に加えてその研究のどこが面白いのかがまとめられていて、とても分かりやすい資料でした。僕自身は、米村くんと古謝くんが作ってくれた研究者のリストを通じて、「この研究のこういう所が面白いんだな」というのを新しく知りながら、二人が出してくれた候補に賛同していった形です。

沖田:私は化学と生物の両方にまたがる研究をしていますが、お二人が提案して下さった研究者のリストを見て、化学・生物それぞれの分野の広さを改めて実感しました。「こんなに面白い研究があったんだ」というのを新たに知るきっかけをいただいたと思います。

米村:はじめは自分が面白いと思う先生をリストアップしていたわけですが、みんなで議論をしていく中で、「その先生を呼ぶことでどういった効果を生みたいのか」「他の人も楽しむためにはどうしたらよいか」「他の人にも興味を持ってもらうにはどうしたらよいか」という、他の人の考えや視点に触れられたことはとても刺激になりました。

前田:もともとこの企画は、いろんな学科の人たちで企画を運営しようという所がコンセプトのひとつでした。色々な分野の人が集まることで、知識やものの見方が増えるので、多様な人を巻き込むこと、人と人とのつながりをつくっていくことが大事かなと思いました。

「越境」する人を増やすには?人を巻き込むために大事だと思うこと

Q.院生企画の企画者のみなさんは、自分の研究室の外で多様な人と一緒に活動する面白さや意義を実感している方々です。この「面白さ」に他の人を巻き込んでいくには、あるいは、一歩踏み出すことをエンカレッジするには、どんなことが大事だと思いますか?

川瀬:これまでに色々な院生企画をやってきて感じるのは、自分からは手を挙げない人でも、「一緒にやろう」と声をかけに行くと結構みんな乗ってくれるということです。直接声をかけに行って人を巻き込むこと―「人と人」という所が大事だと思います。知らない人に声をかけられても乗りづらいと思うので、自分自身と企画の存在を知っておいてもらうことも大事だと思っています。

米村:声をかけてくれる人の存在は貴重だと思います。僕も今回、川瀬くんに声をかけてもらって参加しましたが、「魅力的な人だな、すごい人だな」と思っている人に誘ってもらえたら嬉しいし断れないので。

古謝:一歩踏み出すことをエンカレッジするという意味では、「やったことがなくても、忙しくても、やってみると思ったよりハードルは低いよ」と伝えたいです。

沖田:最初は「面倒だな」と思っていた人でも、実際に企画に関わってみると「みんなで色々話して新しい企画を考えるって楽しい、思ったほどハードル高くない」という声を聞きます。ドクター生活は意外と孤独で、そんな中、院生企画を通して、研究にもそれ以外の活動にもモチベーションの高い学生とつながれることは、自分にとってもすごく刺激になると思います。

前田:私は他大学から名大の大学院に進学してきたので、最初知り合いはゼロだったけれど、研究は楽しいし、研究が上手くいけばそれでよいと思っていました。でも院生企画に誘っていただいて、同学年や上級生の方々とのつながりができて良かったと思っています。異分野の知り合いができたことで、その人がどんな研究をしているのか知りたくて、それまでは少しハードルがあった異分野のポスター発表を見に行くようにもなりました。人のつながりが、異分野に関心を広げるきっかけにもなったと思います。

米村:自由な学生の立場にいるからこそ、研究以外の力をつけられるチャンスだと思います。自分が成長するために、今いる環境の良さをどう上手く使うか、その重要性を理解できるような機会があると、興味を持ってもらいやすいかもしれないなと思いました。研究者は、研究だけしていれば良いわけでも、研究だけできれば良いわけでもないですし、研究以外の力をつけることの重要性をもっと理解してもらえるような機会があると良いのかもしれません。

古謝:研究も企画も「新しいものを生み出していく活動」という点では同じです。企画を通して学べることは、研究活動や、今後の自分のスキルとしてきっと活かせると思います。

前田:人を巻き込むのが上手い人は、その人自身が楽しそうにしている人だと思います。長江さんや川瀬さんのように、「自分はこれを本当に面白いと思っているんだ」という熱意を他の人に伝えられるように、自分自身もなりたいなと思いました。院生企画でも融合研究でも、人を巻き込む上で大事なのは、自分が楽しそうにしている、ワクワクしてることかなと思います。

(2022年6月オンラインにてインタビュー)