名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

院生企画インタビュー「サイエンスデザイン アドバンスコース」

研究を動画で分かりやすく伝えるスキルを身につける

2023年2月22日(水) と3月8日(水)に、院生企画「サイエンスデザイン アドバンスコース」が開催されました。この院生企画は、研究内容を分かりやすく伝える3D動画制作を学ぶ講座です。

GTRには、「GTR次世代講義」という独自の授業あり、その一つとして「サイエンスデザイン」の講義が開講されています。次世代講義では3DCGの静止画制作の基本を学びますが、今回の院生企画ではその発展編として、3DCGの動画の制作方法を学びました。
講師は、次世代講義「サイエンスデザイン」も担当する髙橋一誠講師(名古屋大学ITbM・特任講師)。1日目はデザインソフトウェアの基本的な使い方を学び、2日目は各自が制作した作品の発表を行いました。

*企画者による詳しい活動報告はこちらからご覧いただけます。

イベント概要
  • 日時:2月22日(水) 13:00-16:30、3月8日(水)13:00-14:30
  • 場所:ITbMレクチャールーム
  • ポスター

院生企画インタビュー

Key topics
研究者にとって、自分の研究を分かりやすく伝えるスキルは重要
動画にすることで、研究がより伝わる
「分からない世界」が「分かる世界」に
次はもっとうまくやれる
院生企画を通じた「学び」

研究者にとって、自分の研究を分かりやすく伝えるスキルは重要

Q.今回の院生企画を企画したきっかけや経緯を教えてください。

田中:GTRで院生企画を考える会があって、その時に八神くんが発案してくれた企画です。

八神: GTRの次世代講義にサイエンスデザインの講座あるのですが、そこで作成するのは静止画なので、それを動画として動かせたらいいなと思ったのがきっかけです。
自分の研究内容を動画で説明できたら研究発表などでも役立ちますし、動画の作成を外部に発注する場合にも、作り方の知識があるとスムーズだと思いました。

田中:次世代講義では、使ったことのないソフトウェアの使い方を知れて、自分の思い描いていたものを作れるようになって、実用的かつ面白かったので、動画も作れるようになったらさらにいいなと思って、今回の企画に参加しました。

稲葉:僕は、院生企画を考える会では八神くんたちとは別のグループだったのですが、サイエンスデザインの講義を発展させて動画を作るという企画内容を聞いて、「自分もやりたい」と思って運営メンバーに入りました。

野溝:もともとグラフィックや3Dモデリングに興味があって、自分でも手を出してみたのですが挫折した経験があって。先生から教えてもらえて、みんなでやる形なら最後までできるんじゃないかと思ってこの企画に参加しました。
講義を受けて、自分の「使える道具」が一つ増えたと思います。やりたいことやアイデアを思いついた時に、それをすぐに形にできる方法を身につけられたのは良かったと思います。

動画にすることで、研究がより伝わる

Q.講義ではどんな作品をつくったのですか?

稲葉:僕の研究では、タンパク質を分子として扱って、レゴブロックのように組み立てて大きい構造体をつくります。今回の講義では、自分の実験データを踏まえて、タンパク質がくっつく様子を動画にしました。自分の研究の特徴を理解してもらう上で、「どんな風に、何ができるのか」という部分を可視化することは重要だと思っていたので、今回、動画を作れてよかったです。新年度に、新しく研究室に配属されたB4に各自が研究を紹介するキックオフミーティングがあったのですが、そこで一人だけ動画を使ってドヤ顔でプレゼンできました(笑)

田中:僕は、蛍光イメージングで細胞を見るための蛍光分子を開発しています。イメージングで可視化したい場所に応じて、分子をどうデザインするかという「分子の戦略」を説明するには、動画が分かりやすいです。今回は、細胞の中に入った蛍光プローブがどんな風に細胞の中を動いて、どんな風に分子の構造が変形して、見たい場所を可視化するのかという過程を動画にしました。

八神:僕は、植物ホルモンのシグナルを「ハッキング」するという研究をしています。今回の講義では、植物ホルモンがタンパク質の受容体にはまる様子を動画で作りました。植物ホルモンとその受容体それぞれをちょっとずつ改変して、新しい特異的なペアを作る研究をしていのるですが、お互いが「はまる」ように形をどう変えて、どういう風にはまるか、みたいなイメージは動画で説明する方が理解してもらいやすいと思います。

野溝:私は、このメンバーの中では一番生物寄りの研究をしています。組織や細胞を相手にした実験が多くて、他の方のように分子構造などを使って説明するような研究内容ではないので、3Dモデルで植物を描いて、組織形成の過程を解説する動画を作りました。結果から言えば動画にしなくても説明できる内容だったかもしれませんが、自分の研究を紹介する時、イントロダクションにあたる部分が動画としてあると、言葉で説明するよりイメージしてもらいやすいと思います。

「分からない世界」が「分かる世界」に

Q.今回の企画をやってみて良かったことを教えてください。

田中:今まで、「こんなんどうやって作るんや?」と思って見ていた3Dの動画が、ちょっとだけ分かるようになったことが、企画をやってみて良かったことの一つ目です。
もう一つは、今回、運営では企画全体を動かす立場でした。これまでに関わった院生企画では、先輩がそういった役目をしてくれて、メンバーのみんなに仕事を振るなど、自分が全体を動かすというのはあまり経験がありませんでした。今回で、自分の経験値が一つ増えたかなと思います。

稲葉:今回の企画メンバーの中では田中くんと僕が一番上の学年だったこともあって、2人で分担しながら重めの仕事をやりました。一方で後輩の3人にもちゃんと仕事は回して、全体として負担が偏らないよううまく分担しながら運営できたと思います。

八神:先輩方が先頭に立っていろんなことをやってくださったので、企画の進め方を学べたのは、企画者として参加して良かったことです。まだGTRに入ったばっかりだったのですが、院生企画に参加したおかげで、同期や先輩たちと早い段階からつながりができたのもよかったです。
あとは、これまで3D動画って「わからない世界」だったのですが、この講座のおかげで、わからない世界じゃなくなったっていうのも、すごく大きかったと思います。

野溝:学んでみたいなと思ったことに対して、自分たちで企画を立ち上げて学べる場をつくるというのがすごく楽しいなと思いました。単に先生の話を聞くだけの学び方ではなくて、学ぶ場自体を主体的につくるっていう学び方を経験できてよかったなと思いました。
動画を作る講義を受けたことで、普段目にするCMなどの動画も、見え方が変わりました。知らなかったことを知ることで、ものの見方が変わって、そこも面白いなと思いました。

稲葉:僕は、研究者の人が今の専門に至った経緯や興味のきっかけなど、その人の背景的な話を聞くのが好きなんですが、講義を一緒に企画する過程で、自分とは全く専門が違う、サイエンスデザインがご専門の髙橋先生のこれまでの経歴やバックグラウンドに触れられて、いい刺激になりました。自分が知らない分野の最先端の話題も聞くことができて、面白かったです。

次はもっとうまくやれる

Q.企画を運営する上で難しかったことや、やってみた気付きとしてどんなことがありましたか?

田中:1日目はレクチャーで、2週間後に各自が作ったものを持ち寄って発表する構成だったのですが、1回目の参加者が20人弱だったのに対して、2回目の参加者が10名くらいまで減ってしまったことがショッキングでした。
次世代講義で静止画のグラフィックの作り方は習っていましたが、3Dの動画になったとたん、やることが一気に増える所が難しかったと思います。内容の多さと難しさに対して、講義の時間が短くて、ちょっとハイペースすぎたかもしれません。

野溝:ほとんどの人が初めて使うソフトだったので、講義の流れに途中でついていけなくなってしまった人がいたかもしれないです。その辺りのサポートを、もうちょっとうまくやれると良かったかもしれません。

田中:2Dだったら、モデリングして色をつけて、並べておしまいなんですけど、3Dの動画になると、並べた一つひとつのパーツをどう動かして、それに対してカメラの視点はどう動かすと分かりやすいのかというところまで考えなきゃいけなくて、やることと考えることが一気に増えます。そこが難しかったポイントかなと思います。

稲葉:講義では、3Dグラフィックを作成するAutodeskの「Maya」と、動画を作成するAdobeの「Premiere Pro」を使いました。フリーソフトだけでどうにか作ろうかという案もあったのですが、髙橋先生と相談して、せっかくならとプロユースのソフトウェアを使うことにしました。費用をGTRに支援していただいて、参加者全員がソフトを使えるようにしました。高機能なツールを使うことにチャレンジしたことで大変な部分は色々ありましたが、本格的なツールに触れた経験自体は、今後の役に立つと思います。
あと、動画を書き出すにはある程度のパソコンのスペックが必要だったので、研究室のパソコンの性能によっては、途中で止まってしまって断念せざるを得なかった人もいたかもしれません。

八神:僕が作った動画は1分くらいでしたが、3-4日に分けて書き出しました。僕は企画側で参加していましたし、もともとグラフィック作成に興味があったので、動画の作成も書き出しも、時間がかかってもやれましたが、モチベーションが高くて好きじゃないと、途中で挫折してしまう要素は色々あったかもしれません。

稲葉:講義時間に関しては、今回2コマでやろうとしましたが、3コマにすればおそらく回ると思います。今回の講義でGTR生向けの題材はできたので、次回はフォローなど別の準備に時間をあてられると思いますし、今回の講義を受けて教えられる人員も増えたと思います。1日目と2日目で参加者が減ってしまった要因は色々あったと思いますが、それぞれ今回の経験を踏まえて改善すれば、次はもっとうまくできると思います。

院生企画を通じた「学び」

Q.全体を振り返って、最後に一言ずつお願いします。

八神:今回やってみて、「分からないことを分かるようにする」というのがとてもいいなと思ったので、このコンセプトで、また何か企画ができたらと思います。次に何かやる時は、今回の運営の経験や先輩方のやり方を参考にして、よりうまく進めていけたらと思います。

野溝:今回、うまくいった部分もあれば、自分の力が及ばなかったと思う所、もっとこうしたらよかったと思う所がいろいろありました。次に何か企画する時には、今回の経験を生かしてもっといい運営ができると思います。
また今年度も、何かやろうと思ってます。

田中:至らない点もありましたが、自分としてはいいものができたかなと思っています。運営側でも結構頑張れたかなと思っていて、自分の経験という意味でも満足のいく内容でした。
院生企画は、単に先生を呼んで何か新しいことを勉強するだけじゃなくて、企画者として新しい知識以外にどういうものを得られるか、どんな風に成長できるかという所が大事だと思うので、そのことを後輩たちへのメッセージとして伝えたいです。

稲葉:今回、同じ時期に2つの院生企画の運営に関わっていました。それぞれを振り返ってみて、学んだこともいろいろあったなと思いましたし、「意外と自分、2つも企画を回せたんだな」という達成感もあって、やって良かったなというのが正直な気持ちです。
企画した講義を通して学んだこと、企画すること自体から学んだこと、それぞれ今後に生かしていきたいです。

(2023年4月オンラインにてインタビュー)

企画者
  • 田中良來(理学研究科(化学) 博士後期課程1年)
  • 稲葉大晃(理学研究科(化学) 博士後期課程1年)
  • 八神祐一郎(理学研究科(生命) 博士前期課程1年)
  • 野溝はるな(理学研究科(生命)博士前期課程1年)
  • 中野慧悟(創薬科学研究科博士前期課程1年)
*所属・学年は、開催当時のもの。
*中野さんは、インタビュー時は欠席。