名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

院生企画インタビュー「研究を伝える」

研究を分かりやすく魅力的に伝えるスキルを身につける

2024年7月5日(金)、GTR生による院生企画「研究を伝える」が開催されました。
GTRの活動で異分野の学生や教員と交流したり、融合研究先を見つけたりする際、研究を分かりやすく魅力的に伝えるスキルは重要です。また、学会発表やアウトリーチ活動、申請書や就職活動など、様々な場面で研究を伝える機会があります。
この院生企画は、研究を分かりやすく魅力的に伝えるスキルを高めることを目的として企画されました。
本イベントでは、科学を分かりやすく伝えるプロであるサイエンスコミュニケーターから伝え方のポイントを学び、様々なシチュエーションを想定したグループワークを通して、研究を伝える実践を行いました。

*企画者による詳しい活動報告はこちらからご覧いただけます。

企画概要
  • 日時:2024年7月5日(金)13:00-16:00
  • 場所:理学部C館2階化学科第3講義室
  • 講師:綾塚達郎(名古屋大学高等研究院、元日本科学未来館所属サイエンスコミュニケーター)、佐伯恵太(asym-line代表、元日本学術振興会特別研究員)
  • ポスター

院生企画インタビュー

Key topics
様々な機会で重要な伝えるスキル
「伝える相手」を意識することがポイント
「伝える」ことで広がる可能性

様々な機会で重要な伝えるスキル

Q.どんなイベントを企画されたのか教えてください。

大津:今回の院生企画では、サイエンスコミュニケーターと呼ばれる、科学を伝える専門家の方をお招きして、伝えるときに意識するポイントや心構えをお聞きした後に、グループワークで、実際に自分たちの研究を伝える実践をしました。
院生企画のテーマとして、他にも色々出ていたのですが、どれをやるにしても「伝える」ということは大事だから、まずは伝える練習をしようということで、このテーマになりました。

廣岡:異分野の人に、研究内容を短くかつ興味深く話さないといけない機会はすごく増えていると感じます。プロに教えてもらえるのは、よい機会だと思いました。

伊藤:私は有機化学を研究しているのですが、学会などに行くと、同じ有機化学の分野でも細部ではやっていることが違っていて、伝えることの難しさを感じることがあります。今回学んだ伝える技術は、そういった研究活動の場や、それ以外の、例えば高校生などに大学の魅力を伝えるアウトリーチ活動などでも活かせると思いました。

黒田:私はサイエンスコミュニケーターという職業があること自体、今回の企画に携わって初めて知ったのですが、自分の研究が基礎研究なので、研究を伝える難しさは以前から感じていました。サイエンスコミュニケーターの方からアドバイスをいただきながら、「伝える」ことにフォーカスして実践的に取り組むことができて、よい機会だったと思います。 お呼びした先生方は、サイエンスコミュニケーターというお仕事をされているだけあって、とてもコミュニケーションが上手な方で、企画に対しても積極的にアドバイスを下さり、スムーズに進めることができました。

「伝える相手」を意識することがポイント

Q.企画を通してどんな学びがありましたか?

井上:自分は学会と重なってイベント当日は参加できなかったのですが、グループワークの形式を検討するために運営メンバーでノーベル賞の研究を説明してみるということをやりました。ノーベル賞の研究のような有名なものでも、やってみると結構難しくて、色々と気付きがあって面白かったです。

廣岡:今回のイベントで、話す対象を考えることがすごく大事だということが分かりました。例えば、一般の人なのか研究者なのかによって、喋り出しを変える。私はショウジョウバエを使って癌の研究をしているのですが、ショウジョウバエは研究者からすると一般的なモデル生物なので、ここから入っても興味を引けません。ショウジョウバエから入るのか癌から入るのか、冒頭に持ってくるものを変えるだけでかなり印象が違うと教えていただいて、なるほどと思いました。

黒田:先生方の講演もためになりましたが、グループワークが楽しくて、やっぱり実践してみて難しさが分かりました。

Q.どんなグループワークだったのですか?

木下:色々なシチュエーションで伝える練習をするグループワークだったのですが、例えば面白かったのは、美容室で髪を切ってもらっている時に美容師さんと雑談するというシチュエーションです。運よく、自分は実践役としてチャレンジできたので、良い経験になりました。

黒田:グループの中で研究について話す人を一人決めて、その人の研究をどう伝えるかをみんなで話し合いました。本人以外のメンバーが異分野の研究を理解した上で、もっと分からない人に説明するにはどうしたらいいかを考えないといけなかったので、そこが難しかったです。ただ、異分野の人間だからこそ疑問に思う点や分かりにくいだろうと思うポイントを指摘することができたので、難しかったけれど楽しかったです。

木下:サイエンスコミュニケーションという言葉にあるように対話でもあるので、聞き手である相手がどの程度の理解を持っている人なのか、その上で、相手にどのように伝えれば理解してもらえるかを常に考えながらしゃべることが大事だと学びました。

黒田:どこに面白さを感じてもらえるか、どこをオチに持っていくかを考えて、これだけは覚えて帰ってほしいというポイントを決めて、そこに向かって話の筋道をつくっていくのが大切だと感じました。単に概要を話しただけでは面白くないし、結局何が言いたいのか分かりません。
私のグループでは、植物の根っこが伸びるプロセスを研究されている方が「話し役」でした。私としては、「これだけ色々研究が進んでいるのに、そもそも根っこが伸びるプロセスってまだ解明されていないんだ」ということが驚きでした。そこで、「よく知られている植物の根っこが伸びるという現象にも、実は解明されていない謎がある」という所から話に入ることにしました。

Q.企画や運営の面で、よかったと思う点や得られたことを教えてください。

井上:このメンバーで一緒に企画ができたことが一番よかったことだと感じていることです。みんなそれぞれに研究などがある中で、上手く時間をつくって一つのプロジェクトを運営するという経験ができたのもよかったです。

廣岡:今回私は、後輩のサポートという形で企画メンバーに入りました。企画の構成を考えたりプロポーザルを準備したり、後輩たちが企画をつくっていく過程を見守る立場で関わってみて、自分もすごく学びがありました。

黒田:普段は自分の研究室の中だけの生活になってしまっていて、外とのつながりがなかなかありませんでしたが、企画のメンバーで集まったとき、研究の話をすることもあれば雑談をすることもあって、異分野からの気づきをもらったり、大変さを共有したりして、とてもよい経験になりました。

木下:院生企画を通じて、同期や先輩と関わることができたのが一番嬉しかったことです。
またこのメンバーで院生企画をやりたいなと思っていて、それがすごく楽しみです。その時には、今回の運営での経験を生かしたいです。

大津:今回、綾塚先生以外の名古屋大学で活躍されているサイエンスコミュニケーターの方々も、この企画を知って参加していただけました。博士人材の社会的な知名度ってまだまだ低いと思うので、僕たち自身が伝える力をつけて広報をしていくのが大事だと思っています。そのためにも、学内でサイエンスコミュニケーションの人的なネットワークが作れたことは大きな収穫だったと考えています。

「伝える」ことで広がる可能性

Q.今後に生かしたいことなど、最後に一言ずつお願いします。

廣岡:今後、学会はもちろんですが、おそらく就活や今後のキャリアの中でも伝える機会はたくさんあると思うので、今回学んだことを生かしていきたいなと思います。

大津:今回学んだことやサイエンスコミュニケーション関連のネットワークを生かして、大学院生が中心になって、博士人材の存在や能力をPRしていくような企画もできたらなと思います。

黒田: GTRの交流の場や学会などでも、相手の興味を引き出すような伝え方を実践できたらと思います。

木下:グループワークでは、他の人の意見ももらって実際に自分の研究を伝える実践をして、さらにそれに対してフィードバックをもらうという、貴重な経験ができました。
今回学んだ「伝える」ことは、コミュニケーションなので、自分のことを伝えるだけでなく、相手の研究から自分の研究に生かせる所がないかという風に、相手の研究との接点や「取り込めるもの」も探していきたいと思いました。

井上:私は工学部で生物系の研究をしている少数派で、周りに違う分野の方が多い環境なので、今回学んだことを生かしていきたいと思いました。あと、個人的な話になりますが、実家がすごく田舎で、家族は大学の研究のこととかよく分からないので、家族に自分の研究を伝えられたらと思いました。

伊藤:所属する研究室で、他の人とは少し違ったテーマの研究をスタートさせようとしています。まずは、自分の研究室内で自分の新しいテーマを面白いと思ってもらえるように伝えられるよう頑張りたいです。
あと、綾塚先生のご講演で、「異分野の人の話ってハテナがいっぱいあるかもしれないけれど、そのハテナを糸口に理解につなげていくことが大事」ということをおっしゃっていて、木下くんが言っていたように、異分野の研究に対する「ハテナ」をきっかけに、異分野を自分の中に取り込んで、「こんなこともできるんじゃないか」と発想を広げていきたいと思いました。

(2024年7月オンラインにてインタビュー)

企画者
  • 大津 岳士(工学研究科 博士前期課程2年)
  • 黒田 琉奈(理学研究科(化学) 博士前期課程2年)
  • 井上 翔理(工学研究科 博士前期課程2年)
  • 木下 裕史(理学研究科(化学) 博士前期課程2年)
  • 廣岡 依里(理学研究科(生命) 博士後期課程1年)
  • 伊藤 正子(理学研究科(化学) 博士後期課程1年)
*所属・学年は、開催当時のもの。