名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

活動報告

院生企画インタビュー「多学部ラボツアー」

GTRには、履修生が企画を提案し審査に通ることで、企画の実施に対してプログラムから支援を受けられる「GTR院生企画」という制度があります。
今回の「多学部ラボツアー」は、オンラインでの研究室見学の企画でした。

企画者による詳しい活動報告レポートはこちら(PDF)をご覧ください。

ツアーは全部で3回実施され、各回に異なるテーマが設定されていました。
例えば第1回のツアーでは、「1から学ぶ創薬科学」というテーマで3つの研究室を巡りました。最初に、薬の候補となる分子の探索や反応開発などを行う有機合成化学分野の伊丹研究室(理学研究科)からスタートし、細胞の画像解析を用いて創薬スクリーニングの技術開発を行う加藤研究室(創薬科学研究科)、生き物の概日リズムの研究に取り組み、動物を使った化合物のスクリーニング研究も行っている吉村研究室(生命農学研究科)の順に、研究室の様子や研究内容を紹介。同じ「創薬」というテーマでも、分野や研究室によってアプローチの仕方が異なり、普段の研究の風景も全く違うことがとてもよく分かりました。

ラボツアーの流れ(第2回「生命現象を様々なスケールで理解する」)
各ラボの上級生が研究室を紹介

オンラインでのツアーはZoomで実施され、実験室の様子などを事前に撮影・編集した研究室見学の動画を見たあと、研究室に所属する学生が研究紹介を行い、参加者からの質問に答えました。

研究室見学の動画では、本企画の運営を担当した学生が代表として、各研究室の学生の案内で実験室などを見学、撮影。「これは何に使う装置なのか」「この実験は何をやっている所なのか」などの解説を聞きながら、研究室内を見て回りました。
動画には、それぞれの研究室がある場所までキャンパス内を歩いて移動する映像なども組み込まれ、実際に研究室に見学に行く時の目線を再現する演出が施されていました。

研究室見学の動画では、研究室の学生の案内でラボ内を見て回る
目的の研究室まで実際にキャンパスを歩いて移動する動画のひとコマ

研究室見学の動画を見たあとに、研究室の上級生による研究紹介がありました。
実際の実験室の様子を見たあとに研究内容の説明を聞くことで、よりリアリティをもって内容を理解することができました。

研究紹介の様子
GTRの融合研究の紹介もありました

ツアーのテーマに沿った研究内容の紹介のほかに、発表者の学生自身がこの研究室を選んだ理由や、研究室の普段の雰囲気、1回の実験にかかる時間など、様々な情報が織り交ぜて紹介され、色々な視点から分野の違いや研究室ごとの特色を感じられるツアーでした。

分野によって実験室の様子も様々
多学部ラボツアー
日時:2020年12月14日、18日、21日 16:30~18:00
場所:Zoom(オンライン)

各回のテーマとツアー先:
  • 第1回「1から学ぶ創薬科学」:伊丹研究室(理)加藤研究室(創薬)吉村研究室(農)
  • 第2回「生命現象を様々なスケールで理解する」:浅沼研究室(工)堀研究室(工)束村研究室(農)
  • 第3回「こだわり分子と機能の追求」:大井研究室(工)松田研究室(工)山口研究室(理)

企画者:
  • 土田仁美(生命農学研究科動物科学専攻 博士後期課程1年)
  • 坂井美佳(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士後期課程1年)
  • 石田陸(工学研究科応用物質化学専攻 博士前期課程2年)
  • 笹原純(工学研究科生命分子工学専攻 博士前期課程2年)
  • 杉山亜矢斗(大学院創薬科学研究科基盤創薬学専攻 博士前期課程2年)
  • 前田文平(理学研究科物質理学専攻・化学系 博士前期課程2年)

院生企画インタビュー

今回の「多学部ラボツアー」の企画は、2020年6月に実施された院生企画「院生企画にZoom In !」でGTR Special Award 山口賞を受賞した「アウトリーチ」の企画がもとになっています。
院生企画「院生企画にZoom In !」では、GTR生が7つのグループに分かれ、テーマに沿った院生企画を考えるグループワークを行いました。今回の「多学部ラボツアー」はこの時の企画をもとに、その後、企画者がさらに検討を重ね、実際の実施に至ったイベントです。
以下では、6名の企画者のみなさんに、実際の企画が実施されるまでの運営の裏側をお話しいただきました。

Key topics
異分野の研究の現場を、実際に目で見ることで得られる気付き
課題もまた経験値
異分野に踏み出すハードルを下げるためのヒント

異分野の研究の現場を、実際に目で見ることで得られる気付き

  • 今回の企画をやってみてよかったことを教えて下さい。

坂井:企画がスタートした経緯は、"院生企画にZoom in!"で賞を取ったことがきっかけではあったのですが、「やらねば」というよりは、それをいいチャンスと思って、ポジティブな使命感で取り組めたのはよかったと思います。

土田:イベント自体はZoomで各研究室を見学する企画でしたが、私たち企画者は、企画の過程で実際に他のラボを見に行くことができたので、「こういう感じで実験してるんだ」というのを知ることができて、すごく楽しかったです。私は生物系なので、有機系の研究室に行くのは初めてで、使っている実験器具からして「これはなんだ」というものばかりで、すごく新鮮でした。
普通の研究発表などでは聞くことができないような話をたくさん聞けたので、企画を通して異分野への理解が深まって、勉強になりました。

坂井:これまでのGTRの活動で異分野の研究に触れる機会は色々ありましたが、やっぱりまだまだ知らないことは多くて、基本的な部分が分からないために、少しとっつきにくいと感じることもありました。今回の企画を通じて、他の分野の研究現場の様子を見ることができて、異分野の根本の部分を色々と知ることができたのはすごく有意義だったと思います。

笹原:本当は、実際に参加者が現地に行って研究室を見て回るツアーができたらよかったですが、コロナ禍で対面での実施は厳しいということで、どうやってオンラインで直接行ったような雰囲気を感じ取ってもらえるかを色々考えました。参加者が直接研究室を見て回ることができない状況の中でも、研究室の様子を撮影した動画を見てもらう形で、色々な研究室の様子を伝えられたのは、良かったかなと思います。

石田:他のメンバーは誰も動画の編集ができなくて、笹原くんが動画の編集を全部引き受けてくれて、すごく助かりました。

土田:全部の研究室に、撮影にも行ってくれました。

笹原:ビデオ撮影で実際に他の研究室に行ったので、研究室の雰囲気や、実験室の環境、撮影に協力してくれた研究室の方の生の声に直接触れられて、色々な観点から、他の分野の研究や他の研究室のことを知れたので、それはすごく良かったです。

杉山:イベントを通じて、自分の研究室ではすごく手間ひまをかけてやっていることを「この研究室だとこの機械を使ってすばやくやっているんだ」と思ったり、逆に、「この研究室では結構アナログでやっているけど、自分の研究室だともうちょっと楽な方法でやっているな」と思ったり、色々な違いに気付くことができました。
見つけられていないだけで、研究をもっとスムーズに進める方法が、実は周りにたくさんあるんだなと思いました。

前田:来年から関西学院大学に進学することになっていて、9月から兵庫に移りました。なので12月にイベントで名古屋大学のキャンパスの映像を見た時、懐かしいなと思いながら見ていました。
関西学院大学ではGTRのような仕組みはないので、名大にいる間に、こういった企画の運営に関わることができたのは、いい経験だったと思います。

課題もまた経験値

やってみて難しかったことや上手くいかなかったことなど、一つの企画をチームでつくり上げるにあたっての苦労や試行錯誤についても聞きました。

杉山:企画会議の司会の役目をさせていただいたことが、良い経験になりました。オンラインで物事を決めていくのは大変で、途中でやめたいと思った時もありましたが、坂井さんから「もうちょっと頑張ってみて」って励ましていただいて、最後まで続けてみて良かったです。

笹原:確かにオンラインで会議する難しさはありましたが、杉山くんや(石田)陸くんが中心になって議事録をつくって毎回みんなにシェアしてくれたり、オンラインで共有が難しい中でも、工夫することができていた部分もあったと思います。

土田:私は論文の締め切りと重なって会議に参加できなかった回もあったのですが、議事録で、みんなが話し合った内容を把握できるようにしてくれていたおかげで、本当に助かりました。
「学生シリーズ講義」では発表者でしたが、今回は運営側として関わってみて、一つのイベントを企画するにあたって、本当に細かく色々な準備が必要なことが分かって、企画の大変さを実感しました。他のみんなが「こういうこともいるんじゃない?」と、いろいろ意見を出してくれる様子に感心しながら、一緒にやらせてもらっていました。

杉山:やってみて難しかったこととしては、ターゲットを明確にして的確に宣伝する、という所が難しかったなと思いました。一応、僕たちの中ではM1とB4を主な対象に考えていたのですが、実際に自分のラボの学部4年生に聞いてみた所、自分たちが対象のイベントだという風に認識されていなくて。

坂井:アウトリーチを目的としたイベントという趣旨でスタートしたのですが、「誰を対象にして、何を伝えるか」という所を、意外と固めきれていなかったかなというのは思いました。

土田:各研究室の発表者からも、お願いをした際に、「どういうことを話したらいいのか」という質問が多くて、具体的に何を話してもらうかを、企画者と発表者の間で詰めていくのに、かなり時間がかかりました。

坂井:色々な分野をつなげた、ストーリー性のある研究室紹介という全体のコンセプトは当初から一貫していましたが、各研究室の発表者に話してもらう内容の所で、壁にぶつかった感じです。ターゲットとする学年や伝えたいことを明確にするのを、もうちょっと早い段階で深く突き詰めておいても良かったのかなと感じました。

  • ツアーの構成や紹介する研究室はどんな風に決めていったのですか?

石田:まずはどんなテーマのツアーにするのかを決めて、その上でGTR生がいる研究室の情報をみんなで集めて、各テーマでどの研究室にお願いするかを話し合いました。

笹原:この研究室に依頼したいという候補がいくつかあったのですが、当初お願いしようと思っていた研究室が駄目になってしまうというのが何回かあって、決まるまでに時間がかかってしまいました。

石田:お願いしたいと思った研究室につてがなくて、アポイントが取れなかったということもありました。発表してもらう研究室が決まるまでと、そのあと発表者と内容を詰めていく過程は、やってみてすごく大変だなと思った部分でした。

杉山:そんな中でも、発表者の方はすごく幅広く丁寧に対応して下さったと感じています。今回、発表者の方にフィードバックできるものがない中で、あそこまでの発表をしていただけたのは、すごくありがたかったなと感じています。

異分野に踏み出すハードルを下げるためのヒント

  • イベントをやってみて改めて感じたこと、今後やってみたいことなどを教えて下さい。

笹原:今回の企画を通じて、いろんな学部のGTR生と交流することができました。これからもGTRを通じて、学部をまたいだ交流が色々な形で開催されていったらいいなと思います。

前田:関西学院大学では、今回のような研究室間の合同の企画はあまりないので、関学でも、違う研究室の人がつながれるような企画ができたらいいなと思います。

杉山:この1年間、コロナの影響で、直接会って交流する機会はほぼ皆無でした。やっぱり直接会ってご飯を食べながら気軽に話をすることで広がる話もあると思うので、今後はそんな企画もできたら楽しいかなと思っています。

石田:他の研究室にランチタイム遊びに行ってみるとか、そういうことができたら面白いのかなって思いました。GTR全体で、もっと気軽にいろんな話ができればいいなと思います。

坂井:異分野の研究に対する最初の「とっかかり」として、やっぱりお互いに「話す」というのが大事だと、この企画を通して改めて思いました。せっかくGTRでその機会があるので、今回のような、他の分野を知る機会、話をする機会を、これからも積極的に拾っていきたいと思いました。

土田:今回のイベントで、実際に他の研究室に行って実験の様子を見てみることで、ポスター発表や論文などの文字情報だけではリアリティをもって想像することが難しい異分野の研究を、イメージしやすくなったと思います。そうなれば、異分野に対する興味もさらに深まると思います。
今回の企画は、コロナ禍でオンラインでしかできませんでしたが、今後はお互いの実際の研究室に、もっと気軽に行けるようになったらいいなと思います。

(2021.1.6 オンラインにてインタビュー)