院生企画インタビュー「学生シリーズ講義 2021」
「学生シリーズ講義」は、GTR生同士の学術交流の場として2020年度にスタートした院生企画です。講義テーマの企画から講師役まで、運営は全て学生が担っています。
2年目となる2021年度は、以下のテーマで全3回が開催されました。
学生シリーズ講義 2021 vol.1:データの読み方 魅せ方 みんなのミカタ
どのような分野でも、研究活動の中で様々な形で「データ」を扱います。2021年度の第1回の学生シリーズ講義では、実験データを「読み取る」ためのデータ分析の基本や、結果を適切に伝えるためのFigureやグラフィカルアブストラクトなどの「魅せ方」について、分野の異なる学生講師が、それぞれの経験に基づいて講演しました。
学生同士で研究のナレッジを共有したり、「こんな時はどうする?」といった素朴な質問ができたりするのも、学生シリーズ講義ならではです。
場所:理学C館 化学第3講義室、Zoom meeting
学生講師:
- 岡大椰(生命農学研究科)
「時代は二刀流?RとPythonを用いた麹菌ゲノムと転写因子の解析」 - 瀧口あさひ(工学研究科)
「視覚的に研究を伝える方法 〜センスに頼らず知識で描く〜」 - 田中健二郎(創薬科学研究科)
「生命科学で活用される多変量解析」
学生シリーズ講義 2021 vol.2:シグナルはどこから来たのか?応答は何か?生物はどうなるのか?
第2回のテーマは、「生き物たちを取り巻く様々な環境シグナルとそれに対する多様な生物応答」。企画メンバー"イチオシ"のGTR生3名が学生講師として登壇し、自身の研究を紹介しました。
学生講師による講義の前には、生物系の研究の背景知識を"予習"するイントロダクションも設けられ、講義を聞く際の理解の助けになりました。
場所:ITbM1階レクチャールーム(オンサイト)、Zoom meeting(オンライン)
学生講師:
- 手島裕文(創薬科学研究科)
「皮膚とHIF」 - Qiqnqian Luo(生命農学研究科)
「How Intertissue Communicate in Plant Grafting? Insights into Hormonal signaling in Rootstock-Scion Interactions」 - 前田明里(理学研究科)
「植物が時間を知る仕組み」
学生シリーズ講義 2021 vol.3:学生よ! 化学の視点を手に入れろ! 〜生物学を支える化学の知識〜
第3回は、学生シリーズ講義では初めての化学系のテーマ。
「生物学を支える化学の知識」と題し、GTR生の中でも化学と生命科学との融合領域の研究に携わる3名の学生講師が研究内容を紹介。異分野の学生にとっても、自身の研究と化学系の研究との関わりを考えるヒントが詰まった講義でした。
会場:ITbM 1F レクチャールーム & Zoom
学生講師:
- 米村開(理学研究科)
「全領域対応型の化学―生物無機化学―」 - 大橋咲南 (理学研究科)
「より良いmRNA医薬品の開発に向けて」 - 田中良來 (理学研究科)
「分子の光で生命を見る」
院生企画インタビュー
学生シリーズ講義は、化学系・生物系どちらの分野の学生にも興味を持ってもらえるよう、講義のテーマ設定やプレゼンテーションの構成、広報など、企画者と学生講師が意見を出し合い、様々な工夫を重ねています。企画メンバーへのインタビューを通して、運営の裏側の一部をお届けします。
※インタビューは、2021年の第2回と第3回の間の期間に、オンラインで行いました。
学生同士の交流の場をつくる、企画メンバー
院生企画に関わることで得られる気付きや刺激
色々な分野の人を巻き込む難しさ
Next step
学生同士の交流の場をつくる、企画メンバー
2年目を迎えた「学生シリーズ講義」は、新しい運営メンバーが加わって新たな体制になりました。はじめに、それぞれが企画者として関わろうと思ったきっかけや理由を聞きました。
川瀬:僕はこの企画に1年目から関わっていますが、今の他の運営メンバーは途中から入ってきてくれた人たちです。
吉田:僕はGTR生ではなく、そもそもGTR自体を知らなかったのですが、今年の第1回のイベントに参加してアンケートに答えたらいつの間にか運営の中枢に巻き込まれていた、という感じです。でも色々できて楽しいし、良い機会ができたので、すごく感謝しています。
任:私は専攻が生物系なので、学生シリーズ講義を通して化学系や他の分野の知識を得られるのは勉強になると思って、参加しました。
田中:せっかくGTRに入ったから、何か企画をやってみたいなと思っていたので、これまでイベントの参加者として参加していた学生シリーズ講義の企画者に入れてもらいました。
沖田:私は大学院から名古屋大学に進学したので知り合いが少なく、研究室の外のつながりが欲しいなと思っていました。院生企画に主体的に関わっている方々は、モチベーション高く頑張っている優秀な方々ばかりなので、そんな方々と一緒に活動できたら、刺激を受けて、自分も研究に対してさらに前向きに取り組めるだろうし、5年間の博士課程を楽しく過ごせるんじゃないかと思って、川瀬さんのお誘いにのりました。
川瀬:企画としては2年目なので、ある程度は型ができています。なので、「そのままの延長線上でやればいい」と思う人も普通はいると思うのですが、ここに集まってくれたメンバーは、どんどん面白いことを探して企画を良くしようとしてくれます。そこがこのメンバーの良い所です。
院生企画に関わることで得られる気付きや刺激
Q.企画者として運営に関わってみての気づきや、良かったと感じていることを教えて下さい。
田中:企画メンバーも講師の人も、院生企画に参加しなければ知り合えなかっただろうなと思う人とのつながりができたので、そこが良かったと思っている所です。あと、学生講師のプレゼンテーションがみんなすごく上手で、分野が違う人にも理解できるように配慮がされていて、刺激を受けました。
吉田:学年を問わず研究に熱心な優秀な学生と出会えてつながりを持てたことは、すごく良かったなと思います。
学生が主体となって企画しているからこそ、企画に自由度があって柔軟にやりたいことをやれるのも良い所だと思います。研究の内容だけじゃなく学生生活の悩みみたいなことまでフラットに話せる場っていいなと思います。
沖田:普段関わらない分野の研究を企画を通して知ることができたり、他の企画メンバーの視点を通して、異分野の研究の面白さに気付けたりするのが良かったと感じている所です。
任:企画メンバーみんなのチームワーク力がすごいです。一緒に仕事できて楽しいです。
川瀬:みんな仕事のクオリティが高いです。例えば、「最初は簡単な案でいいから」と言っているにもかかわらず、最初からほぼ完成形を出してくるんです。全体的に本質を捉えるのが上手いんだと思います。初回に出てきたものがちゃんと本質を掴めているので、そのあとの展開がスムーズです。
あと、みんなそれぞれ忙しいはずなんですけど、それを表に出さない感じも尊敬しています。でも無理な時は無理とちゃんと言ってくれて、抱え込みすぎないというか、自分のマネジメントがすごくできてるなと思います。
(Q.研究の合間を縫ってこういった企画の運営をされていると思いますが、自分のマネジメントという点で、心がけていることはありますか?)
沖田:なるべくすぐにレスポンスするように心がけています。今、手を離したら瓶が割れちゃう、反応が止まっちゃう、みたいな状況じゃない限り、すぐにレスできることは済ませて、物事を気持ち良く片付けていくことを、いつも意識しています。とは言っていますが、実はかなり忘れっぽいので、忘れないうちに済ませてしまおうという気持ちの方が強いかもしれません(笑)
川瀬:沖田さんのレスの速さは本当に助かってます。話の展開も早くなるし、物事が止まらずに進んでいくので。
吉田:振られた仕事がどれくらいの時間でできそうかを最初に概算して、だらだら時間をかけてやるのではなく、自分が決めた作業時間の枠内で、できるだけいいものを作ろうと心がけています。あとは、他の人が前にやったものを参考にして必要な要素を見極めて作業するように意識しています。
色々な分野の人を巻き込む難しさ
Q.2021年度の第1回と第2回のイベントを振り返って、課題に感じたことや改善ポイントはありますか?
田中:第1回は現地での参加者も多かったですが、第2回は現地の参加者が少なかったのが、ちょっと寂しかったなと感じました。
川瀬:オンライン参加を加えると第2回もそれなりに人は来てくれていましたけど、来てくれる人の層や人数は、テーマに左右されているかもしれないですね。
田中:第1回はテーマが広くていろんな分野の人が来やすかったかもしれないけど、第2回はごりごりの生物だったので、化学系で生物に関心がない人に来てもらえてなかったかもしれないですね。
川瀬:本当はそういう人にこそ、来てもらいたいんだけれど。
沖田:講師の方の発表は皆さん素晴らしいので、来たら絶対面白いと思ってもらえると思うんです。ただ、関心がない人にも「行ってみよう」と思ってもらえるようにどうしたらいいのかが、いつも悩むところで難しいなと思っています。
吉田:例えば今年の第1回の瀧口さんのお話は、分野に関係なく興味を持ってくれた人が多かったように思うので、そういった、分野を問わない切り口の話題が入っていると良いかもしれないですね。
沖田:3人の発表者の中に、1人か2人は二分野の中間で研究しているような方を入れるのもいいかもしれないですね。
田中:例えば次回の化学の回では、ごりごりの有機化学よりは、バイオに染み出している化学の人に話してもらうと、生物系の人にも関心を持ってもらいやすいかもしれないないですね。
川瀬:逆に、ごりごりの人たち同士だと何を話すのかっていうのも、前から気になってました。自分は生物系なので、例えばポスター発表の時、化学系の人は化学の発表に対してどこを見ているのか、専門の人たち同士の着眼点みたいなものを知れたら面白いかなと思ってました。
吉田:例えば専門の近い2人のディスカッションに、もう1人異分野の人が入って「その質問の意図は?」みたいなことを聞いて、着眼点や質問の意味を解説してもらうというのも面白いかもしれないですね。
Next step
Q.今後に向けて、やりたいことを教えて下さい。
川瀬:これまでのテーマは生物系が中心でしたが、今年度は化学系のテーマも実施するので、もっといろんな分野の人を巻き込んでいけたらいいなと思います。それが、活動の持続性にもつながると思っています。
任:参加者の数が、もっと増えるようにしていきたいです。
沖田:GTR生全体から見ると、まだ参加したことがない人も多いので、もっと参加率を上げられたらと思います。
例えば、研究に関するイベントだけじゃなく、「どうしてドクターに進学しようと思ったのか、研究を頑張る原動力はどこから来ているのか」みたいな、研究以外の、人となりを知れるような機会も作れたらいいなと思っています。その人自身のことを知れると、ぐっと距離が縮まると思うので、そういったコミュニティの活性化につながるような企画もやっていけたらいいなと思います。
田中:企画者としてGTRで活動することを通じて、人のつながりを広げていけたらいいなと思います。川瀬さんや木下さんのような、GTRを引っ張る存在になっていけたらなと思います。
吉田:学生シリーズ講義が、学年や分野を問わず色々な人が議論に参加できる場になればいいなと思います。異分野の人が質問したり参加したりしやすいようにハードルを下げることもしていきたいですし、その分野が専門の人にとっても、話をしてくれる学生講師の人にとっても得るものがあるような、専門の人もそうでない人も、両方が共存できる場づくりができたらいいなと思います。
川瀬雅貴(生命農学研究科)
吉田純生(生命農学研究科)
谷川未来(生命農学研究科)
任亮(生命農学研究科)
田中良来(理学研究科)
沖田ひかり(工学研究科)