名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

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GTRセミナー / 最先端植物科学シリーズセミナー

この度、植物科学のさまざまな分野で活躍されている5名の若手研究者の方々をお招きして、最新の研究成果や今後の展開の方向性を議論する「最先端植物科学シリーズセミナー」の第4回の告知をさせていただきます。新進気鋭の研究者と直接議論できる絶好の機会ですので、大学院生、研究員、教職員の皆さま、ぜひご来聴ください。対面で行います。

日時:2022年8⽉31⽇(⽔)16:00-17:30
会場:坂⽥・平⽥ホール
講演者:近藤侑貴 准教授(神⼾⼤学 理学部)
講演題目:新規技術開発から解き明かす維管束発⽣制御の分⼦基盤

講演要旨:維管束は物質輸送を担うだけではなく、植物体の支持や電気シグナルの伝播など植物の成長において様々な役割をもっている。このような多面的機能は、維管束幹細胞から生み出される多様な維管束細胞によって発揮される。しかしながら維管束は奥深くに埋め込まれており、その発生過程にはまだ未解明の部分も多く残されている。このような課題に取り組むため、維管束幹細胞維持機構の知見を基にシロイヌナズナの子葉を用いた維管束分化誘導系VISUALの開発をおこなった。VISUALにおいては、葉肉細胞を起点に維管束幹細胞を誘導し、短期間で効率良く道管や篩管細胞を分化させることができる。VISUALの様々なトランスクリプトームデータの情報解析から幹細胞特異的遺伝子群を特定し、幹細胞維持のロバストな制御機構が明らかとなってきた。
次に生物発光を用いた幹細胞運命の迅速な定量評価系について紹介する。分化運命の経時測定により培養条件スクリーニングが容易となったため、新たに篩部伴細胞を誘導できる分化系VISUAL-CCの開発に至った。また、分化運命を簡易定量することで遺伝学スクリーニングも可能となり、新たに概日時計遺伝子が維管束幹細胞分化に働くことを見出している。更には、発光をイメージングできる発光顕微鏡をVISUALに導入することで1細胞レベルでの細胞運命の時空間動態をデュアルカラーで検出することも可能となった。
 このように様々な解析技術の開発から維管束幹細胞に関する新発見が次々と導き出されてきた。また現在は、VISUALの利点を活かし様々な環境要因が幹細胞制御ネットワークに与える影響について研究を進めており、それらの結果を基に幹細胞の更なる運命操作が可能となってきている。また、維管束発生制御ネットワークを進化軸とあわせて解析するため、裸子植物イチョウにおけるVISUALの確立を進めている。本セミナーでは、新規技術が明らかにした生物学的発見に加え、現在進行中の試みについてもあわせて紹介する。
参考文献:Kondo et al., 2014, Nat. Commun.; Kondo et al., 2015, Mol. Plant; Kondo et al., 2016, Plant Cell; Saito et al., 2018, Plant Cell Physiol.; Tamaki et al., 2020, Commun. Biol.; Furuya et al., 2021, Plant Cell; Shimadzu et al., 2022, Quantitative Plant Biol.

世話人:榊原 均(sakaki<at>agr.nagoya-u.ac.jp(<at>→@に変換)

今回のセミナーも含めた「最先端植物科学シリーズセミナー」の全体ポスターはこちらから