名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

GTRセミナー

11月10日(木)15時より 下記の通りGTRセミナーを開催いたします。
ご興味のある方、ぜひご参加くださいますようお願い申し上げます。

日時 :2022年11月10日(木) 15:00 - 16:30
場所 :理農館SA329
言語 :日本語
講演者:白川一博士 奈良先端大 花発生分子遺伝学
演題 :孔辺細胞とミロシン細胞をモデルとした転写因子モジュールの転用による
    植物細胞の進化

植物は高度に特殊化した細胞を組み合わせることで組織を作り、予期せぬ外敵へ
の備えや変動する環境への適応を可能にした。特殊化した細胞の分化には、個々の
マスター転写因子が働いていることが知られているものの、進化の過程で新しい細
胞種が作り出される際にどのようにマスター転写因子が進化、及び転用されるかよ
くわかっていない。
孔辺細胞によって形成される気孔は、ほとんどの陸上植物に存在し、ガス交換に
必須である。FAMA転写因子は、孔辺細胞分化を制御すると同時に、維管束系に
沿った別の種類の特殊化した細胞、「アブラナ目の化学防御系に必須のミロシン細
胞」の分化も促進する。本セミナーでは、FAMAの直接の標的であるWASABI MAKER
(WSB) の機能について紹介する。WSBは単独でミロシン細胞の分化を促進し、孔辺
細胞分化においては別のFAMA標的因子と相乗的に働いていることを見出した。進
化的な解析によりWSBは、アブラナ目の進化よりも以前に獲得され、被子植物で高
度に保存されていることもわかってきた。以上の結果から、アブラナ目植物が孔辺
細胞分化系の転写モジュールの一部FAMA-WSB系を転用させることで、アブラナ目
特異的な生体防御系を進化させたという新規の仮説が浮上した。
また現在は、環境に依存した発生プログラムである花成をモデルに、低分子化合
物による発生・分化の人為的な操作にも取り組んでいる。同定された低分子化合物
は、花成のマスター転写因子のエピジェネティック制御系に作用して 発生運命を
転換させていることがわかってきた。本セミナーでは、マスター転写因子による発
生制御と、その人為的な操作について紹介する。

キーワード :
進化、転写因子、孔辺細胞、ミロシン細胞、低分子化合物、エピジェネティクス

問合せ先:中道範人(nnaka<at>agr.nagoya-u.ac.jp (<at>→@に変換))