名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

GTRセミナー

この度、九州大学・理学研究院、高橋達郎博士による集中講義(12/12-13)が開催されるのに合わせ、高橋博士によるGTR
seminarを開催いたします。高橋博士はアフリカツメガエル卵抽出液を用いたDNA複製研究で世界を牽引する研究者のお一人で、これまで数多くの重要な発見をされてきました。今回のセミナーでは、再構成系を駆使したミスマッチ塩基修復研究について最新の研究成果も交えてお話頂く予定です。皆様お誘い合わせの上、是非ご参加くださいますようお願いいたします。

講演者 :  高橋 達郎 博士 / 九州大学 理学研究院
演題  :  真核生物がワトソン・クリック塩基対の破綻に対応するしくみ
開催日 :  2022年12月13日(火)
開催時間:  16:30-18:00
開催場所:  理学部A館 A222号室

アブストラクト:生物の遺伝情報はDNAの核酸塩基の並びによって記録され、遺伝情報の複製、修復、発現は、ワトソン・クリック塩基対、すなわちアデニン塩基とチミン塩基、グアニン塩基とシトシン塩基の相補的な対合によって動作する。ところが、ワトソン・クリック塩基対は様々な原因で破綻することがある。たとえば、DNA合成の際に誤った塩基が取り込まれると、ワトソン・クリック塩基対に適合しないミスマッチ塩基を生じる。また、類似するが完全に一致しない配列間で相同組換えが起こると、組換えの中間体にミスマッチ塩基が生じる。重要なことに、これらのミスマッチ塩基の適切な解消方法は、それらが生じた原因によって異なる。たとえば複製の誤りについては、誤った塩基を除去して再合成することで変異を防ぐことができる。ところが組換え中間体のミスマッチを修正すると、むしろ類似配列間の誤った組換えを促進してしまうかもしれない。この場合、ミスマッチを修正せずに組換え中間体を解消することが、類似配列間の誤った組換えを抑制する為に必要である。しかしながら、これらの反応のメカニズムや、コンテクストに応じたミスマッチ応答反応の制御のしくみは、いまだ十分に理解されていない。特に真核生物では、染色体はヒストンによって巻き取られクロマチン構造
を取るが、ミスマッチ塩基に対する様々な応答がクロマチン上で起こるしくみはほとんど分かっていない。
我々の研究室では、ツメガエル卵抽出液を用いてさまざまなミスマッチ応答反応を試験管内で再現し、その動作メカニズムを解析してきた。本セミナーでは、クロマチン上でのミスマッチ応答のしくみ、および組換え反応に伴うミスマッチ応答のしくみについて、我々のモデル系から得られた最近の知見を紹介し、議論したい。

Contact:Tomoko Nishiyama nishiyama<at>bio.nagoya-u.ac.jp (<at>→@に変換)