名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

GTRセミナー / アドバンス生命理学特論

5月16日(火)16時30分より下記の通り、GTRセミナーを開催いたします。
皆さまお誘いあわせの上、ぜひご参加くださいますようお願い申し上げます。

講演者 :   乘本裕明博士(北海道大学医学研究院)
演題  :   睡眠の機構解明に向けた比較生理学的アプローチ
開催日 :   2023年5月16日(火)
開催時間:   16:30-18:00
開催場所:   理学部E館131
講演言語:   日本語
お問合せ:   上川内あづさ kamikouchi<at>bio.nagoya-u.ac.jp (<at>→@に変換)

概要
レム睡眠と徐波睡眠は哺乳類と鳥類で観察される特徴的な睡眠ステージである。我々のグループ
は爬虫類であるAustralia dragon (Pogona vitticeps, 以下ドラゴン)
もレム睡眠と徐波睡眠をとることを
発見した。これは二つの睡眠ステージが約三億年以上前から存在していたことを示唆している。ド
ラゴンの睡眠はレム・徐波睡眠の一サイクルが約100秒と、哺乳類のそれと比べてとても短い。さ
らに、レム睡眠と徐波睡眠の長さがほぼ均等である。そのため本動物は睡眠ステージの切替えの研
究を行う上で良いモデルとなり得る。私はドラゴンから全脳摘出標本を作成し、この標本上で徐波
睡眠状態を再現することに成功した。本実験系を用いて徐波睡眠の発生メカニズムを精査している
際に偶然
"前障(claustrum)"という脳領域を発見した。前障は意識や高次脳機能に関与していると
考えられているが、哺乳類以外の動物で確認されたのは初である。その後の検討により、ドラゴン
の前障は徐波睡眠時脳波の生成に関与する一方で、睡眠の生成自体には関与していないことが明ら
かになった。さらに、最近の検討から前障が大脳皮質との密な相互投射を通じて睡眠の"深さ"を調
節していることが明らかになった。
本セミナーでは、我々がこれまで行ってきた研究内容に加え、比較生理学的手法が秘める可能性
や将来展望、そして研究に取り組む上での基本姿勢について議論を深めたい。