名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

第8回 NUSR-CeSPI合同セミナー / 第38回 細胞生理学セミナー

"分子動力学法によるタンパク質の機能解析"
分子動力学法は、分子を構成する原子間に働く力を、分子力学法に基づいて計算し、さらにニュートンの運動方程式を数値的に解くことで、分子の運動をコンピュータの中に再現する手法である。近年のコンピュータの計算能力の向上に加え、並列計算アルゴリズムの発展により、膜タンパク質など、比較的大きな系に対しても、マイクロ秒オーダーのシミュレーションが可能となっている。また、分子動力学シミュレーションによって生成される構造を標本と捉え、統計処理することで、構造変化などの反応座標に沿った自由エネルギー地形を計算することもできる。生命現象に関わる運動の時間スケールは、分子動力学シミュレーションを用いて追跡可能なマイクロ秒のオーダーよりも遅いことがしばしばあるため、このような運動のメカニズムを明らかにするうえで、有用である。大腸菌に存在し、薬剤耐性の原因となる多剤排出トランスポータMdfAは、ペリプラズムから細胞内へ水素イオンを、細胞内からペリプラズムに薬剤を輸送する対向輸送体である。このタンパク質は、ペリプラズム側が開いた外開き構造と、細胞内側が開いた内開き構造の間を交換することで、輸送を実現していると考えられている。本セミナーでは、分子動力学法の基礎を解説した後、分子動力学法を用いて明らかとなった、MdfAの機能メカニズムを紹介する。

連絡先
名古屋大学細胞生理学研究センター 大嶋 篤典 atsu<at>cespi.nagoya-u.ac.jp(<at>→@に変換)