GTRセミナー
この度、東京大学農学生命科学研究科附属水産実験所の細谷先生をお招きして、トラフグの育種についてセミナーをして頂きます。
関係者への周知を御願いするとともに、皆様のご参加をお待ちしております。
日時:2024 年 5 月 16(木) 13:00-14:30
場所:農学部 第8講義室
演者:細谷将博士 (東京大学・農学生命科学研究科附属水産実験所 )
セミタータイトル:養殖生産の拡大と持続性の向上を両立させる革新的育種技術の開発
要旨:ヨーロッパで生産されたアトランティックサーモンは水産業における黒船だった。実際のところは空輸なのだが、我が国における水産物の消費動向のみならず、食文化や養殖生産物へのイメージを大きく変えた。そのインパクトは和食ブームと融合して世界中に拡大している。その成功に最も貢献度が高かったのは選抜育種による生産能力の拡大と高品質化だったと言われている。養殖集団は野生魚から造成しているため、遺伝的多様性が高く、体重では世代あたり10%以上の改良量が得られるほど選抜効果が高い。この特性と養殖魚への需要の高まりから、今では様々な国で選抜育種された養殖魚介類が生産されており、動物性食料の供給に貢献している。日本の水産研究では育種研究は長年マイナー分野であったが徐々に重視されてきている。さらには、もともと日本の水産研究では完全養殖技術と種苗生産技術といった飼養と繁殖に関する研究が強かったこともあり、それらと融合した他国では実現できないような革新的育種技術の開発が進められている。鍵となる技術は、ゲノム選抜育種(ゲノミックセレクション)、代理親魚技法、ゲノム編集である。これにより選抜育種の迅速化、選抜系統の不妊化による遺伝的汚染の防止、不妊化された選抜魚の大量生産、を同時に実現し、養殖生産の拡大と持続性の向上を両立させる取り組みである。本セミナーでは長崎県総合水産試験場と共同で進めているトラフグのゲノム選抜育種プログラム(生研支援センター・イノベーション創出強化研究推進事業)と東京海洋大学、同水試と進めているこの革新的育種技術の開発(JST未来社会創造事業)について紹介する。
コンタクト:生物センター 芦苅基行 (ashi<at>agr.nagoya-u.ac.jp (<at>→@に変換))