名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

GTRセミナー

6/20(金)に東京都立大学の野澤昌文先生をお迎えしてセミナーを開催いたしますので、ご案内いたします。よろしくお願いします。

日時:6月20日(金)13:30〜15:00
場所:理学部E館 E131
演者:東京都立大学 理学研究科生命科学専攻 准教授 野澤昌文
タイトル:ショウジョウバエにおけるY染色体消失とその影響~性染色体サイクルの解明に向けて
『要旨』
 性染色体による遺伝性決定は代表的な性決定様式のひとつである。性染色体は多様な生物で何度も独立に生じており、その多くは常染色体に由来する。しかし、通常、性決定を安定化するため、X-Y(またはZ-W)染色体間の組換えは抑制される。するとY染色体は有害変異を蓄積して退化する。一方で、Y染色体には性決定遺伝子やオス妊性遺伝子などが存在するため、消失することはできない。このように、性染色体の進化は、退化しつつもわずかな性関連遺伝子を維持し続けるとする「性染色体進化の袋小路」によって理解されてきた。しかし近年、退化型Y染色体の代表格である哺乳類のアマミトゲネズミにおいて、性染色体が袋小路を抜け出し、新たな性染色体に更新されたことが報告されている。そこで我々は、性染色体進化を「常染色体⇒性染色体」という一方向の袋小路ではなく「常染色体⇔性染色体」という双方向のサイクルで捉えなおすべく研究を進めている。
 本発表では、Y染色体をもつオスともたないオスが種内で混在するヒゲジロショウジョウバエ(Drosophila lacteicornis)を材料に、本種がY染色体を失い得た進化経路、およびY染色体消失が個体・種に及ぼす影響について議論したい。また、都立大の多様なショウジョウバエ野生種ストックを用いて進めている、「性染色体サイクル」解明に向けた他の取り組みについても簡単に紹介したい。
参考文献
Hayashi et al. 2024. Sex chromosome cycle as a mechanism of stable sex determination. J Biochem 176: 81-95

問い合わせ先 生殖生物学グループ田中実(内線2979)