名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

GTRセミナー

9月25日(木)に下記の通りGTRセミナーを開催いたします。
ご興味のある方、ぜひご参加くださいますようお願い申し上げます。
本セミナーは生命農学研究科大学院集中講義の一環として実施されますので、単位取得を希望する学生は集中講義「植物の器官再生:メカニズム解明から応用可能性まで(9/25,26実施)」の受講申請(9/17締め切り)を行ってください。

日時:2025年9月25日(木) 16:30 - 18:00
場所:理農館SA329
講演者:池内桃子 博士 奈良先端科学技術大学院大学・特任准教授

講演タイトル:植物の驚異的な再生能力の謎を解く

植物は高い再生能力を持ち、単離した体組織から完全な体を構築できる1。しかし、体細胞が多能性を獲得して新たな多細胞秩序を構築する機構は明らかとなっていない。そこで我々は、おもにシロイヌナズナの組織培養系と組織修復をモデル系として、器官再生の制御メカニズム解明に取り組んできた。我々は、切断刺激によって発現誘導されるホメオボックス型の転写因子であるWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX 13 (WOX13) が、傷口における組織修復と器官接着を促進する一方で、組織培養系における幹細胞新生を抑制することを見出した2,3,4。scRNA-seq やイメージング解析などの結果に基づき、WOX13がシュートの幹細胞新生に必須な役割を果たすWUSCHEL (WUS) と相互抑制的な関係にあり、これらが多能性を持つカルス細胞の分化運命を司るというモデルを提案した2,5。現在は、WUS 発現細胞動態のタイムラプス観察とモデリングを組み合わせて、カルス細胞が自律的に秩序立った幹細胞ニッチを構築する仕組みの解明を進めている。さらに、数理生物学者との共同研究を展開して、シュートで形成される繰り返し構造の周期性を制御するパターン形成原理を提案している(under revision)。本講演では、これまでの研究で明らかになってきた再生応答と形態形成に対する多層的な制御機構を概観するとともに、応用展開も含めて今後の展望について議論したい。

【参考論文】
Ikeuchi et al. Ann. Rev. Plant Biol., 70: 377-406 (2019)
Ogura et al. Sci. Adv., vol. 9, 10.1126/sciadv.adg6983 (2023)
Tanaka et al. Plant Cell Physiol., 64: 305-316 (2023)
Ikeuchi et al. Plant Physiol., 188: 425-441 (2022)
Doll and Ikeuchi Curr. Opn Plant Biol. 85: 102733. (2025)

問合せ先:榊原均 ✉sakaki<at>agr.nagoya-u.ac.jp(<at>→@に変換)