名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

GTRセミナー

9月30日(火)に下記の通りGTRセミナーを開催いたします。
ご興味のある方、ぜひご参加くださいますようお願い申し上げます。
本セミナーは生命農学研究科の集中講義の一環として行われます。

日時:2025年9月30日(火) 15:30 - 17:00
場所:理農館SA329
講演者:梅澤泰史 博士 東京農工大学・教授

講演タイトル: リン酸化プロテオミクスで切り拓く植物の環境応答メカニズム
要旨: 植物は移動できないため、環境変動に適応する独自の応答機構を進化させてきた。我々は、乾燥や塩などの環境ストレス応答の分子機構に注目している。これらの応答の中心には植物ホルモンであるアブシシン酸(ABA)があり、そのシグナル伝達は受容体、タンパク質脱リン酸化酵素(PP2C)、およびタンパク質リン酸化酵素(SnRK2)の3つの主要因子によって制御される1。我々はこれまでSnRK2に着目し、その下流で働くリン酸化ネットワークの解明を進めてきた2-6。リン酸化プロテオーム解析の導入により、孔辺細胞におけるABA誘導性リン酸化プロファイルを取得し、新規因子MAP4K1/2を同定した。MAP4K1/2はABA誘導性気孔閉鎖に関与する新たな制御因子である。また、SnRK2の相互作用因子として同定したRaf36が3、細胞膜プロトンポンプ(PM H+-ATPase)のリン酸化を制御することを見出した。興味深いことに、気孔のCO2応答因子HT1はRaf36の近縁であり、同様にPM H+-ATPaseを制御することが明らかとなった。これらの成果により、光誘導性気孔開口の分子機構の一端が明らかとなった。本発表では、これらの最新の研究成果を紹介し、植物の環境応答シグナルネットワークの理解に向けた展望を議論したい。

【参考論文】
1. Umezawa et al. Plant Cell Physiol., 70: 377-406 (2010)
2. Umezawa et al. Sci. Signal., vol. 9, 10.1126/sciadv.adg6983 (2013)
3. Kamiyama et al. PNAS, 118:e2100073118. (2021)
4. Katagiri et al. Plant Cell Physiol., 65:259-268. (2024)
5. Li et al. Plant J., 118:1747-1759. (2024)
6. Kamiyama et al. PNAS, 121:e2419204121. (2025)

問合せ先:中道範人 ✉nnaka<at>agr.nagoya-u.ac.jp (<at>→@に変換)