名古屋大学 卓越大学院プログラム

トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム

Graduate Program of Transformative Chem-Bio Research

EVENTS

GTRセミナー

日時:2025 年 11 月25 日(火曜日) 16:30ー
場所:農学部 第8講義室
講師:柴田哲男博士 (名古屋工業大学 教授)
セミナータイトル:サリドマイドとフッ素化学 ―さすらう青春―
講演内容:
サリドマイドは、いろんな意味で有名な医薬品である。催眠 ・鎮静剤や制吐剤として開発されたが、1960 年代に妊婦が服用した際に生まれる胎児の催奇形性の報告を受けて販売が中止され、世界中で大きな問題となった(サリドマイド事件)。その後の研究で、サリドマイドの鏡像異性体(R体とS体)のうち、一方(S体)にのみ催奇形性があると報告され、長い間不斉合成の重要性を示す例として使われた。しかし、現在では容易にラセミ化することがわかっている。一方で、がん(多発性骨髄腫)やハンセン病など複数の難病に対する薬効が明らかとなり、関連薬物は大きな売り上げを上げている。さらに、サリドマイドの標的同定は、PROTAC(標的タンパク質分解誘導化合物)の研究へとつながっている。
柴田先生は、フッ素化学の分野の世界的研究者(2019年にACS Award for Creative Work in Fluorine Chemistryを受賞)として有名だが、長い間、このサリドマイド研究に携わってこられたことでも知られる。今回、依然として謎の残るサリドマイド研究の全容についてお話しいただく。

参考:柴田哲男「サリドマイドとフッ素化学 さすらう青春」ドラマチック有機合成化学 感動の瞬間100,有機合成化学協会編 化学同人(2023)

連絡先:西川 俊夫 内線 4115 ✉ nisikawa<at>agr.nagoya-u.ac.jp (<at>→@に変換)