研究ハイライト

気体に反応して色と光がスイッチする相分離材料を開発

【本研究のポイント】

・分子レベルの相互作用を利用して、固体から液体がしみ出す「固-液相分離1」を制御することに成功。

・特定のガスに応答して固-液相分離を起こし、色と室温りん光2のスイッチを実現。

・分子液体3の包接4に基づく、新しい刺激応答材料5の設計指針として期待。

【研究概要】

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の谷 洋介 特任准教授らの研究グループ(研究開始当時:大阪大学大学院理学研究科)は、京都大学大学院工学研究科の和田 圭介 博士、生越 友樹 教授、神戸大学ライフ光学イノベーション研究センターの立川 貴士 教授、大阪大学蛋白質研究所の栗栖 源嗣 教授らとの共同研究で、特定の気体に応答して固体から液体がしみ出す「固-液相分離」を起こし、色や発光機能を劇的に変化させる、新しい分子材料を開発しました。

複数の成分から成る材料は、その組み合わせを変えるだけでさまざまな機能を発揮し得るため魅力的です。一方、各成分の混ざり具合も機能に大きく影響しますが、それらが混ざるか、分離するかを外部刺激によって制御するのは容易ではありませんでした。

今回、研究グループは、液体の分子の一部分を環状分子で包みこむという分子レベルの相互作用を利用した超分子化学4的アプローチで、固-液相分離や物質の光機能といった目に見える変化を制御することに成功しました。この変化は特定の気体にさらすことで可逆的に繰り返し起こせます。本成果は、多成分材料の新しい設計指針として重要であり、刺激応答材料やセンサーの開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2026年7月21日(日本時間)付で英国王立化学会の『Chemical Science』に掲載されます。

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【用語説明】

1)相分離:

水と油のように、それぞれの物質がそれぞれの相(領域)に分かれること。固体と液体が分離する場合を特に固-液相分離と呼ぶ。例えば、水に食塩を混ぜると溶けて均一化し、これが自発的に分離することはないし、逆に水と油が自然に均一になることもない。このように、ある温度と圧力で均一になるか相分離するかは、基本的に成分の組み合わせで決まる。

2)りん光:

発光の一種。高エネルギー状態の分子が、電子スピン(自転のようなもの)の向きを変えながら発する光をりん光と呼ぶ。発光が長く続く・酸素センサーとしてはたらく・有機ELの理論効率が高いなど、優れた特徴をもつ。しかし、有機分子のりん光は珍しく、ほとんどは極低温でしか見られない。そのため、室温でも目視できるりん光を特に室温りん光と呼ぶ。

3)分子液体:

特に室温付近で固体ではなく液体として存在する分子。分子が溶媒に溶けた溶液と区別するため、単に液体と呼ばず分子液体あるいは無溶媒液体と呼ぶことがある。液体は自由な形態をとることができるため、特に発光性や導電性などの機能をもつ分子液体は、フレキシブルディスプレイやウェアラブルデバイスなどへの応用が期待されている。

4)包接・超分子化学・ホスト-ゲスト錯体:

共有結合ではなく、分子どうしの弱い相互作用によって形成される分子の集合体を研究する学問分野を超分子化学と呼ぶ。その一分野であるホスト-ゲスト化学では、ある分子(ホスト)が別の分子(ゲスト)を選択的に包み込む(取り込む)現象を扱う。また、この現象を包接、それにより形成される複合体を包接錯体またはホスト-ゲスト錯体と呼ぶ。