ITbM には、分野間の融合研究を促進すべく、研究室間の壁を取り除いた実験室 Mix Lab (ミックス・ラボ)と居室Mix Office(ミックス・オフィス)があります。ここには、各研究グループに固有の研究スペースは存在せず、異分野の研究者・学生が同じ空間を共有し、日常的に意見交換が行われる場が広がっています。PI は、それぞれの研究グループを率いていますが、その枠組みは非常に柔軟かつ有機的であり、研究グループ間には従来の研究室にみられるような障壁は存在していません。分野融合の現場では、ときに分野の専門用語の違いが、相互理解を妨げる一因となることがあります。ITbM では、「分子」を共通のキーワードにすることで、分野の壁を超えたより踏み込んだ議論が促進され、融合研究がスムーズ進展しています。

Mix Lab は、ITbM の分野融合研究の進展に当初の期待以上の効果をもたらしています。教員から博士研究員および大学院生にいたるすべての研究者が分野の壁を越えて研究に取り組み、自らの研究の着想を直ちに実行に移すといったことが日常的に起こっています。Mix Lab で生まれたいくつものボトムアップの分野融合研究が離散集合を繰り返して洗練されてきました。その結果、これまでに20以上の新たな融合研究が若手研究者主導で生まれ、それらの成果の一部は、すでに特許や論文として発表されています。さらに、企業への技術移転により、試薬として市販化にいたった事例も複数あります。

ITbM Research Award(リサーチ・アワード)は、そういった若手研究者のボトムアップ的な融合研究をさらに促進する仕組みとして設立された賞です。本賞は、複数の異なる分野の研究者でおこなう融合研究を対象とし、ITbM に所属する者(ただしPI を除く)がチームに入っていれば応募が可能というものです。応募されたプロジェクトの中で、優れた研究に賞を授与するとともにスタートアップ研究費を補助しています。これまで採択された多くの研究提案は、ITbM を代表する研究プロジェクトとして順調に進んでいます。

Mix Lab コンセプトを設計に反映させたITbM の研究棟は、2015年3月に竣工しました。総床面積7,934 m2、6階建の構造を有し、2, 4階に実験フロア、3, 5階に居室フロアが設置され、居室・実験室の二層一体構造となっています。居室Mix Office からは、ガラス越しに真下にある実験室Mix Lab を眺めることができ、開放的かつ空間的に一体感のある設計となっています。ITbM棟には、育児中の研究者を支援するキッズルーム、自由に議論を行うリフレッシュスペースやウッドデッキなどが備えられ、研究者の交流ならびに分野融合研究を促進する仕掛けがいたる所に施されています。また、研究の相談から日常のさまざまな事柄について気軽に意見交換を行う場として、ITbM Tea break Meeting(ティー・ブレイク・ミーティング)を定期的に開催しています。

ITbMの研究環境における主な特徴

  • Mix-LabやMix-officeを設置し、グループ間共同研究と異分野融合を促進するとともに、国際的で多様な研究者が日常的に集って自由に意見交換できる機会と場を設けている。
  • 拠点内の共同研究を加速し、かつ分野に囚われない次世代研究者を育成するために、各ポスドクは、分野の異なるPIの指導を受ける、Co-supervising制度を導入している。
  • ITbMおよび名古屋大学では、WPIの研究を遂行するための先端機器を設置している。研究機器のクオリティおよびその数は、世界トップレベルの研究施設に匹敵する。世界先端共通機器室をマネージメントするコーディネーターは、研究の加速および国際的な研究交流の促進をサポートする。
  • 様々な研究分野の融合および国際化を加速するため、英語と日本語の2カ国語で仕事を進められる事務部門を設置している。

ITbM棟フロアマップ

ITbM棟フロアマップ
6F
・ライブイメージングセンター
・化合物ライブラリーセンター
・温室
5F
・オフィスゾーン
・セミナールーム
・キッズルーム
4F
・Mix-Lab
・分子構造センター
・培養室
3F
・オフィスゾーン
・リフレッシュスペース
・セミナールーム
2F
・Mix-Lab
・分子構造センター
・植物育成室
1F
・エントランスホール
・ITbM事務室
・レクチャールーム