研究ハイライト

AI×量子化学で色純度の高い青色発光材料を発見 ~設計から素子作製・評価まで一気通貫、材料開発を劇的に加速~

【本研究のポイント】

・次世代有機ELディスプレイに不可欠な「色純度の高い青色発光」と「高い発光効率」を両立する、安価で合成が容易なホウ素を含まない材料の開発に成功した。

・約2万種の仮想分子ライブラリを生成し、量子化学計算1とAI(機械学習)を連携させることで、膨大な候補群から有望な分子を高速に見いだす手法を構築した。

・AIによる分子設計から有機EL素子作製・評価までを一気通貫で完了させ、時間と開発コストを劇的に削減する「データ駆動型材料開発」の圧倒的な有用性を実証した。

【研究概要】

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM※)の羽飼 雅也 博士後期課程学生、藤本 和宏 特任准教授、山口 茂弘 教授、柳井 毅 教授、九州大学高等研究院の安田 琢麿 教授らの研究グループは、機械学習と量子化学計算を連携させ、ホウ素を含まない青色発光材料を探索する「データ駆動型」手法を開発しました。

具体的には、カルバゾール含有多環芳香族分子(Cz-PAH)2の候補約2万種をコンピュータ上で網羅的に生成しました。そのうち約1,000分子について量子化学計算を行い、そのデータをAIに学習させることで、残り全候補の発光特性を高速かつ高精度に予測することに成功しました。

予測結果から最も有望な2分子(Cz-PAH-1、Cz-PAH-2)を厳選して合成・評価した結果、予測通り極めて波長幅の狭い青色発光(半値幅317~19 nm)を示しました。さらに、これらを用いた有機EL素子は、次世代規格「Rec. 2020」の青色原色に迫る色度座標4と、最大35.2%の高い外部量子効率5を達成しました。

計算機上の大規模探索から素子作製までを一つの工程として統合した本成果は、次世代ディスプレイの低コスト化・省資源化に直結するだけでなく、候補数が膨大なあらゆる有機機能材料の開発を劇的に加速する基盤技術になると期待されます。

本研究成果は、2026年7月21日(現地時間)付ドイツ化学会誌『Angewandte Chemie International Edition』オンライン版に掲載されました。

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【用語説明】

注1)量子化学計算:

量子力学の原理に基づき、分子のエネルギーや発光特性などをコンピュータで予測する方法。

注2)カルバゾール含有多環芳香族分子(Cz-PAH):

炭素と水素からなる六角形(芳香環)が多数連なった骨格に、「カルバゾール構造」を組み込んだ分子群。カルバゾール構造とは、窒素原子(冒頭の図中の「N」と書かれた青い球)を含む五角形と、その両隣の六角形が合体した部分を指す。

注3)半値幅:

発光スペクトルの最大強度の半分となる位置で測った波長の幅。値が小さいほど色純度が高いことを示す。

注4)次世代規格「Rec. 2020」の青色原色に迫る色度座標:

色度座標は色を数値で表す方法。Rec. 2020は超高精細映像向けの国際的な色域規格で、青色原色の座標は(0.131, 0.046)。